当期純利益とは — 1年の最後に手元に残る利益
当期純利益とは、1つの会計期間に稼いだ収益から、その期間にかかった費用のすべてを差し引いて残った金額のことです。売上から仕入原価を引いただけの利益でも、本業のもうけだけを取り出した利益でもなく、税金まで含めた最後の差し引きが終わったあとの金額を指します。「当期(この会計期間の)」「純(すべて差し引いた)」「利益」という言葉のとおりで、決算書に並ぶいくつもの利益のうち、いちばん下に来るのが当期純利益です。
簿記の学習で当期純利益が繰り返し登場するのは、これが決算という手続きのゴールだからです。1年間の取引を仕訳して転記し、決算整理で実態に合わせた金額に直し、その集大成として計算されるのが当期純利益です。逆にいえば、当期純利益が正しく出ないということは、その手前のどこかに間違いがあるということでもあります。日商簿記3級の第3問で当期純利益を答えさせる問題が定番なのは、この1つの数字が決算全体の正しさを映す鏡になっているためです。
当期純利益の基本式
まず押さえるべき式は1本だけです。
収益は売上・受取手数料・受取利息のように、企業に入ってくる価値を表す勘定科目です。費用は仕入・給料・支払家賃・減価償却費のように、出ていく価値を表す勘定科目です。この2つのグループの合計を比べ、収益のほうが大きければその差額が当期純利益、費用のほうが大きければ差額は当期純損失になります。
たとえば1年間の収益合計が900,000円、費用合計が750,000円だったとします。当期純利益は 900,000 − 750,000 = 150,000円です。この150,000円が、株主に配当したり翌期以降の元手として使ったりできる、会社が自力で増やした金額ということになります。
似た名前の利益と混同しない
決算書には当期純利益のほかにも利益という名前のついた項目が並びます。混同しやすいものを整理しておきます。
| 名称 | 計算のしかた | 何を表すか |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 売上高 − 売上原価 | 商品そのもののもうけ(粗利) |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 本業のもうけ |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 毎期繰り返す活動全体のもうけ |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 最終的に会社に残る金額 |
簿記3級で作成する損益計算書には、このうち売上総利益や営業利益といった段階的な区分は登場しません。3級では収益と費用をそのまま並べ、差額として当期純利益を1回で出す形式が使われます。段階に分けた表示は簿記2級の損益計算書(報告式)で学ぶ内容です。ただし当期純利益という言葉が指す金額はどちらも同じで、「すべての費用を引いたあとの最後の利益」であることに変わりはありません。
1年間の成績表としての位置づけ
当期純利益は一時点の財産ではなく、一定期間の成績を表す数字です。決算日に現金がいくら残っているかとは別の話で、利益が出ていても現金が減っていることも、逆に赤字でも現金が増えていることもあります。この「期間の成績」と「一時点の財産」という2つの見方が、これから解説する損益計算書と貸借対照表の読み方の違いにそのまま対応しており、当期純利益の求め方が2通りある理由にもなっています。
当期純利益の求め方は2通り — 損益法と財産法
当期純利益を求める道すじは2本あります。1本目は収益から費用を差し引く方法で、これを損益法といいます。損益計算書がこの考え方でできています。2本目は期末の純資産から期首の純資産を差し引く方法で、こちらを財産法といいます。貸借対照表を2期分並べれば計算できます。
まったく違う入口から出発しているように見えますが、たどり着く金額は必ず一致します。理由は単純で、1年間に稼いだ利益は使わずに置いておけばそのまま会社の元手に積み上がるからです。収益が費用を150,000円上回れば、その150,000円ぶんだけ会社の正味の財産(純資産)が増えます。期首の純資産が500,000円で、1年間に150,000円の利益が出れば、期末の純資産は650,000円になっている — 損益法と財産法は、この同じ出来事を「動き」で見るか「残高」で見るかの違いにすぎません。
財産法を使うときは増資と配当を取り除く
財産法には1つだけ注意点があります。純資産が増える原因は利益だけではないという点です。株主から追加でお金を出してもらう増資をすれば、利益がゼロでも純資産は増えます。逆に配当を支払えば、利益が出ていても純資産は減ります。そこで財産法で当期純利益を求めるときは、次のように元手の出し入れを取り除きます。
期首純資産500,000円、期末純資産750,000円で、期中に100,000円の増資をしていたなら、当期純利益は 750,000 − 500,000 − 100,000 = 150,000円です。増資分の100,000円は稼いだ利益ではなく出してもらった元手なので、成績には数えません。簿記3級の問題で純資産の増減から利益を問われるときは、この増資・配当の有無が仕掛けになっていることがよくあります。
試験でどちらを使うか
日商簿記3級の第3問で当期純利益を答える場面では、実際に手を動かして使うのはほとんどが損益法です。決算整理後の収益と費用を集計して差額を出す、という流れが精算表でも財務諸表作成でもそのまま解答手順になるためです。一方、財産法は答え合わせの道具として使えます。損益計算書欄の差額と貸借対照表欄の差額が一致するという性質は、まさに損益法と財産法の一致そのもので、この2つがずれていたら計算のどこかが間違っているという合図になります。簿記の決算の全体像を押さえておくと、この2本の道すじがどこで交わるのかが見えやすくなります。
損益計算書から当期純利益を求める — 5つの利益をたどる
損益計算書(P/L)は、1年間の収益と費用を並べて当期純利益を計算するための書類です。もっとも単純な形では、収益をすべて足し、費用をすべて足し、その差額を当期純利益とします。ただし実務や簿記2級以上で使う報告式の損益計算書では、いきなり差額を出すのではなく、性質の違う費用を段階的に差し引いていく形をとります。差し引く順番が決まっているため、途中に4つの利益が現れ、最後に当期純利益にたどり着きます。
段階に分ける理由は、利益がどこで生まれ、どこで消えたのかを読めるようにするためです。商品自体は十分にもうかっているのに人件費や家賃で消えているのか、本業は好調なのに借入金の利息が重いのか、そうした違いは合計だけを見ても分かりません。当期純利益という1つの数字にたどり着くまでの階段を追うと、その内訳が見えるようになっています。
4つの段階利益がそれぞれ意味するもの
- 売上総利益(粗利)
- 売上高から売上原価だけを差し引いた、商品そのもののもうけ。仕入値と売値の差が集まったものです。
- 営業利益
- 売上総利益から、給料・広告宣伝費・支払家賃・減価償却費などの販売費及び一般管理費を差し引いた、本業のもうけ。
- 経常利益
- 営業利益に受取利息などの営業外収益を足し、支払利息などの営業外費用を差し引いた、毎期繰り返し発生する活動全体のもうけ。
- 税引前当期純利益
- 経常利益に、固定資産売却益のような臨時の特別利益を足し、火災損失などの特別損失を差し引いた金額。法人税等を計算する土台になります。
この階段の最後に法人税・住民税及び事業税(法人税等)を差し引いた残りが当期純利益です。上の図の例では、税引前当期純利益150,000円から法人税等45,000円を引いた105,000円が当期純利益になります。段階の名前は多く見えますが、差し引く費用の性質で区切っているだけなので、「本業か・本業以外か・臨時か・税金か」の4段階で覚えると迷いません。
収益合計と費用合計から一気に求める場合
簿記3級のように区分のない損益計算書では、途中の段階利益を経由せず、収益の合計から費用の合計を引いて当期純利益を1回で求めます。上の例でいえば、収益合計(売上高1,000,000+営業外収益+特別利益)から費用合計(売上原価600,000+販売費及び一般管理費250,000+営業外費用+特別損失+法人税等45,000)を差し引くことになり、結果はやはり105,000円です。段階に分けても分けなくても最終値は変わらないという点は、損益計算書を見るときの安心材料になります。
簿記3級の損益計算書で当期純利益を求める
日商簿記3級で作成する損益計算書は、左右2列に分ける勘定式です。左(借方)に費用、右(貸方)に収益を並べ、両者の差額を当期純利益として左の一番下に書き足すと、借方合計と貸方合計が一致します。第3問で財務諸表の作成が出題されたときは、この形式で解答欄が用意されているため、書く位置まで含めて手が動くようにしておく必要があります。
勘定式の損益計算書に当期純利益を書き込む
決算整理後の収益と費用が次のようになっていたとします。
| 借方(費用) | 金額 | 貸方(収益) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 600,000 | 売上高 | 1,000,000 |
| 給料 | 180,000 | 受取手数料 | 20,000 |
| 支払家賃 | 60,000 | ||
| 減価償却費 | 30,000 | ||
| 貸倒引当金繰入 | 5,000 | ||
| 法人税等 | 40,000 | ||
| 当期純利益 | 105,000 | ||
| 合計 | 1,020,000 | 合計 | 1,020,000 |
費用の合計は915,000円、収益の合計は1,020,000円なので、差額の105,000円が当期純利益です。これを借方の最終行に「当期純利益」として書くことで、左右の合計がどちらも1,020,000円で揃います。逆にいえば、当期純利益は貸借差額として求めるのが解答の手順であり、埋めた瞬間に左右が一致しなければ、その手前の集計か決算整理仕訳のどこかが誤っているということです。
費用が収益を上回った場合は当期純損失になります。このときは貸方(収益側)の一番下に「当期純損失」として差額を書き、やはり左右の合計を一致させます。書く側が逆になるだけで、求め方そのものは変わりません。
帳簿の勘定科目と損益計算書の表示科目は同じではない
簿記3級の財務諸表作成問題でつまずきやすいのが、勘定科目名をそのまま書いてしまう間違いです。損益計算書に載せるときは、いくつかの科目で表示名が変わります。
| 帳簿上の勘定科目 | 損益計算書の表示 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上 | 売上高 | 収益の最上段に置く |
| 仕入 | 売上原価 | 決算整理で売れた分に修正した金額 |
| 貸倒引当金繰入 | 貸倒引当金繰入 | 費用としてそのまま表示 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 法人税等 | 最後に差し引く |
とくに仕入と売上原価の関係は重要です。期中は仕入勘定で処理していますが、決算整理で「期首商品棚卸高を足し、期末商品棚卸高を引く」調整をして、売れた分だけの原価に直したものが売上原価です。この調整を飛ばすと当期純利益が期末在庫のぶんだけずれるため、簿記3級の決算の手順の中でも最初に確認したい論点になります。
解答手順を固定してしまう
- 決算整理仕訳をすべて切り、決算整理前残高試算表の金額に加減する
- 収益に属する科目を貸方へ、費用に属する科目を借方へ、表示名に直しながら書き写す
- 貸方(収益)の合計を出す
- 借方(費用)の合計を出す
- 差額を当期純利益として借方の最終行に記入し、左右の合計が一致することを確認する
この5ステップは、問題の難易度が変わっても順番は変わりません。時間が足りないときでも、収益側だけは確実に集計しておくと、当期純利益の桁のオーダーが分かり、部分点を拾いやすくなります。
貸借対照表から当期純利益を求める — 純資産の増加分を見る
貸借対照表(B/S)は決算日という一時点の財産の状態を表す書類で、左に資産、右に負債と純資産を並べます。資産=負債+純資産という等式が常に成り立っており、これを純資産について解くと「純資産=資産−負債」、つまり返す義務のあるお金を差し引いた正味の財産が純資産だと分かります。この純資産が1年でどれだけ増えたかを見るのが、財産法による当期純利益の求め方です。
期首と期末の貸借対照表を並べて比べる
期首と期末で、資産と負債が次のように変化した会社を考えます。
| 項目 | 期首(前期末) | 期末(当期末) |
|---|---|---|
| 資産 | 1,200,000 | 1,500,000 |
| 負債 | 700,000 | 850,000 |
| 純資産(資産−負債) | 500,000 | 650,000 |
純資産は期首500,000円から期末650,000円へ、150,000円増えています。期中に増資も配当もしていなければ、この150,000円がそのまま当期純利益です。資産が300,000円増えているのに利益が150,000円にとどまるのは、増えた資産のうち150,000円ぶんは借入金などの負債でまかなわれているからで、負債で買った資産はもうけではないという当たり前のことが式に表れています。
ここで注意したいのは、貸借対照表そのものには「当期純利益」という行が独立して現れるとは限らない、という点です。財産法は2期分の貸借対照表を突き合わせて差を取る方法であり、1枚の貸借対照表を眺めるだけでは利益は読み取れません。前期と当期を並べて初めて、1年間でどれだけ純資産が積み上がったかが見えます。
資産・負債の内訳から純資産を計算する問題
試験では純資産の金額が与えられず、資産と負債の内訳だけが並べられることがあります。その場合は、まず資産に属する科目と負債に属する科目を仕分けして合計する作業が必要です。
売掛金と買掛金、貸付金と借入金のように、名前が似ていて左右が逆になる組み合わせが引っかけどころです。仕分けを間違えると純資産の金額が二重にずれるため、当期純利益も大きく外れます。どの科目がどの側に来るかの整理は貸借対照表の読み方で図解しているので、あいまいなまま進めないようにしてください。
財産法が役に立つ場面
収益と費用の記録が完全でない小規模な事業では、期首と期末の財産を数えて利益を推定する財産法が実務的な意味を持ちます。簿記の試験でも、資料として与えられるのが貸借対照表の項目だけというケースでは、財産法でしか答えを出せません。損益法が使えるときは損益法で求め、財産法は検算に回す — この使い分けを決めておくと、問題文を読んだ瞬間にどちらの道を通るか判断できます。
簿記3級の貸借対照表では当期純利益はどこに現れるか
簿記3級の第3問で貸借対照表を作成するとき、多くの人が探してしまうのが「当期純利益」という行です。しかし解答用紙にその行はありません。当期純利益は純資産の部の繰越利益剰余金に含めて表示するのがルールだからです。損益計算書では独立した行として最後に登場した金額が、貸借対照表では既存の繰越利益剰余金に合流して1つの数字になります。
繰越利益剰余金は「前期までの利益+当期純利益」
決算整理前残高試算表の繰越利益剰余金が200,000円で、当期純利益が105,000円だったとします。このとき貸借対照表に表示する繰越利益剰余金は、200,000+105,000=305,000円です。前期までに積み上げた利益の残りに、今年稼いだ分を足した金額、という理解で足ります。配当を行った期であれば、その配当額は期中の仕訳ですでに繰越利益剰余金から減っているため、あらためて差し引く必要はありません。
この関係は検算にも使えます。貸借対照表の借方合計と貸方合計が一致しないとき、差額が当期純利益と同じ金額なら、繰越利益剰余金への加算を忘れている可能性が高いといえます。金額を探し回る前に、まずこの1点を確認するだけで見つかることが少なくありません。
貸借対照表でも表示科目の読み替えが必要
損益計算書と同じく、貸借対照表にも帳簿の勘定科目のままでは書けないものがあります。
| 帳簿上の勘定科目 | 貸借対照表の表示 | 置く場所 |
|---|---|---|
| 繰越商品 | 商品 | 資産(流動資産) |
| 貸倒引当金 | 売掛金・受取手形から控除 | 資産のマイナス表示 |
| 備品減価償却累計額 | 備品から控除 | 資産のマイナス表示 |
| 前払保険料・未払家賃など | 前払費用・未払費用 | 資産または負債 |
貸倒引当金と減価償却累計額は、負債側に置きたくなりますが、資産から差し引く形(控除形式)で資産の部に表示します。解答用紙にあらかじめ「△」やカッコ付きの行が用意されていることが多いので、その形に合わせて記入します。経過勘定の前払保険料が前払費用という名前に変わる点も、3級の頻出ポイントです。
損益計算書と貸借対照表は同時に完成する
簿記3級の財務諸表作成問題では、損益計算書と貸借対照表の両方を1つの資料から作ります。決算整理仕訳を1本切るたびに、その影響は収益・費用のどちらかと、資産・負債のどちらかに同時に及びます。たとえば減価償却費30,000円を計上すれば、損益計算書に費用が30,000円増えて当期純利益が30,000円減り、同時に貸借対照表の備品減価償却累計額が30,000円増えて資産が30,000円減ります。当期純利益の減少と資産の減少が同額で対応しているため、貸借対照表は必ずバランスを保ちます。この対応関係を意識しておくと、片方だけ直してもう片方を直し忘れる、という取りこぼしが減ります。
精算表で当期純利益を求める — 2か所の差額が一致する
精算表は、決算整理前の残高試算表から決算書までの流れを1枚にまとめた表です。日商簿記3級で扱う8桁精算表は、残高試算表欄・修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄の4区分が、それぞれ借方と貸方の2列を持つため合計8列になります。1行が1つの勘定科目に対応しており、左から右へ金額を動かしていくと、収益・費用は損益計算書欄へ、資産・負債・純資産は貸借対照表欄へ振り分けられます。
当期純利益は最後の2行で求める
すべての科目を右端まで振り分け終えたら、損益計算書欄の借方合計と貸方合計を出します。収益が費用を上回っていれば、その差額が当期純利益で、損益計算書欄の借方に記入します。同じ金額を貸借対照表欄の貸方にも記入すると、貸借対照表欄も左右が一致します。1つの当期純利益を、左右の位置を変えて2か所に書き込むイメージです。
図の例では、損益計算書欄の費用合計が915,000円・収益合計が1,020,000円なので差額は105,000円、貸借対照表欄の資産合計が1,305,000円・負債と純資産の合計が1,200,000円なので差額はやはり105,000円です。この2つの差額が一致することが、精算表がうまく解けたことの証明になります。損益計算書欄の差額と貸借対照表欄の差額が違う金額になったら、どこかの科目を反対側の欄へ振り分けたか、修正記入の加減を逆にしている可能性が高いといえます。
当期純損失のときは記入する側が入れ替わる
費用が収益を上回った場合は、損益計算書欄の貸方に、貸借対照表欄の借方に差額を書き、行の名前を「当期純損失」とします。どちらの欄でも、金額の小さいほうの列に差額を足して左右を揃える、と覚えておけば記入する側で迷いません。解答用紙の最終行があらかじめ「当期純利益」と印字されている場合は、損失のときにその行に金額を書くと符号の扱いが問われることがあるため、問題文の指示を必ず確認してください。
精算表の当期純利益は途中経過にすぎない
精算表で求めた当期純利益は、あくまで下書きの表の上の数字です。帳簿を締め切るには、このあと決算振替仕訳を行って損益勘定と繰越利益剰余金勘定に反映させる必要があります。精算表は決算の全体像を1枚で見渡すための道具であり、埋め方の手順や決算整理ごとの書き込み方は簿記3級の精算表で詳しく整理しています。
決算振替仕訳で当期純利益を帳簿に確定させる
計算して求めた当期純利益は、仕訳を切って帳簿に落とし込むことで初めて確定します。この手続きが決算振替仕訳で、損益という集計専用の勘定を経由して3本の仕訳を切ります。収益と費用の残高をいったん損益勘定に集め、そこで出た差額を繰越利益剰余金勘定へ移す、という流れです。
1本目で収益の残高をゼロにし、2本目で費用の残高をゼロにします。この時点で損益勘定には貸方1,020,000円・借方915,000円が集まっており、差額105,000円が貸方に残ります。これが当期純利益そのものです。3本目でこの残高を繰越利益剰余金へ振り替えると、損益勘定もゼロになり、収益・費用の勘定はすべて次期にゼロから再スタートできる状態になります。
収益・費用の勘定を毎期ゼロに戻す理由
当期純利益は「この1年で稼いだ金額」なので、前期の売上や前期の給料が混ざっていては意味をなしません。決算のたびに収益と費用の勘定を締め切ってゼロに戻すことで、翌期の集計が当期分だけになります。一方で資産・負債・純資産の勘定は、期末の残高をそのまま翌期首へ引き継ぎます。締め切って消えるグループと、引き継ぐグループの違いを押さえておくと、決算振替仕訳が何をしているのかが腑に落ちます。
当期純損失のときの3本目
費用が収益を上回った場合、損益勘定には借方に差額が残ります。3本目の仕訳は向きが逆になり、借方に繰越利益剰余金、貸方に損益と記入します。繰越利益剰余金が減る=これまで積み上げてきた利益を取り崩した、という意味になります。繰越利益剰余金が借方残高(マイナス)になることもあり、その場合は貸借対照表の純資産の部にマイナス表示されます。
ここまでの決算整理から締切までの一連の流れは、簿記3級の決算整理仕訳を押さえたうえで通しで練習すると定着が早くなります。当期純利益の計算だけを切り出して覚えるのではなく、決算という手続きの最後の一歩として位置づけておくのがおすすめです。
当期純利益が合わないときのチェックリスト
当期純利益は決算全体の集大成なので、どこか1か所でも間違えると答えがずれます。裏を返せば、ずれ方には手がかりがあります。差額の金額そのものが原因を教えてくれることが多いため、闇雲に検算し直す前に次の順で当たりをつけてください。
| ずれ方 | 疑うところ | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 差額がある決算整理の金額と同じ | その仕訳の反映もれ | 問題文の決算整理事項を上から番号で消し込む |
| 差額がある金額のちょうど2倍 | 借方と貸方を逆に記入 | 該当額の科目を左右どちらに書いたか見る |
| 差額が期末商品棚卸高と同じ | 売上原価の算定もれ | 仕入勘定の期首加算・期末減算を確認 |
| 差額が繰越利益剰余金と関係する | 当期純利益の加算もれ | B/Sの繰越利益剰余金に当期純利益を足したか |
とくに多い5つの原因
- 売上原価の算定もれ — 仕入をそのまま費用にしてしまい、期末商品棚卸高のぶん当期純利益が過小になる。
- 貸倒引当金を差額補充にしていない — 設定額をそのまま繰り入れると、既存残高のぶん費用が多くなる。
- 減価償却費の月割計算もれ — 期中に取得した資産は使った月数ぶんだけ計上する。12か月で計算すると費用が過大になる。
- 経過勘定の未処理 — 前払費用・未払費用・前受収益・未収収益の調整を飛ばすと、収益も費用も期間がずれる。
- 法人税等の計上もれ — 3級でも法人税等は費用として最後に差し引く。忘れると当期純利益が税額のぶん多く出る。
当期純損失になったときの扱い
計算の結果マイナスになっても、間違いとは限りません。費用が収益を上回れば当期純損失になり、問題としてもそのように作られていることがあります。求め方は同じで、記入する側が入れ替わるだけです。損益計算書では貸方、精算表の損益計算書欄では貸方、貸借対照表欄では借方、決算振替仕訳では繰越利益剰余金が借方に来ます。「小さいほうの列に差額を足して揃える」という原則を1つ持っておけば、利益でも損失でも同じ手順で処理できます。
検算は財産法で行う
時間に余裕があるときの検算には、財産法が向いています。損益計算書側で求めた当期純利益と、貸借対照表側の純資産の増加分が一致していれば、収益・費用の集計と資産・負債の集計が同じ結論に着地したことになります。精算表を使っている場合は、損益計算書欄と貸借対照表欄の差額が一致するかを見るだけで同じ検算ができます。まったく別の経路で同じ数字が出るという性質は、簿記が持つ自己検証のしくみそのものです。
まとめ — 当期純利益の求め方は「収益−費用」と「純資産の増加」の2本
当期純利益の求め方は、突き詰めれば2本しかありません。収益から費用を差し引く損益法と、期末純資産から期首純資産を差し引く財産法です。損益計算書はこのうち損益法を書類の形にしたもので、簿記3級では収益と費用を左右に並べ、その差額を借方の最後に書いて左右を一致させます。貸借対照表には当期純利益という行はなく、純資産の部の繰越利益剰余金に含めて表示します。精算表では損益計算書欄と貸借対照表欄の2か所に、位置を左右入れ替えて同じ金額を記入し、その一致が計算の正しさを保証します。最後に決算振替仕訳で損益勘定を経由して繰越利益剰余金へ振り替えれば、当期純利益は帳簿の上で確定します。
覚えることは多く見えますが、根っこにあるのは「稼いだぶんだけ会社の正味の財産が増える」というひとつの事実です。損益計算書・貸借対照表・精算表・損益勘定は、その同じ事実を違う角度から映しているだけなので、どの入口から入っても同じ105,000円や150,000円にたどり着きます。この見取り図さえ持っていれば、第3問で形式が変わっても手が止まりません。
あとは手を動かすだけです。当期純利益がずれる原因のほとんどは決算整理仕訳の段階にあるので、売上原価の算定・貸倒引当金の差額補充・減価償却の月割・経過勘定という定番の論点を、1本ずつ確実に切れる状態にしておくのが最短ルートになります。学猿の仕訳ドリルは、こうした決算整理の仕訳を勘定科目の選択と金額入力の形で繰り返し練習できます。間違えた問題は自動で復習に回るので、当期純利益が合わない原因になりがちな論点を、放置せずに潰していけます。まずは決算の単元から数問だけでも解いてみてください。

