決算整理仕訳とは?何のための仕訳かをわかりやすく解説
決算整理仕訳とは、期中に記録してきた帳簿の金額を、決算日時点の実態に合わせて直すための仕訳です。簿記3級の学習で最初につまずきやすい場所ですが、やっていることは「帳簿の数字と現実がズレているので、そのズレの分だけ仕訳を1本書いて直す」というだけで、複雑な理屈はありません。ここをわかりやすく整理しておくと、第3問の総合問題も第1問の仕訳問題もぐっと解きやすくなります。
期中の記録は、決算日の実態とズレている
簿記では、取引が起きたその日に仕訳を切って帳簿に記録していきます。ところが1年分を記録し終えて決算日を迎えると、帳簿の数字が決算日の実態と食い違っている箇所がいくつも出てきます。たとえば次のようなズレです。
- 期中に仕入れた商品のうち、売れ残った分がまだ費用として帳簿に載ったままになっている
- 1年分をまとめて前払いした保険料のうち、来期の分まで当期の費用にしてしまっている
- 建物や備品を1年使って価値が減ったのに、帳簿の金額は買ったときのままになっている
- 借入金の利息が発生しているのに、支払日が来ていないので1円も記録されていない
どれも期中の仕訳が間違っていたわけではありません。期中は「お金が動いた事実」を記録し、決算では「当期の成績と決算日の財産」に直すという役割分担になっているだけです。この直しの作業が決算整理であり、そこで切る仕訳が決算整理仕訳です。決算整理の前の残高を集計したものを決算整理前残高試算表、決算整理を反映した後の残高を集計したものを決算整理後残高試算表と呼びます。
決算整理仕訳が試験でどう出るか
簿記3級の試験は60分で、第1問(仕訳15問・45点)、第2問(帳簿や勘定記入など・20点)、第3問(決算の総合問題・35点)の3題構成です。合格は100点満点中70点以上。決算整理仕訳は、第3問でまるごと問われるうえに第1問にも混ざるため、決算整理まわりだけで40点前後を左右します。大問ごとの配点は簿記3級の配点を解説した記事で詳しく扱っています。
第3問では、決算整理事項が5〜8個ほど箇条書きで与えられ、それを反映した精算表・貸借対照表と損益計算書・決算整理後残高試算表のいずれかを作らせる形が定番です。つまり決算整理仕訳が正確に切れれば第3問はほぼ解けるということであり、逆にここが曖昧なままだと、表の形式をいくら練習しても点が伸びません。決算手続き全体の流れは簿記3級の決算をまとめた記事、表の埋め方は精算表の記事で扱っているので、本記事は仕訳そのものに絞って進めます。
3級で出る決算整理は8種類しかない
初めて学ぶと膨大に見えますが、簿記3級で問われる決算整理は次の8種類に収まります。この一覧を先に頭に入れておくと、問題文の指示がどれに当たるかを判断できるようになります。
| 論点 | 直すズレ | 出題頻度 |
|---|---|---|
| 売上原価の算定 | 売れ残った商品が費用のままになっている | ほぼ毎回 |
| 貸倒引当金の設定 | 回収できないかもしれない債権を見積っていない | ほぼ毎回 |
| 減価償却 | 固定資産の価値の減少が記録されていない | ほぼ毎回 |
| 経過勘定(前払・前受・未収・未払) | 費用収益の金額が当期分とずれている | ほぼ毎回 |
| 現金過不足・仮払金仮受金の整理 | 仮の勘定が残ったままになっている | 高い |
| 当座借越の振替 | マイナス残高の預金が資産のままになっている | 中 |
| 貯蔵品への振替 | 使い切っていない切手・収入印紙が費用のまま | 中 |
| 消費税・法人税等の確定 | 納付額が確定していない | 高い |
なお日商簿記の出題範囲は数年おきに改定されます。2026年度中に実施される試験までは現行(2022年度適用)の出題区分表が使われますが、2027年4月1日以降の試験に適用される区分表の暫定版が公表されており、3級から手形の論点が外れる一方、固定資産の除却や定率法による減価償却が加わる見込みです。受験する回にどの区分表が適用されるかは、商工会議所の公式サイトで最新情報を確認してください。
決算整理仕訳の解き方 — 迷わないための4ステップ
決算整理仕訳の解き方には決まった型があります。問題文を読んで、いきなり答えの仕訳を思い浮かべようとすると手が止まりますが、次の4ステップを毎回同じ順番でたどれば、初見の設定でも仕訳にたどり着けます。第3問の総合問題を解くときも、この手順を決算整理事項の1つずつに繰り返し適用するだけです。
ステップ1 — どの論点の話かを見分ける
決算整理事項は、独特の言い回しで書かれています。逆に言えば、言い回しと論点は1対1で対応しているので、キーワードを覚えてしまえば見分けは一瞬で終わります。よく出る表現と、対応する論点は次のとおりです。
| 問題文の言い回し | 論点 |
|---|---|
| 期末商品棚卸高は◯◯円である | 売上原価の算定 |
| 売掛金の期末残高に対して◯%の貸倒れを見積る | 貸倒引当金の設定 |
| 備品について定額法により減価償却を行う | 減価償却 |
| 保険料は◯月に向こう1年分を支払ったものである | 前払費用(経過勘定) |
| 家賃◯か月分が未払いである | 未払費用(経過勘定) |
| 現金過不足の原因は判明しなかった | 雑損・雑益への振替 |
| 仮払消費税と仮受消費税を相殺し納付額を計上する | 消費税の確定 |
| 法人税等を◯◯円計上する | 法人税等の確定 |
見分けがついた時点で、書くべき勘定科目の組み合わせは半分決まります。「保険料」と書いてあるから保険料の仕訳、ではなく、「向こう1年分を支払った」という状況が前払費用を呼び出しているという読み方をしてください。
ステップ2 — 決算日時点の「あるべき金額」を計算する
次に、決算日にその科目がいくらであるべきかを計算します。決算整理仕訳でつまずく人の大半は、仕訳の形ではなくこの金額計算で間違えています。論点ごとに計算の型は決まっています。
- 売上原価 — 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 − 期末商品棚卸高
- 貸倒引当金 — 期末の売上債権残高 × 貸倒実績率
- 減価償却費(定額法) — (取得原価 − 残存価額) ÷ 耐用年数。期中取得なら月割り
- 経過勘定 — 支払額(受取額) × 翌期に属する月数 ÷ 契約月数
ここで出した金額は、いきなり仕訳に書かず、問題用紙の余白に「保険料の前払 3か月分 = 36,000 × 3/12 = 9,000」のようにメモしてください。計算過程を残しておくと、貸借が合わなかったときに検算の起点になります。
ステップ3 — 差額だけを仕訳にする
ステップ2で出したのは「あるべき金額」であって、そのまま仕訳に書く金額とは限りません。仕訳にするのはあるべき金額と、決算整理前の帳簿残高との差額です。この区別が決算整理仕訳の最大の勘所です。
典型が貸倒引当金です。設定額が10,000円と計算できても、決算整理前の貸倒引当金残高が3,000円あるなら、仕訳に書くのは差額の7,000円だけ(差額補充法)。10,000円をそのまま繰り入れるのは定番の失点パターンです。減価償却も同じ考え方で、当期に発生した1年分だけを費用にします。一方で、売上原価の算定や経過勘定のように、差額ではなく計算した金額をそのまま振り替える論点もあります。「補充するのか、丸ごと振り替えるのか」を論点ごとに確認するのがステップ3です。
ステップ4 — 借方と貸方に振り分け、貸借一致を確かめる
最後に、金額を借方と貸方に振り分けます。振り分けの判断は期中の仕訳とまったく同じで、資産・費用は増えたら借方、負債・純資産・収益は増えたら貸方というホームポジションで決まります。基本の考え方は簿記3級の仕訳の記事にまとめています。
決算整理仕訳を書き終えたら、必ず借方合計と貸方合計が一致しているかを1本ずつ確認してください。第3問では決算整理仕訳を5〜8本書きますが、1本でも貸借がずれていると、精算表や財務諸表の最後で合計が合わなくなり、原因探しに数分を失います。仕訳の段階で潰しておくのが結局いちばん速い解き方です。
決算整理①売上原価の算定 — 「しーくりくりしー」の2本
決算整理仕訳のなかで最初の関門になるのが売上原価の算定です。仕訳の形自体は2本だけですが、なぜその2本を書くのかを理解しないまま語呂で覚えると、金額を入れ替えて書くミスが止まりません。ここだけは理屈から押さえてください。
なぜ仕入勘定の中で売上原価を計算するのか
簿記3級の商品売買は三分法で記帳します。商品を仕入れたときは仕入(費用)、売ったときは売上(収益)、期首と期末に残っている在庫は繰越商品(資産)という3つの勘定を使う方法です。期中は、仕入れた金額をすべて仕入勘定に計上していきます。
ところが決算日に売れ残っている商品は、まだ費用にしてはいけません。当期の費用にできるのは当期に売れた分の原価、つまり売上原価だけだからです。そこで決算整理で、期首に残っていた在庫を仕入勘定に足し、期末に残っている在庫を仕入勘定から引きます。この操作で仕入勘定の残高が売上原価そのものに変わります。式で書くと次のとおりです。
2本の仕訳と「しーくりくりしー」
実際の仕訳は次の2本です。期首商品棚卸高が80,000円、期末商品棚卸高が100,000円の場合で示します。
- (借)仕入 80,000 /(貸)繰越商品 80,000 — 期首の在庫を仕入勘定へ振り替える
- (借)繰越商品 100,000 /(貸)仕入 100,000 — 期末の在庫を仕入勘定から抜く
この2本を勘定科目の並びから「しーくりくりしー」(仕入・繰越商品/繰越商品・仕入)と唱えて覚えるのが定番です。語呂で押さえるのは順番だけにして、金額は必ず「期首を足して期末を引く」で判断してください。1本目に期末の金額を書いてしまう取り違えが、最も多い失点です。
期末商品棚卸高は貸借対照表にも出ていく
2本目の仕訳で繰越商品の借方に入れた100,000円は、そのまま決算日の在庫の金額であり、貸借対照表には商品という科目名で計上されます。繰越商品という勘定科目名は帳簿の中だけの呼び名で、貸借対照表の表示は商品という点は、財務諸表を作成させる出題で問われます。損益計算書のほうでは、仕入勘定の残高が売上原価という科目名で表示されます。
「売上原価は売上原価勘定で計算する」と指示されたら
問題文に「売上原価は売上原価勘定で計算すること」と書かれている場合は、仕入勘定ではなく売上原価という勘定を使って同じ計算を行います。仕訳は3本になります。
- (借)売上原価 80,000 /(貸)繰越商品 80,000 — 期首在庫を売上原価へ
- (借)売上原価 600,000 /(貸)仕入 600,000 — 当期仕入高をまるごと売上原価へ
- (借)繰越商品 100,000 /(貸)売上原価 100,000 — 期末在庫を売上原価から抜く
やっていることは通常の2本の仕訳と同じで、集計の器が仕入勘定から売上原価勘定に変わっただけです。この指示が出たときは仕入勘定の残高が最終的にゼロになるのが正解の目印になります。仕入勘定に残高が残っていたら、2本目の振替を忘れています。
決算整理②貸倒引当金の設定と減価償却 — 見積りの2論点
貸倒引当金の設定と減価償却は、どちらも「将来こうなるであろう金額を、当期の費用として先に計上する」という見積りの処理です。現金が1円も動かないのに費用が発生するため、期中の仕訳に慣れた直後ほど違和感を覚えます。ただし計算の型と仕訳の形は完全に固定されているので、覚えてしまえば安定した得点源になります。
貸倒引当金 — 差額補充法で不足分だけを繰り入れる
売掛金は、取引先が倒産すれば回収できません。この回収不能の見積額を貸倒引当金として決算で計上します。計算は決算日の売上債権残高に貸倒実績率を掛けるだけです。
簿記3級で使うのは差額補充法です。すでに貸倒引当金の残高がある場合、設定額との差額だけを追加で計上します。売掛金の期末残高が500,000円、貸倒実績率2%なら設定額は10,000円。決算整理前の貸倒引当金残高が3,000円あるなら、仕訳は(借)貸倒引当金繰入 7,000 /(貸)貸倒引当金 7,000 です。設定額を出したら必ず前残高を引く——これを飛ばして10,000円を繰り入れるのが最頻出の失点です。
逆に、決算整理前の残高が設定額を上回っている場合は、超過分を(借)貸倒引当金 ×× /(貸)貸倒引当金戻入 ×× で戻し入れます。出題頻度は低いものの、金額が逆転している設定を見たら戻入を疑ってください。なお貸倒引当金は資産のマイナスを表す評価勘定なので、貸借対照表では売掛金から控除する形で表示されます。負債の側に並べるのは誤りです。
減価償却 — 定額法と月割計算
建物や備品は使うほど価値が減っていきます。その減少分を当期の費用として計上するのが減価償却で、簿記3級では定額法を使います。
残存価額をゼロとする設定が近年は主流で、その場合は取得原価を耐用年数で割るだけです。取得原価720,000円・耐用年数6年・残存価額ゼロの備品なら、1年分の減価償却費は120,000円になります。仕訳は間接法で(借)減価償却費 120,000 /(貸)備品減価償却累計額 120,000 と書きます。備品勘定を直接減らさず、累計額という別勘定に積み上げるのが間接法の特徴で、貸借対照表では取得原価から累計額を控除する形で表示されます。減価償却の考え方そのものは減価償却の記事で詳しく解説しています。
注意が必要なのは期中に取得した固定資産です。当期に使った月数分しか費用にできないため、月割で計算します。上の備品を当期の10月1日に取得し、決算日が3月31日なら、使ったのは6か月分。120,000 × 6/12 = 60,000円が当期の減価償却費です。問題文に取得日が書かれていたら、それは月割計算の合図だと考えてください。日割りにはしません。
2つの論点に共通する検算のポイント
どちらの論点も、費用の勘定(貸倒引当金繰入・減価償却費)が借方に来て、貸方には資産のマイナスを表す勘定(貸倒引当金・減価償却累計額)が来ます。借方が費用、貸方が◯◯引当金または◯◯累計額という形から外れていたら、どこかで科目を取り違えています。仕訳を書いたあとにこの形を確認するだけで、貸借を逆に書くミスは防げます。
決算整理③経過勘定 — 前払・前受・未収・未払と借入金の利息
経過勘定は、決算整理仕訳のなかで最も差がつく論点です。前払費用・前受収益・未収収益・未払費用の4つの型があり、どれも「支払った(受け取った)タイミング」と「サービスを受けた(提供した)期間」がずれていることから生まれます。4つを別々に暗記しようとすると混乱するので、2つの軸で整理してください。
4つの型は2×2で整理できる
1つ目の軸は費用か収益か。保険料や支払家賃なら費用、受取家賃や受取利息なら収益です。2つ目の軸は先に払った(受け取った)のか、まだ払っていない(受け取っていない)のか。この2つを組み合わせると、4つの型が過不足なく決まります。
覚え方のポイントは「前」が付く2つは当期の損益から減らし、「未」が付く2つは当期の損益に加えるという点です。前払費用は払いすぎた分を費用から引き、未払費用はまだ払っていない分を費用に足します。前受収益は受け取りすぎた分を収益から引き、未収収益はまだ受け取っていない分を収益に足します。未収収益の具体例は未収収益の記事でも扱っています。
前払費用の計算 — 月数の数え方で差がつく
最も出題が多いのが前払です。「保険料は当期の8月1日に向こう1年分36,000円を支払ったものである」という設定で、決算日が3月31日の場合を考えます。1年分のうち、当期に属するのは8月から3月までの8か月分、翌期に属するのは4月から7月までの4か月分です。
仕訳は(借)前払保険料 12,000 /(貸)保険料 12,000。支払時に費用として全額を計上してあるので、翌期に属する分を費用から抜いて資産に振り替える形になります。月数は必ず「翌期に属する月数」を数えてください。当期の月数を掛けてしまう取り違えが定番のひっかけです。月数を数えるときは、問題用紙の余白に4月から3月までの12マスを書いて、支払期間に線を引くと確実です。
借入金の利息 — 未払費用の代表例
借入金がからむ決算整理は、ほぼ利息の話です。「当期の11月1日に年利率3%で借入金1,200,000円を借り入れた。利息は返済時に一括して支払う契約である」という設定なら、決算日までの5か月分(11月から3月)の利息が発生しているのに、まだ1円も支払っていません。
仕訳は(借)支払利息 15,000 /(貸)未払利息 15,000 です。借入金そのものの金額は決算整理では動かしません。動くのは利息だけ、という点を押さえてください。借入金1,200,000円を減らす仕訳を書いてしまうのは、返済の仕訳と混同したときに起きるミスです。逆に、貸付金の利息を受け取っていない場合は(借)未収利息 ×× /(貸)受取利息 ×× となり、未収収益の型になります。
翌期首の再振替仕訳もセットで覚える
経過勘定で使った前払・前受・未収・未払の各勘定は、翌期首に元の費用・収益の勘定へ戻します。これが再振替仕訳です。上の未払利息なら、翌期首に(借)未払利息 15,000 /(貸)支払利息 15,000 と、決算整理仕訳とちょうど貸借が逆の仕訳を切ります。こうしておけば、実際に利息を支払ったときは通常どおり支払利息で処理でき、二重計上になりません。第1問では、決算整理仕訳よりも再振替仕訳のほうが出題されることもあるので、逆向きの形もあわせて確認しておいてください。
決算整理④消費税・法人税等・現金過不足・貯蔵品・当座借越
ここまでの4大論点のほかにも、決算のタイミングで処理する項目がいくつかあります。1つひとつは仕訳1本で終わる小さな論点ですが、第3問には必ず数個が混ぜ込まれており、取りこぼすと合格ラインが遠のきます。まとめて確認しておきましょう。
消費税 — 仮払と仮受を相殺して納付額を出す
簿記3級では税抜方式で消費税を処理します。期中は、商品を仕入れて支払った消費税を仮払消費税(資産)、商品を売って預かった消費税を仮受消費税(負債)に計上しておきます。決算では、この2つを相殺して納付額を確定させます。仮受消費税が180,000円、仮払消費税が120,000円なら仕訳は次のとおりです。
- (借)仮受消費税 180,000 /(貸)仮払消費税 120,000、未払消費税 60,000
差額の60,000円が納付すべき消費税で、未払消費税(負債)として貸借対照表に載ります。相殺後に仮払消費税と仮受消費税の残高がどちらもゼロになるのが正解の目印です。逆に仮払消費税が仮受消費税を上回る場合は、差額が還付されるため未収還付消費税(資産)として借方に立てます。
法人税等 — 中間納付の有無を必ず確認する
会社の利益にかかる法人税・住民税・事業税は、まとめて法人税等という科目で処理します。決算で当期の税額が確定したら、(借)法人税等 ×× /(貸)未払法人税等 ×× と計上します。ここで見落としやすいのが中間納付です。期中に中間申告で納めた分は仮払法人税等(資産)に計上されているので、確定額からその分を差し引いた残りが未払額になります。確定額が150,000円で仮払法人税等が60,000円なら、(借)法人税等 150,000 /(貸)仮払法人税等 60,000、未払法人税等 90,000 です。問題文に仮払法人税等が出てきたら、それは必ず取り崩すと考えてください。
現金過不足・仮払金・仮受金 — 仮の勘定を残さない
期中に現金の実際有高と帳簿残高がずれたとき、いったん現金過不足勘定に入れておきます。決算日まで原因が判明しなかった分は、借方残なら雑損、貸方残なら雑益へ振り替えます。現金過不足勘定は決算後の帳簿に残してはいけない仮の勘定です。同じ考え方で、内容が確定していない出金・入金を入れておく仮払金・仮受金も、判明した内容に応じて旅費交通費や売掛金といった正しい科目へ振り替えます。
貯蔵品と当座借越 — 残り2つの振替
郵便切手や収入印紙は、買ったときに通信費・租税公課として費用処理しています。決算日に使い切っていない分が残っていたら、その分を貯蔵品(資産)へ振り替えます。仕訳は(借)貯蔵品 ×× /(貸)通信費 ××(または租税公課 ××)。これも翌期首に再振替仕訳で元へ戻します。
当座預金が貸方残高、つまりマイナスになっている場合は、当座借越として銀行からの借入と同じ扱いにします。決算では(借)当座預金 ×× /(貸)当座借越 ×× と振り替え、貸借対照表の負債の部に表示します。マイナスの資産をそのまま貸借対照表に載せないための整理です。当座借越勘定の代わりに借入金勘定を使う指示が出ることもあるので、問題文の勘定科目群を先に確認してください。
損益振替仕訳 — 決算整理の次に来る仕上げの3本
決算整理仕訳をすべて切り終えたら、次は帳簿を締めるための振替に進みます。ここで登場するのが損益勘定です。決算整理仕訳と混同されやすいのですが、両者は目的がまったく違います。決算整理は金額のズレを直す作業、損益振替は当期の成績を1か所に集めて純資産へ送り込む作業です。第2問で勘定記入として問われることもあるため、決算整理仕訳とセットで押さえておきましょう。
損益勘定に収益と費用を集める2本
まず、収益の勘定をすべて損益勘定の貸方へ振り替えます。売上が1,000,000円、受取手数料が50,000円なら、(借)売上 1,000,000、受取手数料 50,000 /(貸)損益 1,050,000。収益は普段は貸方残高なので、借方に書いて残高をゼロにするわけです。
次に、費用の勘定をすべて損益勘定の借方へ振り替えます。仕入(売上原価)580,000円、給料 200,000円、減価償却費 120,000円、貸倒引当金繰入 7,000円なら、(借)損益 907,000 /(貸)仕入 580,000、給料 200,000、減価償却費 120,000、貸倒引当金繰入 7,000 です。決算整理で計上した費用も、当然この振替の対象に含まれます。決算整理を反映する前の金額で振り替えてしまうと、当期純利益が丸ごとずれるので注意してください。
損益勘定の残高を繰越利益剰余金へ送る1本
2本の振替が終わると、損益勘定には貸方1,050,000円・借方907,000円が並び、差額143,000円が貸方に残ります。この差額が当期純利益です。最後にこれを繰越利益剰余金(純資産)へ振り替えます。
- (借)損益 143,000 /(貸)繰越利益剰余金 143,000 — 当期純利益の場合
- (借)繰越利益剰余金 ×× /(貸)損益 ×× — 当期純損失の場合
この3本目を書き終えると損益勘定の残高もゼロになり、当期の成績が貸借対照表の純資産に吸収されます。当期純利益は、損益計算書の一番下と貸借対照表の繰越利益剰余金の増加分で必ず一致します。第3問で財務諸表を作らせる問題では、この一致が最終的な検算になります。
決算整理仕訳・決算振替仕訳・再振替仕訳の違い
名前が似た3つの仕訳が出てくるため、役割を一度表で整理しておきます。
| 仕訳の名前 | いつ切るか | 何のために切るか |
|---|---|---|
| 決算整理仕訳 | 決算日 | 帳簿の金額を決算日の実態に合わせる |
| 決算振替仕訳(損益振替) | 決算日(整理の後) | 収益費用を損益勘定に集め、純利益を純資産へ送る |
| 再振替仕訳 | 翌期首 | 経過勘定・貯蔵品を元の科目へ戻す |
順番は決算整理仕訳 → 決算振替仕訳 → (年度が変わって)再振替仕訳です。この並びを覚えておけば、問題文が「決算にあたり」と書いているのか「期首にあたり」と書いているのかで、求められている仕訳が即座に判断できます。
決算整理仕訳が難しいと感じる5つの理由と克服のコツ
決算整理仕訳は難しいと言われます。実際、簿記3級の学習者がつまずくポイントの上位を占める分野です。ただし難しさの正体は5つに分解でき、それぞれに対処のコツがあります。漠然と「決算整理が苦手」と考えている限り対策の打ちようがないので、自分がどれで詰まっているのかを特定してください。
理由1 — 現金が動かないのに仕訳を切る
期中の仕訳は、お金や商品が動いたから記録します。ところが減価償却も貸倒引当金も経過勘定も、現金は1円も動きません。この違和感が最初の壁です。コツは、決算整理仕訳を「取引の記録」ではなく「当期の成績を正しくするための調整」だと割り切ること。当期の売上に対応する費用はいくらか、という問いへの答えを書いているのだと考えると、現金が動かないことは気にならなくなります。
理由2 — 問題文の言い回しが独特
「期末商品棚卸高は◯◯円である」「向こう1年分を支払った」といった表現は、日常語ではありません。しかも問題文には、どの勘定科目を使えとは書かれていません。コツは、第2章で挙げた言い回しと論点の対応表を暗記してしまうことです。言い回しのパターンは十数種類しかなく、試験ごとにほとんど変わりません。過去問や予想問題を数回分読んで、決算整理事項の文だけを拾い読みする練習が効きます。
理由3 — 金額計算で間違える
仕訳の形は合っているのに金額が違う、というパターンです。前払費用の月数を当期分で数えてしまう、貸倒引当金で前残高を引き忘れる、期中取得の減価償却で月割りを忘れる。これらが3大失点です。コツは、計算過程を必ず問題用紙に書き残すこと。「36,000 × 4/12 = 12,000」と1行残しておけば、後で貸借が合わなかったときに数十秒で原因にたどり着けます。暗算で済ませた計算は検算できません。
理由4 — 論点が多くて全体像が見えない
売上原価、貸倒引当金、減価償却、経過勘定4種、消費税、法人税等、現金過不足、貯蔵品、当座借越。個別に覚えようとすると多く感じます。コツは、第1章の一覧表のように「何のズレを直しているのか」で分類し直すことです。売れ残りのズレ、価値の減少のズレ、期間のズレ、仮の勘定の始末、税金の確定。5つのグループに畳んでしまえば、初見の決算整理事項もどれかに当てはめられます。
理由5 — 第3問の総合問題で処理量に押される
1本ずつなら解けるのに、5〜8本を60分の試験の中で処理しようとすると崩れる、というケースです。コツは解く順番を固定すること。第3問では、決算整理事項を上から順に読んで仕訳をすべて余白に書き出してから、解答欄を埋めにいきます。仕訳と表の記入を交互にやると、行ったり来たりで時間を失います。第3問の目標時間は20〜25分。1つの決算整理事項に2分以上かかりそうなら飛ばして先に進み、確実に取れるところから埋めるのが得点を最大化する解き方です。
克服の近道は「1本を短時間で何度も」
決算整理仕訳は、まとまった時間に総合問題を1回解くより、1本の仕訳を短時間で何度も繰り返すほうが定着します。論点ごとに10問ずつ、金額を変えて解き直す。間違えた論点だけを翌日にもう一度解く。この回し方なら1回5分から取り組めます。次の章に練習問題を用意したので、まずはそこで自分の弱い論点を特定してください。
決算整理仕訳の練習問題10問 — 解答・解説つき
ここからは実際に手を動かす番です。簿記3級で出題される決算整理仕訳問題を、論点をひととおり網羅する形で10問用意しました。すべて当社の会計期間は4月1日から3月31日までとし、決算日は3月31日とします。まず解答を見ずに、紙に仕訳を書き出してください。頭の中で「わかる」と、手で書けるとの間には大きな差があります。この練習問題は市販の問題集からの転載ではなく、本記事のオリジナルです。
問題(全10問)
- 期首商品棚卸高は120,000円、当期商品仕入高は850,000円、期末商品棚卸高は140,000円である。売上原価は仕入勘定で計算する。
- 売掛金の期末残高800,000円に対して2%の貸倒れを見積る(差額補充法)。貸倒引当金の決算整理前残高は5,000円である。
- 建物(取得原価3,000,000円、耐用年数30年、残存価額ゼロ、期首より所有)について定額法により減価償却を行う。記帳方法は間接法とする。
- 備品(取得原価480,000円、耐用年数8年、残存価額ゼロ)を当期12月1日に取得し使用を開始した。定額法・間接法により減価償却を行う。
- 保険料は当期9月1日に向こう1年分24,000円を支払ったものである。
- 当期10月1日に年利率2%で900,000円を借り入れた。利息は返済時に一括して支払う契約である。
- 受取家賃は当期2月1日に向こう6か月分180,000円を受け取ったものである。
- 現金過不足勘定の借方残高3,000円は、決算日までに原因が判明しなかった。
- 消費税の納付額を確定する。仮受消費税の残高は240,000円、仮払消費税の残高は160,000円である(税抜方式)。
- 当期の法人税等を210,000円と算定した。なお中間納付として計上した仮払法人税等が90,000円ある。
解答と解説(1〜5)
- 1. 売上原価の算定
- (借)仕入 120,000 /(貸)繰越商品 120,000、(借)繰越商品 140,000 /(貸)仕入 140,000。2本セットで書きます。この結果、仕入勘定の残高は120,000 + 850,000 − 140,000 = 830,000円となり、これが売上原価です。繰越商品の140,000円は貸借対照表に商品として計上されます。
- 2. 貸倒引当金の設定
- (借)貸倒引当金繰入 11,000 /(貸)貸倒引当金 11,000。設定額は800,000 × 2% = 16,000円ですが、すでに5,000円あるので差額の11,000円だけを繰り入れます。16,000円と答えたなら、差額補充法の考え方を確認し直してください。
- 3. 減価償却(期首から所有)
- (借)減価償却費 100,000 /(貸)建物減価償却累計額 100,000。3,000,000 ÷ 30年 = 100,000円。期首から1年間使っているので月割りは不要です。間接法なので建物勘定は減らしません。
- 4. 減価償却(期中取得)
- (借)減価償却費 20,000 /(貸)備品減価償却累計額 20,000。1年分は480,000 ÷ 8年 = 60,000円ですが、使用したのは12月から3月までの4か月なので、60,000 × 4/12 = 20,000円。取得日が書かれていたら月割りの合図です。
- 5. 前払費用
- (借)前払保険料 10,000 /(貸)保険料 10,000。9月1日から翌年8月31日までの1年分のうち、翌期に属するのは4月から8月までの5か月。24,000 × 5/12 = 10,000円を費用から抜きます。当期分の7か月で計算して14,000円としたなら、数える月数を取り違えています。
解答と解説(6〜10)
- 6. 未払費用(借入金の利息)
- (借)支払利息 9,000 /(貸)未払利息 9,000。900,000 × 2% × 6/12 = 9,000円。10月から3月までの6か月分です。借入金900,000円そのものは動かしません。
- 7. 前受収益
- (借)受取家賃 120,000 /(貸)前受家賃 120,000。2月1日から7月31日までの6か月分のうち、翌期に属するのは4月から7月までの4か月。180,000 × 4/6 = 120,000円を収益から減らします。前受は負債なので貸方に立つ点に注意してください。
- 8. 現金過不足の整理
- (借)雑損 3,000 /(貸)現金過不足 3,000。借方残高ということは帳簿より実際有高が少ない状態なので、原因不明の分は雑損(費用)として処理します。貸方残高だった場合は雑益(収益)になります。
- 9. 消費税の確定
- (借)仮受消費税 240,000 /(貸)仮払消費税 160,000、未払消費税 80,000。3行になる仕訳ですが、借方合計240,000 = 貸方合計240,000で一致します。仮払・仮受の両勘定が消えて、差額が未払消費税として残る形です。
- 10. 法人税等の確定
- (借)法人税等 210,000 /(貸)仮払法人税等 90,000、未払法人税等 120,000。中間納付分を取り崩し、残りが未払いになります。仮払法人税等を無視して210,000円全額を未払法人税等にするのが典型的な誤答です。
採点の目安と復習のしかた
10問中8問以上正解なら、決算整理仕訳の土台はできています。第3問の総合問題形式の練習に進んでください。5〜7問なら、間違えた論点の計算式だけを取り出して、金額を変えて3回ずつ解き直すのが効率的です。4問以下の場合は、仕訳そのものより5要素の分類が固まっていない可能性があるので、いったん簿記3級の仕訳の基本に戻ることをおすすめします。
なお、間違えた問題は必ず翌日にもう一度解いてください。決算整理仕訳は理解した瞬間には解けても、1週間空けると計算の型を忘れます。学猿の仕訳ドリルは、間違えた問題を忘れかけたタイミングで自動的に再出題する仕組みになっているので、この復習を自分で管理する必要がありません。
まとめ — 決算整理仕訳は「ズレを見つけて、差額を書く」だけ
簿記3級の決算整理仕訳は、論点の数こそ多いものの、やっていることは一貫しています。期中の記録と決算日の実態のズレを見つけ、あるべき金額を計算し、帳簿残高との差額を仕訳にする。この3動作の繰り返しです。本記事の要点をもう一度整理します。
- 決算整理仕訳は「当期の成績と決算日の財産」を正しくするための調整であり、現金は動かない
- 解き方は4ステップ — 論点を見分ける、あるべき金額を計算する、差額を仕訳にする、貸借一致を確かめる
- 3級で出る決算整理は8種類。売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定の4つがほぼ毎回出る
- 売上原価は「期首を足して期末を引く」、貸倒引当金は「設定額から前残高を引く」、減価償却の期中取得は月割り、経過勘定は「翌期に属する月数」を数える
- 決算整理が終わったら損益振替で当期純利益を繰越利益剰余金へ送り、翌期首には再振替仕訳で戻す
- 難しさの正体は5つに分解できる。計算過程を必ず問題用紙に書き残すだけで、失点の大半は防げる
決算整理仕訳は、第3問35点をまるごと支えるうえに第1問にも混ざる、簿記3級で最も投資効率の高い分野です。ここを固めれば合格ラインの70点が現実的な射程に入ります。決算手続き全体の流れは簿記3級の決算、表への落とし込みは精算表の解き方で続けて確認してください。
あとは反復あるのみです。学猿の仕訳ドリルなら、勘定科目を選んで金額を入力するネット試験と同じ形式で、決算整理仕訳を1問ずつ練習できます。間違えた問題は忘れかけたころに自動で再出題されるので、通勤や休憩の数分を積み上げるだけで、決算整理仕訳が確実に得点源に変わっていきます。

