未払金とは — 商品以外の後払いを表す負債の勘定科目
未払金とは、本業の商品仕入以外のものを買って、代金をまだ払っていないときに使う負債の勘定科目です。パソコンを月末払いで買った、電気代の請求書が届いたがまだ引き落とされていない、外注先への報酬が翌月払いになっている — こうした「買ったのに、まだ払っていない」状態を帳簿に残すのが未払金の役割です。この記事では、未払金の仕訳を発生時と支払時の2回に分けて押さえたうえで、経費・固定資産・カード払いの仕訳例、買掛金や未払費用との違い、決算整理と年度またぎ、消込や相殺、長期未払金まで順に説明します。
読み方と意味 — 「未払い金」と書かれることもある
未払金の読み方は「みはらいきん」です。検索では未払い金と送り仮名つきで書かれることもありますが、勘定科目としての表記は送り仮名なしの未払金で統一されています。会計ソフトの科目一覧や決算書でも、この表記で並んでいます。
意味は文字どおり「まだ払っていないお金」ですが、簿記で未払金というときは範囲が決まっています。すでに物やサービスを受け取り終えていて、代金の支払いだけが残っている状態です。まだ何も受け取っていない段階で契約しただけなら、支払う義務は確定していないので未払金は立てません。逆に、受け取り終えているのに帳簿に何も書かなければ、その期の費用と負債がまるごと抜け落ちます。
簿記の5要素では「負債」— だから貸方に立つ
簿記ではすべての勘定科目を資産・負債・純資産・収益・費用の5要素に分けます。未払金は負債です。負債は「将来お金を支払う義務」を表すグループで、買掛金・借入金・預り金・未払費用などが同じ仲間として並びます。5要素の分け方そのものがあいまいなら、簿記とはで全体像を確認してから戻ってくると理解が早くなります。
負債は増えたら貸方(右)、減ったら借方(左)に書きます。買った時点では支払義務が増えるので貸方、払った時点では義務が消えるので借方。未払金の仕訳が左右どちらになるかは、この一点だけで決まります。貸借対照表では負債の部、それも1年以内に払うものは流動負債の区分に並びます。
どんな場面で使うのか — 経費・固定資産・外注費
実際の経理仕訳で未払金が登場するのは、次のような場面です。事業の運営に必要なものを買ったけれど、支払いが翌月以降になるケースだと考えてください。
- 電気代・通信費・広告費など、請求書が届いてから翌月に引き落とされる経費
- パソコン・車両・機械など、後払いやローンで買った固定資産
- 外注先やフリーランスへの報酬で、支払いが翌月払いになっているもの
- クレジットカードで払った経費のうち、まだ口座から落ちていない分
共通しているのは、いずれも本業で売るための商品の仕入ではないという点です。営業活動そのもの、つまり商品や原材料の仕入から生じた後払いには買掛金を使い、それ以外の後払いに未払金を使う — この線引きが未払金という科目の存在理由です。詳しい判定の仕方は第4章で表と図にまとめます。
未払金の仕訳は「発生時」と「支払時」の2回で完結する
未払金の仕訳はどう書くのか、という疑問への答えは単純です。1つの取引につき仕訳を2回書く — 買った時点で未払金を立て、払った時点で未払金を消す。この往復さえ体に入れてしまえば、あとは相手勘定が変わるだけで型は変わりません。
発生時の仕訳 — 未払金を貸方に計上する
まず購入や役務の提供を受けた時点で切る仕訳、いわゆる発生時仕訳です。備品120,000円を購入し、代金は翌月払いにしたとします。
このとき書くのは「(借方)備品 120,000 /(貸方)未払金 120,000」。借方には手に入れたもの(資産や費用)、貸方には支払う義務である未払金を置きます。お金はまだ1円も動いていませんが、備品を受け取った事実と払う義務が生まれた事実の2つを同時に記録するのが複式簿記の考え方です。この、取引が起きた時点で記録する原則を発生主義といいます。
計上のタイミングは、原則として物やサービスを受け取った日です。請求書が届いた日でも、支払った日でもありません。実務では検収日や納品日を基準に社内ルールを決めておくと、月をまたぐ取引でぶれなくなります。
支払時の仕訳 — 未払金を借方で消す
翌月になって代金を支払ったときが2回目の仕訳です。普通預金から振込で支払ったなら「(借方)未払金 120,000 /(貸方)普通預金 120,000」となります。借方に未払金を書くことで負債が減り、残高がゼロになります。
ここで費用や資産をもう一度書いてはいけません。支払時に「備品」を再び借方に書くと、備品も費用も二重計上になります。支払いの仕訳で動くのは「未払金」と「お金の出口の科目」の2つだけ、と覚えてください。お金の出口は支払方法によって変わります。
- 銀行口座から振込・引き落としで払った → 普通預金(または当座預金)
- 手元の現金で払った → 現金
- 小切手を振り出した → 当座預金
逆仕訳・反対仕訳という言い方と、振替の意味
支払時の仕訳は、発生時の未払金を左右ひっくり返して書き消す形になっています。このように元の仕訳の借方と貸方を入れ替えた仕訳を逆仕訳、または反対仕訳と呼びます。未払金を消すときの仕訳は、発生時の貸方未払金に対する反対側の記入だと考えると迷いません。
なお、逆仕訳という言葉は間違えた仕訳を取り消すときにも使われます。金額や科目を誤って計上してしまった場合は、同じ仕訳を借方と貸方だけ入れ替えて書き、そのうえで正しい仕訳を立て直します。この取り消しの手順は第11章の訂正仕訳で扱います。
もう一つよく出てくるのが振替という言い方です。振替とは、ある勘定の金額を別の勘定へ移す仕訳のこと。たとえば未払金として計上していたものが実は長期の債務だったと分かったとき、「(借方)未払金 /(貸方)長期未払金」と書いて残高を移します。未払金の実務では、この科目間の振替と、支払いによる消込の2種類の減らし方があると整理しておくと混乱しません。
未払金の仕訳例 — 経費・固定資産・クレジットカード
ここからは具体的な仕訳例を見ていきます。相手勘定が変わるだけで型は同じですが、実際に手を動かす前に代表的なパターンを一覧で押さえておくと、目の前の取引がどの型に当てはまるか判断しやすくなります。
経費を後払いにしたときの仕訳例
日常の経理でいちばん多いのが、請求書が届いた経費を未払金で計上するパターンです。金額は例として置いたものです。
| 取引の内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 電気代の請求書を受け取った(翌月引き落とし) | 水道光熱費 30,000 | 未払金 30,000 |
| 携帯電話・回線の利用料が確定した | 通信費 12,000 | 未払金 12,000 |
| 出張分の旅費を翌月払いにした | 旅費交通費 45,000 | 未払金 45,000 |
| 銀行の振込手数料が翌月引き落としになった | 支払手数料 880 | 未払金 880 |
| エアコンの修理代を翌月払いにした | 修繕費 60,000 | 未払金 60,000 |
| 収入印紙を掛けで購入した(期末未使用) | 貯蔵品 10,000 | 未払金 10,000 |
| 固定資産税の納税通知書が届いた | 租税公課 200,000 | 未払金 200,000 |
電気代のような水道光熱費は、検針票や請求書で金額が確定した時点で計上します。手数料も同じで、金額が決まっていれば未払金です。収入印紙や切手の未使用分を貯蔵品に振り替える処理は収入印紙の勘定科目で詳しく扱っています。
固定資産税は少し特殊で、賦課決定(納税通知書の到達)によって年税額の全額が確定します。そのため通知書が届いた時点で租税公課の全額と未払金を計上し、4期に分けて納付するたびに未払金を取り崩していくのが原則的な処理です。
なお家賃(地代家賃)や利息のように、時の経過につれて発生する費用の未払いは、本来は未払金ではなく未払費用で処理します。ただし実務では、請求書で1か月分の金額が確定しているものを未払金にまとめている会社もあります。どちらにするかは社内で統一し、期をまたいでも同じ扱いを続けることが大切です。線引きの考え方は次章で整理します。
固定資産・設備を後払いで買ったときの仕訳例
備品・建物・車両などの固定資産を後払いで取得したときも未払金を使います。金額が大きい分、間違えたときの影響も大きい領域です。
備品(パソコン)を200,000円で購入し代金は翌月払いなら「(借方)備品 200,000 /(貸方)未払金 200,000」。工場設備を1,500,000円で導入し、据付費50,000円も含めて翌月払いにしたなら「(借方)機械装置 1,550,000 /(貸方)未払金 1,550,000」です。据付費・運送費・仲介手数料などの付随費用は費用にせず、取得原価に含めるのがルールで、その分だけ未払金も大きくなります。
車両購入では頭金と残債に分かれることがよくあります。車両を2,400,000円で購入し、頭金400,000円を現金で払い、残りを翌月以降の分割払いにした場合は「(借方)車両運搬具 2,400,000 /(貸方)現金 400,000・未払金 2,000,000」。支払いが1年を超えて続くなら、貸方は長期未払金になります(第9章で扱います)。
建物を建設中で、まだ完成していない段階の支出は建設仮勘定という別の科目でいったん受けます(第10章)。また、取得した固定資産は代金の支払いが終わっていなくても、引き渡しを受けて事業に使い始めた時点から減価償却を始めます。未払金の返済スケジュールと減価償却の計算はまったくの別物だと切り分けてください。
クレジットカード払い・カード払いの仕訳例
クレジットカードで経費を払うと、カードを切った日と口座から引き落とされる日がずれます。このズレを埋めるのが未払金です。カード払いの経費が5,000円で、利用日に「(借方)消耗品費 5,000 /(貸方)未払金 5,000」、翌月の引き落とし日に「(借方)未払金 5,000 /(貸方)普通預金 5,000」と書きます。
カードの明細は複数の取引がまとまって1件の引き落としになるため、カード会社ごとに補助科目を分けておくと残高が合わせやすくなります。会社によっては未払金ではなく未決済金という独自科目を立てることもありますが、意味するところは同じです。年会費やリボ払い手数料は経費の科目(支払手数料など)で別に計上します。
ひとつ注意したいのが、本業の商品仕入をカードで決済した場合です。厳密にはカード会社に対する債務なので未払金が原則ですが、仕入先ごとの管理を優先して買掛金にまとめる実務もあります。どちらでも構いませんが、途中で扱いを変えないことが重要です。
買掛金・未払費用・未収入金との違い
未払金でつまずく原因のほとんどは、似た科目との使い分けです。ここを2つの質問で機械的にさばけるようにしておくと、仕訳のスピードが一気に上がります。
買掛金との違い — 決め手は「本業の仕入かどうか」
未払金と買掛金の違いを決めるのは、たった一つの基準です。その支払いが売上を生むための商品・原材料の仕入なら買掛金、それ以外はすべて未払金。買掛(かいかけ)と口語で略されるこの科目は、営業取引から生じた債務だけを集める場所だと考えてください。
たとえば文房具店がボールペンを問屋から仕入れれば、それは売るための商品なので買掛金です。同じ文房具店が事務所用のコピー機を後払いで買ったなら、売るためのものではないので未払金になります。パソコン・車・機械などの固定資産、外注費、広告費、水道光熱費は、金額の大小に関係なくすべて未払金です。買掛金そのものの詳しい扱いは買掛金で個別に解説しています。
未払費用との違い — 時の経過で発生するかどうか
もう一つ紛らわしいのが未払費用です。こちらは家賃・保険料・利息・給料のように、契約にもとづいて時間の経過とともに少しずつ発生する費用の未払い分に使います。判断の軸は「物やサービスの提供がすでに終わっているか」です。
- 未払金 — 役務や物の提供が完了していて、支払いだけが残っている。例:備品の購入代金、修理代、外注報酬
- 未払費用 — 契約が継続中で、経過した期間の分だけ費用が発生している。例:当月分の家賃、決算日までの利息、締め日後の給料
裏返しの関係にある前払費用と前払金(前渡金)も同じ構図です。保険料を1年分先に払ったなら期間対応の前払費用、商品の手付金を先に払ったなら前渡金。前払か未払かで左右が入れ替わるだけで、継続的な役務か単発の取引かという分け方は共通しています。
未収入金・売掛金との違い — 立場が逆になる科目
ここまでは自分が払う側の話でした。逆に自分が受け取る側になると、科目は資産に変わります。本業の商品を掛けで売った代金は売掛金、それ以外(固定資産の売却代金など)を後で受け取る権利は未収入金です。未収金と略して書かれることもありますが、指しているものは同じです。
つまり、同じ取引を買い手の帳簿では未払金、売り手の帳簿では未収入金として記録している、という対応関係になります。売上から生じた債権については売掛金の記事が詳しいので、あわせて確認してください。
まぎらわしい科目の早見表
未払金の周辺には、お金の動きと物の動きがずれる科目がいくつも並びます。試験でも実務でも取り違えが起きやすいので、意味の違いを一覧で確認しておきます。
| 科目 | どんなときに使うか | 要素 |
|---|---|---|
| 未払金 | 商品以外を買い、代金の支払いだけが残っている | 負債 |
| 未払費用 | 継続的な契約で、経過した期間分の費用が未払い | 負債 |
| 前渡金(前払金) | 商品やサービスを受け取る前に代金を払った | 資産 |
| 仮払金 | 金額や内容が未確定のまま概算で払い出した | 資産 |
| 立替金 | 本来は相手が負担すべき費用を一時的に払った | 資産 |
| 預り金 | 源泉所得税など、他人のお金を一時的に預かった | 負債 |
仮払金は、出張前に概算で渡した旅費のように金額が確定していないものに使う点が未払金と対照的です。精算して金額が確定した時点で、旅費交通費などの正しい科目に振り替えます。立替金と預り金は、そもそも自社の費用でも収益でもないお金を通過させているだけ、という点で未払金とは性質が異なります。
決算整理と年度またぎ — 未払金は再振替仕訳をしない
未払金がいちばん重要になるのが決算です。決算時に未払いを拾い漏らすと、その期の費用が過少になり利益が過大に出てしまいます。年度またぎの処理は簿記3級・2級の第3問でも毎回のように問われる論点です。
決算整理で未払金を計上する
決算整理とは、期中の記帳では拾いきれなかった事実を決算日の状態に合わせて修正する一連の仕訳です。未払金についてやることは一つ、決算日までに物やサービスを受け取り終えているのに、まだ帳簿に載っていない支払義務を拾い上げることです。
3月決算の会社が、3月25日に事務所の修繕を受け、請求書は4月10日着・支払いは4月末という取引があったとします。修繕という役務の提供が終わったのは3月なので、決算整理で「(借方)修繕費 80,000 /(貸方)未払金 80,000」と計上します。請求書が届いていないことは、計上しない理由になりません。金額が確定していなければ、見積りにもとづいて計上します。
決算で未払計上する費用の代表例は、修繕費・外注費・広告宣伝費・支払手数料・水道光熱費などです。逆に、翌期に提供を受けるものの代金を先に払っている場合は前払費用として当期の費用から取り除きます。決算整理全体の流れは簿記3級の決算で手順ごとに解説しています。
年度またぎ・年度末の処理 — 前期に計上した未払金を当期に払う
年度またぎの取引は、決算日をはさんで2つの期に仕訳が分かれます。前年度(前期)の決算で計上した未払金は、貸借対照表の負債として翌期に引き継がれ、実際に支払った日に消えます。
先ほどの修繕費の例なら、当期(3月期)の仕訳は「修繕費 80,000 / 未払金 80,000」、翌期4月末の支払いの仕訳は「未払金 80,000 / 普通預金 80,000」です。翌期の支払いの仕訳に修繕費は出てきません。費用はすでに前期に計上済みだからです。ここで修繕費をもう一度書いてしまうと、同じ費用を2期にわたって二重計上することになります。決算後に前期分の請求書が届いたときの処理も同じで、金額が計上済みの見積りとずれた分だけを差額調整します。
未払金は再振替仕訳をしない — 期首の扱いと繰越
ここが最も間違えやすいところです。決算整理で計上した未払費用・前払費用・未収収益・前受収益の4つは経過勘定と呼ばれ、翌期首に再振替仕訳をして元の費用・収益の科目に戻します。決算日という人為的な区切りで期間按分しただけなので、期首にいったん白紙に戻す、という考え方です。
これに対して未払金は経過勘定ではないため、再振替仕訳をしません。未払金は「この相手にこの金額を払う」という具体的な債務そのものであり、期間按分の産物ではないからです。期首に戻す理由がなく、残高は貸借対照表の負債としてそのまま次期へ繰り越されます。「未払金は再振替仕訳しない」と検索されるのは、この経過勘定との違いが直感に反するためです。
帳簿の見た目でいうと、決算で総勘定元帳の未払金勘定は借方に次期繰越と朱書きして締め切り、翌期の開始記入として貸方に前期繰越と書きます。この開始の記入は仕訳を伴わない帳簿上の手続きです。翌期に入ってから最初に未払金が動くのは、実際に支払ったときか、金額が変わったときだけになります。帳簿の締切と繰越の手順は総勘定元帳の記事もあわせて確認してください。
未払金と消費税の処理 — 仮払消費税と未払消費税
未払金を計上する取引にも当然、消費税がかかります。ここで押さえておきたいのは、消費税の処理は支払った日ではなく、取引が発生した日を基準に行うという点です。
税抜経理では仮払消費税を同時に立てる
税抜経理を採用している場合、未払金を立てる仕訳の中で仮払消費税(仮払い消費税と表記されることもあります)を分けて記録します。消耗品を税込55,000円で購入し、代金は翌月払いとしたときの仕訳は次のとおりです。
「(借方)消耗品費 50,000・仮払消費税 5,000 /(貸方)未払金 55,000」。貸方の未払金は実際に支払う金額なので税込の55,000円、借方は本体価格と消費税に分けて記録します。翌月の支払時は「(借方)未払金 55,000 /(貸方)普通預金 55,000」で、ここで消費税の科目は動きません。
税込経理の場合はもっと単純で、「(借方)消耗品費 55,000 /(貸方)未払金 55,000」と税込金額のまま計上し、消費税は決算でまとめて処理します。どちらの方式を採るかは会社ごとに選択し、期の途中で変えることはできません。
仕入税額控除のタイミングとインボイス
仮払消費税として計上した分は、原則として取引が発生した課税期間の仕入税額控除の対象になります。代金の支払いが翌期にずれ込んでも、控除するのは購入した期です。未払金として計上した取引もこの扱いで、支払いを待つ必要はありません。
ただし控除を受けるには、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要です。相手が免税事業者などで適格請求書の交付を受けられない場合は、経過措置による一部控除にとどまるため、仕訳でも控除できない分を本体価格に上乗せするなどの調整が要ります。自社の課税方式や経過措置の適用については、税務署や顧問税理士に最新の取扱いを確認してください。
未払消費税は未払金とは別の科目
名前が似ていて混同されがちなのが未払消費税(未払消費税等)です。これは決算で年間の消費税を計算した結果、国に納めることになった税額を表す科目で、取引先への未払いを表す未払金とは相手も性質もまったく違います。
決算では仮受消費税と仮払消費税を相殺し、差額を未払消費税に振り替えます。「(借方)仮受消費税 800,000 /(貸方)仮払消費税 500,000・未払消費税 300,000」といった形です。貸借対照表では未払金とは別行で表示されるのが通常なので、会計ソフト上でも科目を分けて管理してください。
給与・役員報酬・社会保険料まわりの未払金
人件費まわりは、未払金・未払費用・預り金の3つが入り混じるため取り違えが起きやすい領域です。ここは科目ごとの役割をはっきり分けて覚えるのが近道になります。
給与・給料の未払いに使うのは未払費用
結論から書くと、決算日時点でまだ支払っていない給与(給料)は、未払金ではなく未払費用の系統で処理します。労働の提供という継続的な役務に対する対価であり、時の経過に応じて発生する費用だからです。科目名は未払費用のほか、未払給料・未払賃金が指定されることもあります。
たとえば20日締め・月末払いの会社が3月決算を迎えたなら、3月21日から3月31日までの11日分が当期の費用です。日給10,000円で従業員3人なら「(借方)給料 330,000 /(貸方)未払費用 330,000」と決算整理で計上します。この未払費用は経過勘定なので、翌期首に再振替仕訳をして戻します — 未払金との決定的な違いがここです。給与計算まわりの仕訳全体は給料の仕訳で詳しく扱っています。
役員報酬も同じ考え方で、未払分は未払役員報酬や未払費用で処理します。ただし法人税では、役員報酬を損金にするために定期同額給与などの要件を満たす必要があり、未払計上が続くと支給時期の事実認定で問題になることもあります。長期にわたる未払いは税理士に相談してください。
源泉所得税・住民税は預り金 — 未払金ではない
給与から天引きした源泉所得税(源泉税)や住民税は、会社の費用ではなく従業員から預かって国や自治体に納めるだけのお金です。したがって使う科目は預り金であって未払金ではありません。源泉徴収した時点で「預り金」を貸方に立て、納付した時点で借方に書いて消します。
納付期限は、源泉所得税・特別徴収の住民税とも原則として徴収した月の翌月10日までです(源泉所得税は納期の特例を受けている場合を除く)。決算日をまたいで残る預り金は、貸借対照表の流動負債に未払金とは別行で表示します。
なお、外注先が個人の場合の報酬にも源泉徴収が必要なケースがあります。デザイン料100,000円で源泉徴収税額が10,210円なら「(借方)外注費 100,000 /(貸方)未払金 89,790・預り金 10,210」となり、実際に振り込む金額だけが未払金として残ります。
社会保険料は法定福利費と預り金に分かれる
社会保険(健康保険・厚生年金)の保険料は、会社と従業員が原則折半で負担します。従業員負担分は給与から天引きするので預り金、会社負担分は費用なので法定福利費を使います。保険料は当月分を翌月末に納付するため、決算日には1か月分が未納の状態になっているのが通常です。
この会社負担分の未納額は、継続的に発生するものとして未払費用で処理するのが原則ですが、金額が確定した保険料通知にもとづくものとして未払金で計上している会社もあります。いずれの科目を使うにせよ、毎期同じ扱いを続けることが大切です。健康診断や慶弔見舞金のような任意の支出は法定福利費ではなく福利厚生費になる点も、あわせて押さえておいてください。
退職金の未払いは未払金で処理する
従業員が退職し、支給額が確定したのにまだ支払っていない退職金は、単発で確定した債務なので未払金を使います。「(借方)退職金 1,500,000 /(貸方)未払金 1,500,000」と計上し、支払時に消込みます。退職所得の源泉徴収が必要な場合は、その分を預り金として分けます。
これに対して、将来の退職に備えて毎期積み立てていく金額は退職給付引当金という別の科目で処理します。まだ誰にいくら払うかが確定していない見積りだからです。確定していれば未払金、見積りなら引当金という切り分けで覚えると迷いません。
外注費と請求書 — 計上タイミングで迷わないために
外注費は未払金が使われる典型的な場面でありながら、請求書の到着が遅れがちなために計上漏れが起きやすい科目でもあります。ここでは仕訳の型と、請求書が手元にないときの対処をまとめます。
外注費の未払金計上と支払いまでの流れ
外注費とは、自社の業務の一部を社外に委託したときの対価です。制作会社への委託費、システム開発の委託料、清掃業務の委託費などが該当します。本業で売る商品の仕入ではないので、後払いなら買掛金ではなく未払金を使います。
作業が完了して検収した時点で「(借方)外注費 300,000 /(貸方)未払金 300,000」、翌月の支払日に「(借方)未払金 300,000 /(貸方)普通預金 300,000」。相手が個人の場合は源泉徴収が絡むので、前章の例のように預り金を分けて計上します。
製造業では、外部の工場に加工を委託した費用を外注加工費として製造原価に含めることがあります。この場合も後払いなら貸方は未払金です。原価に入れるか販売費及び一般管理費に入れるかで利益の内訳が変わるため、社内で基準を決めておいてください。
個人事業主の外注工賃
個人事業主の場合、青色申告決算書の経費欄には外注工賃という科目名が用意されています。中身は法人でいう外注費と同じで、職人や個人事業者に仕事を頼んだときの支払いを指します。年末時点で未払いの外注工賃があれば「(借方)外注工賃 /(貸方)未払金」と計上することで、その年の必要経費に算入できます。
ここで単なる人手の提供を外注工賃で処理していると、税務調査で給与と認定されることがあります。指揮命令を受けて働いているのか、独立した事業者として成果物を納めているのか、契約と実態の両面を整えておく必要があります。
請求書が届いていない分の扱い
未払金の計上基準は請求書の到着日ではなく、物やサービスを受け取った日です。決算日までに納品や検収が終わっていれば、請求書が手元になくても計上します。
実務では、決算月の作業実績を発注担当者に確認して未達の請求書を洗い出す、いわゆる締め後チェックの工程を入れます。金額が確定していなければ、契約書や見積書にもとづく合理的な見積額で計上し、後日届いた請求書との差額を翌期に調整すれば構いません。逆に請求書が届いていても、納品が翌期なら当期の費用にはできません。基準はあくまで役務の提供が完了した日だと繰り返し確認してください。
長期未払金 — 1年基準・ローン・割賦・リースの仕訳
支払いが長期にわたる場合、未払金はそのままにしておけません。貸借対照表では「いつ払うのか」で表示区分が変わるためです。ここでは長期未払金の考え方と、ローンや割賦、リースの仕訳例を見ていきます。
1年基準で流動負債と固定負債に分ける
債務を流動負債と固定負債のどちらに載せるかは、1年基準(ワンイヤールール)で決まります。決算日の翌日から1年以内に支払期限が来るなら未払金(流動負債)、1年を超えるなら長期未払金(固定負債)です。
長期の分割払いを組んだときの決算での扱いは、この基準を毎期あてはめ直すのがポイントです。たとえば残債が3,000,000円、うち翌期中に支払う分が1,000,000円なら、決算整理で「(借方)長期未払金 1,000,000 /(貸方)未払金 1,000,000」と振り替え、流動負債に1,000,000円、固定負債に2,000,000円を表示します。この振替を忘れると、決算書を見た人が短期の資金繰り負担を読み違えます。
ローン・割賦購入の仕訳例と利息の扱い
車両や機械をローン(割賦)で買うと、支払総額には利息相当額が含まれています。この利息を本体価格と分けて記録するのが原則です。
車両を本体2,400,000円で購入し、割賦金額の総額が2,520,000円(差額120,000円が利息相当額)、24回払いという例で考えます。購入時の仕訳は「(借方)車両運搬具 2,400,000・前払利息 120,000 /(貸方)長期未払金 2,520,000」。毎月の返済時には「(借方)長期未払金 105,000 /(貸方)普通預金 105,000」と元本を減らし、あわせて「(借方)支払利息 5,000 /(貸方)前払利息 5,000」と経過した分の利息を費用に振り替えます。利息を購入時に区分せず、支払うたびに支払利息として計上する簡便な方法もあります。
残債をまとめて返済する場合は、残っている長期未払金と未払金の全額を借方に書いて消します。検索では1括返済と算用数字で書かれることもありますが、処理は同じです。繰上返済で将来の利息が免除されたときは、前払利息の残高のうち不要になった分を取り崩し、支払額との差額を精算します。
リース取引と未払金 — オペレーティングリースの扱い
リースはリース料の支払義務が長期にわたるため、未払金・長期未払金と混同されやすい論点です。従来の会計基準では、ファイナンスリースは資産を買ったのと同じように扱ってリース資産とリース債務を計上し、オペレーティングリース(オペリースと略されます)は通常の賃貸借として支払リース料を費用処理する、という区分でした。
この区分は大きく変わります。2024年に公表された新しいリース会計基準では、借手側はファイナンスとオペレーティングの区分を廃止し、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上することになりました。適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からが原則で、2025年4月1日以後に開始する事業年度からの早期適用も認められています。適用対象や例外規定は会社の規模や契約内容で変わるため、実際の処理は公表されている基準本文と顧問税理士の判断で確認してください。
なお、航空機リースへの出資という形で耳にするものは、リース会社が組成した匿名組合に出資して損益の分配を受ける投資商品であり、自社が資産を借りるリース取引とは仕訳がまったく異なります。出資金という資産で計上し、分配された損益を各期に取り込む処理になるため、未払金の論点とは切り離して考えてください。
日商簿記検定でのリース取引は、会計基準の改正を受けて出題内容と出題級の見直しが進められています。学習にあたっては、受験する年度の出題区分表を商工会議所の公式サイトで必ず確認してください。
工事の未払金 — 建設業で使う勘定科目
建設業は、工事の着工から完成引渡しまでに長い期間がかかるため、専用の勘定科目が用意されています。未払金まわりも一般の商業簿記とは呼び名が変わるので、対応関係を押さえておきましょう。
工事未払金と未成工事支出金
建設業会計では、一般の科目に次のような専用科目が対応します。名前が違うだけで、貸借対照表や損益計算書での位置づけは同じです。
未成工事支出金とは、まだ完成していない工事にかかった材料費・労務費・外注費などを集めておく資産科目です。材料を掛けで仕入れ、外注費が翌月払いなら「(借方)未成工事支出金 5,000,000 /(貸方)工事未払金 5,000,000」と計上します。工事に直接ひもづかない事務用品の後払いなど、通常の未払金を使う取引も並行して発生します。
工事が完成して引き渡した時点で、集計してきた未成工事支出金を完成工事原価へ振り替え、同時に完成工事高を計上します。完成工事原価に振り替えるまで、支出は費用にならず資産のまま残るのが建設業会計の特徴です。
建設仮勘定と未払金の関係
自社で使う建物や設備を建設している途中の支出は、建設仮勘定という資産科目でいったん受けます。こちらは工事を発注する側、つまり施主の立場での処理です。
建設中に工事代金の一部2,000,000円を請求され、支払いが翌月なら「(借方)建設仮勘定 2,000,000 /(貸方)未払金 2,000,000」。建物が完成して引き渡しを受けた時点で「(借方)建物 /(貸方)建設仮勘定」と振り替え、そこから減価償却を始めます。建設仮勘定のままでは減価償却できない点に注意してください。
ここでも支払義務の計上と資産の計上は別々に進みます。代金をまだ払っていなくても工事の出来高が確定していれば建設仮勘定と未払金を立てる、というのが原則的な考え方です。
未払金の消込・相殺・訂正と、会計ソフトでの管理
未払金は立てて終わりではありません。残高を正しく消していく作業まで含めて未払金の処理です。ここでは日々の消込から、相殺・訂正・マイナス残高の対処までを扱います。
消込の手順 — 未払金を消す処理
消込とは、計上済みの未払金と実際の支払いを突き合わせて残高を消す作業です。手順は次の3つに分かれます。
- 支払予定表と未払金の残高明細を取引先ごとに突き合わせる
- 支払った分について「(借方)未払金 /(貸方)普通預金」の仕訳を入れる
- 消し込めずに残った金額の理由を1件ずつ確認する
未払金を消す仕訳そのものは単純ですが、大事なのは3つ目です。残ってしまう原因は、支払漏れ・二重計上・金額違い・相手先の設定ミスのいずれかに集約されます。放置すると翌期以降も残り続け、決算のたびに調査が必要になるので、その月のうちに理由まで確定させてください。未払金の精算仕訳という言い方をすることもありますが、指しているのは支払時のこの消込の仕訳です。
相殺の仕訳 — 同じ相手に未収入金があるとき
同じ取引先に対して、払う義務(未払金)と受け取る権利(未収入金や売掛金)の両方がある場合、差額だけをやりとりする相殺という方法がとれます。当社が相手に300,000円の未払金、相手から200,000円の未収金を回収する権利があるなら、相殺の仕訳は「(借方)未払金 200,000 /(貸方)未収入金 200,000」。残りの100,000円だけを振り込み、そこで「(借方)未払金 100,000 /(貸方)普通預金 100,000」と処理します。
注意したいのは、相殺は帳簿上の都合で勝手にできるものではないという点です。相手方への意思表示や、あらかじめ交わした相殺の合意が必要になります。実務では相殺通知書を取り交わし、その控えを証憑として保管します。入金と支払いを別々に行う運用に比べて資金移動は減りますが、証憑を残さないと後で残高の根拠が説明できなくなります。
訂正仕訳と、残高がマイナスになったときの対処
科目や金額を間違えて計上したときは、訂正仕訳で直します。手順は「誤った仕訳の逆仕訳を書いて取り消す」→「正しい仕訳を書く」の2段階。頭の中で一気に差額だけを出そうとせず、必ず2段に分けて書き出すのが事故を防ぐコツです。備品を掛けで買ったのに買掛金で計上していたなら、まず「(借方)買掛金 /(貸方)備品」で取り消し、次に「(借方)備品 /(貸方)未払金」と書き直します。
未払金の残高がマイナス(借方残)になっているときは、必ずどこかにエラーがあります。負債である未払金は、払う義務が残っていない限りゼロより小さくなりようがないからです。代表的な原因は、同じ支払いを二重に消し込んでいる、計上より先に支払処理を入れてしまった、返品の処理が重複している、の3つです。実態が前払いなら前渡金へ振り替え、単純な誤りなら訂正仕訳で戻します。
会計ソフトでの未払金の管理
弥生会計やマネーフォワードクラウド会計といった会計ソフトでは、未払金に取引先ごとの補助科目を設定できます。これを使うと、総勘定元帳とは別に相手先別の残高一覧が出せるので、消込作業が一気に楽になります。
銀行口座やクレジットカードの明細を連携させている場合、引き落としの明細から自動で仕訳が提案されます。ただし提案される仕訳は「未払金/普通預金」ではなく「費用科目/普通預金」になっていることが多く、そのまま登録すると発生時の未払金が残ったまま費用が二重計上されます。連携仕訳は必ず科目を確認してから登録するのが鉄則です。帳簿の残高と支払予定表を月次で突き合わせる習慣をつけておけば、決算前に慌てずに済みます。
返金・値引き・免除 — 未払金が支払い以外で減るケース
未払金が減るのは支払ったときだけではありません。値引きや返金、債務の免除といった事情でも残高は動きます。いずれも仕訳の相手科目が普通預金ではなくなる点が共通しています。
値引き・返品による減額
納品後に不良や数量違いが見つかって値引きを受けた場合、まだ払っていないのであれば未払金を直接減らします。備品120,000円を未払金で計上したあとに10,000円の値引きを受けたなら「(借方)未払金 10,000 /(貸方)備品 10,000」。すでに費用に落としている消耗品なら、貸方は消耗品費になります。値引きは新たな収益ではなく、もともとの取得原価や費用のマイナスとして扱うのが原則です。
返金を受けたとき
すでに支払ったあとに返金を受けた場合は、お金が戻ってくるので処理が変わります。振り込まれた時点で「(借方)普通預金 /(貸方)費用科目」と当初の費用を取り消します。返金が翌期に決まった場合は、金額が確定した時点で未収入金を立て、実際の入金時に消し込みます。返金の原因が当期の費用の過大計上なら費用のマイナス、前期分の修正なら金額の重要性に応じて雑収入で受けることもあります。
払わなくてよくなったとき — 債務免除益と雑収入
取引先から「もう払わなくてよい」と言われ、未払金を払わなくてよくなったケースもあります。この場合、支払義務が消えた分だけ会社は経済的な利益を得ているので、残高を取り崩して収益に振り替えます。仕訳は「(借方)未払金 500,000 /(貸方)債務免除益 500,000」。金額が小さければ雑収入で受けても構いません。
ここで気をつけたいのが税金です。債務の免除を受けた利益は、法人税では益金に算入されます。帳簿上の見た目は現金が動かないまま利益が増えるので、納税資金の準備が必要になることがあります。免除を受けた事実は、相手方からの通知書やメールなど客観的な証憑で残しておいてください。
なお、請求が来ないまま何年も残っている未払金を、時効を理由に勝手に消すことはできません。債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で完成しますが、時効の効果を確定させるには当事者が時効を援用する必要があるためです。長期滞留している未払金の整理は、相手先への確認と税理士への相談をセットで進めるのが安全です。
振込手数料を差し引いて払ったとき
請求額から振込手数料を差し引いて送金する商習慣もあります。仕訳の形は、手数料をどちらが負担する契約かで変わります。未払金50,000円・手数料880円のケースで比べてみましょう。
- 相手先の負担(差引送金) — 49,120円を送金し、手数料880円は自社の口座から引かれる。「(借方)未払金 50,000 /(貸方)普通預金 50,000」となり、口座からの出金合計は50,000円で一致する
- 自社の負担 — 50,000円を満額送金し、手数料880円を別に負担する。「(借方)未払金 50,000・支払手数料 880 /(貸方)普通預金 50,880」
差引送金を認めるかどうかは取引開始時に取り決め、毎回同じ処理を続けてください。取り決めがないまま差し引いて送金すると、相手の帳簿に数百円の未収残高が残り続け、双方の残高が合わなくなります。
個人事業主の未払金 — 事業主貸・開業費との関係
個人事業主にとっても未払金は重要な科目です。とくに青色申告で65万円(または55万円)の特別控除を受けるには複式簿記による記帳が必要で、年末の未払い分を正しく計上できているかが問われます。
年末に未払いの経費は未払金で計上する
所得税の計算でも、経費は支払った日ではなく債務が確定した日の属する年に計上します。12月に使った電気代の請求が翌年1月引き落としでも、12月分として必要経費になります。仕訳は「(借方)水道光熱費 /(貸方)未払金」。この計上を忘れると、その年の所得が実態より大きくなり、納める税金が増えてしまいます。
逆に、翌年分のサービス料を年内に前払いしているものは前払費用として当年の経費から除きます。年末は「未払いの経費を拾う」「前払いの経費を除く」の2方向の確認を必ずセットで行ってください。
事業主貸・事業主借と混同しない
個人事業では、事業のお金と私生活のお金の行き来を事業主貸・事業主借という科目で処理します。事業用口座から生活費を引き出したら事業主貸、私的な財布や個人名義のカードで事業の経費を払ったら事業主借です。
ここで押さえたいのは、相手が外部の取引先かどうかという区別です。取引先に対する支払義務が残っていれば未払金、事業主自身との内部的なやりとりなら事業主貸・事業主借。たとえば事業用のパソコンを個人のクレジットカードで買ったなら「(借方)備品 /(貸方)事業主借」となり、未払金は登場しません。逆に、計上済みの未払金を個人の財布から払ったときは「(借方)未払金 /(貸方)事業主借」と書きます。
開業費を掛けで支払ったとき
開業前に支出した準備費用は、開業費という繰延資産として資産計上できます。名刺やチラシの制作費、開業前の打ち合わせ費用などが該当します。代金が後払いなら「(借方)開業費 /(貸方)未払金」と計上し、支払時に消し込みます。
開業費は任意償却が認められており、好きな年にいくらでも(全額でも)償却できます。利益が出た年にまとめて経費化するといった調整ができるため、開業初年度に慌てて全額を落とす必要はありません。開業費に含められる範囲は判断が分かれることもあるので、迷ったら税務署や税理士に確認してください。
まとめ — 未払金の仕訳で押さえる6つのポイント
ここまで見てきた内容を、実際に仕訳を切るときの判断順に並べ直します。
- 未払金は負債。商品以外を買って支払いだけが残っている状態を表し、増えたら貸方、減ったら借方に書く
- 仕訳は発生時と支払時の2回。支払時に費用や資産をもう一度書くと二重計上になる
- 買掛金との違いは本業の仕入かどうか、未払費用との違いは時の経過で発生するかどうかの一点だけ
- 決算整理では、請求書が届いていなくても役務の提供が終わっている分を拾って計上する
- 未払金は経過勘定ではないので再振替仕訳をしない。残高のまま翌期へ繰り越し、支払時に消す
- 支払期限が1年を超えるなら長期未払金として固定負債に振り替える
未払金でつまずくのは、覚える量が多いからではありません。「本業の仕入か」「時の経過で発生するか」「1年以内に払うか」という3つの質問を、毎回同じ順番で自分に投げかけられるかどうかが分かれ目です。判断の型さえ身につけば、初めて見る取引でも科目は自然に決まります。
そして、この型は読むだけでは定着しません。仕訳は手を動かした回数がそのまま得点になる論点です。簿記3級の仕訳で基本の切り方を確認したら、学猿の仕訳ドリルで実際に解いてみてください。本試験と同じ勘定科目の選択と金額入力の形式で、未払金・買掛金・未払費用の使い分けを1問ずつ判定しながら練習できます。間違えた問題は自動で復習に回るので、迷いやすい科目ほど早く固まります。

