簿記決算とは?会計期間を締めて決算書を作る手続き
簿記決算とは、区切った期間の帳簿をいったん締め切り、その期間のもうけ(利益)と、期末時点の財産の状態を明らかにする一連の手続きのことです。日々の取引を仕訳して帳簿に記録していくだけでは、「1年でいくら儲かったのか」「いま会社に何がいくら残っているのか」は分かりません。ある時点で線を引き、記録を集計し、実態に合わせて調整してはじめて、損益計算書と貸借対照表という2つの決算書ができあがります。この線を引く日が決算日、線から線までの期間が会計期間です。
決算の目的は「利益の確定」と「財産の確定」の2つ
決算がなぜ必要なのかは、決算書の2枚を見れば分かります。損益計算書(P/L)は会計期間の収益から費用を差し引いて当期純利益を計算する書類で、1年間の経営成績を表します。貸借対照表(B/S)は決算日時点の資産・負債・純資産を並べた書類で、ある一時点の財政状態を表します。決算とは、この2枚を作るために帳簿を締める作業だと考えると迷いません。
作った決算書は社内で使って終わりではありません。法人であれば法人税・住民税・事業税の申告の基礎になり、株主や銀行への報告資料にもなります。個人事業主であれば所得税の確定申告に使う青色申告決算書の土台になります。決算は簿記の最終工程であり、同時に税務と報告の出発点でもあるわけです。
決算日と会計期間 — 3月決算・12月決算・個人事業主の場合
会計期間は原則1年で、その最終日が決算日(期末)です。法人は決算日を自由に決められるため、3月31日を決算日とする3月決算のほか、9月決算、12月決算などさまざまです。日本の法人では3月決算が最も多く、税制改正や年度の区切りと合いやすいことが理由とされます。一方、個人事業主の会計期間は法律で1月1日から12月31日と決まっており、選ぶことはできません。
会計期間の最初の日を期首、途中を期中、最終日を期末(決算日)と呼びます。簿記の問題文にある「当期」「前期」「翌期」はすべてこの会計期間を単位にした言い方です。決算の手続きは決算日をもって始まりますが、実際の作業は決算日を過ぎてから行います。決算日は「その日までの取引を集計する」という締め切り線であって、作業日ではありません。
決算・決算書・決算整理は別のことば
学習の入り口で混乱しやすいのが用語の重なりです。整理すると、決算は手続き全体の名前、決算整理はその中の1工程、決算書は手続きの成果物です。簿記の教材で「決算」と出てきたときは、どのレイヤーの話をしているのかを意識すると読み違えが減ります。
| ことば | 意味 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 決算 | 会計期間を締めて決算書を作る手続きの全体 | 工程全体 |
| 決算整理 | 帳簿の金額を実態に合わせて修正する作業 | 決算の中の1工程 |
| 決算仕訳 | 決算整理と帳簿の締切のために切る仕訳 | 工程を実行する手段 |
| 決算書(財務諸表) | 損益計算書・貸借対照表など | 決算の成果物 |
なお決算は簿記3級から1級まで一貫して問われるテーマで、級が上がるほど扱う決算整理事項が増えていきます。3級の試験でどう問われるかは簿記3級の決算で詳しく扱っているので、試験対策として読む場合はそちらも合わせて確認してください。まずは本記事で、級を問わず共通する決算の骨格をつかみましょう。
決算のやり方 — 決算手続き6ステップの全体像
決算の手順は「簿記決算 やり方」と検索されることも多いテーマですが、会社の規模や使っている会計ソフトが違っても骨格は同じです。「集計する → 実態に合わせる → 集計し直す → 締める → 決算書にする」という順番から外れることはありません。簿記の教材では手続きの数え方が5段階だったり7段階だったりしますが、区切り方の違いにすぎません。ここでは6ステップに分けて、各段階で何をするのかを押さえます。
決算手続きの6ステップ
まず全体像を表で確認します。左から右へ一本道で進み、途中で分岐はありません。逆にいえば、どこか1つの工程を飛ばすと、その先の数字がすべてずれます。
| 順番 | やること | 作るもの・使う道具 |
|---|---|---|
| ① | 期中の仕訳と転記が終わっているか確認し、集計する | 決算整理前残高試算表 |
| ② | 実地棚卸・現物の確認をする | 棚卸表 |
| ③ | 帳簿を実態に合わせて修正する(決算整理) | 決算整理仕訳 |
| ④ | 修正後の残高を集計し直す | 決算整理後残高試算表・精算表 |
| ⑤ | 収益・費用を損益勘定に集めて帳簿を締める | 決算振替仕訳・繰越試算表 |
| ⑥ | 締めた残高を書類の形にまとめる | 損益計算書・貸借対照表 |
ステップ①〜② 集計と棚卸 — 決算整理の前にやること
最初にやるのは、期中の仕訳がすべて記録されているかの確認と集計です。集計した結果が決算整理前残高試算表で、ここで借方合計と貸方合計が一致しなければ、どこかで転記漏れや金額の書き間違いが起きています。試算表が合わない状態で先へ進んではいけません。決算整理という次の工程は「正しく記録できている」ことを前提にしているからです。
次が実地棚卸です。商品の在庫を実際に数え、現金を数え、固定資産の現物を確認します。帳簿の上では商品が100個あることになっていても、実際に数えたら98個しかないということが起こります。この差を見つけるのが棚卸の役割で、ここで作る棚卸表が次のステップの入力になります。決算のやり方でつまずく人の多くは、この「現物を確認する」工程を飛ばして帳簿だけで完結させようとしています。
ステップ③〜④ 決算整理と再集計 — 決算の山場
棚卸などで判明した実態に合わせて帳簿を修正するのが決算整理で、ここが決算の山場です。切った仕訳を反映して集計し直したものが決算整理後残高試算表になります。試験ではこの③と④を1枚の表の上で同時に処理する道具として精算表が登場します。精算表の書き方は簿記3級の精算表で詳しく解説しています。
ステップ⑤〜⑥ 締切と決算書 — 数字を書類の形にする
最後に、収益と費用の勘定を損益勘定に振り替えて残高をゼロにし、資産・負債・純資産の勘定は次期へ繰り越して帳簿を締め切ります。締め切ったあとの残高を所定の様式に並べれば損益計算書と貸借対照表が完成します。ここまでが簿記でいう決算です。実務ではこのあとに税金の計算と申告が続きますが、それは決算書ができてから始まる別の作業です。
簿記決算整理とは — 期中の記録と実態のズレを直す作業
決算整理とは、期中に記録してきた帳簿の金額を、決算日時点の実態に合わせて修正する作業のことです。日々の仕訳は「取引が起きたときに、そのとき分かる情報で」記録します。ところが決算日になって振り返ると、その記録のままでは当期の利益を正しく表せない箇所がいくつも出てきます。そのズレを、決算日にまとめて直すのが決算整理です。
なぜ決算整理が必要なのか — ズレが生まれる3つの型
ズレが生まれる原因は、大きく3つの型に分けられます。この分類を持っておくと、初めて見る決算整理事項でも「どの型だから何をすればいいか」を自力で判断できるようになります。
- 型1:帳簿と現物が食い違っている
- 実地棚卸で見つかるズレです。商品の在庫、現金の残高、貯蔵品として残った切手・収入印紙などが該当します。帳簿を現物に合わせて直します。
- 型2:期間の区切りと支払い・受取りの時期がずれている
- 1年分の保険料を期中にまとめて払った場合、その一部は翌期の分です。支払った時点では全額を費用にしていますが、当期の費用は当期に対応する分だけであるべきです。この調整が経過勘定です。
- 型3:期中には金額が確定しない項目がある
- 固定資産の価値の目減り(減価償却)、売掛金が回収できなくなるリスク(貸倒引当金)、当期の法人税額などは、期中の取引として発生するものではなく、決算日に見積り・計算して初めて金額が決まります。
型1は「現物に合わせる」、型2は「期間で切り分ける」、型3は「決算日に計算して計上する」。決算整理の仕訳は、この3つの動作のいずれかに必ず当てはまります。丸暗記ではなく、目の前の資料がどの型の話をしているのかを見分けるほうが、結果的に早く身につきます。
決算整理の前と後 — 試算表が2枚ある理由
簿記の教材に「決算整理前残高試算表」と「決算整理後残高試算表」の2枚が出てくるのは、決算整理がこの2枚の間に挟まる作業だからです。前T/Bは期中の記録をそのまま集計したもの、後T/Bは決算整理を反映したものです。試験問題では前T/Bと決算整理事項の一覧が与えられ、後T/Bや精算表、決算書を作らせる形式が定番です。
| 項目 | 決算整理前残高試算表 | 決算整理後残高試算表 |
|---|---|---|
| 内容 | 期中の仕訳だけを集計した状態 | 決算整理仕訳まで反映した状態 |
| 繰越商品 | 期首の商品有高のまま | 期末の商品有高に修正済み |
| 減価償却累計額 | 前期末までの累計額 | 当期分を足した累計額 |
| 使いみち | 記録が正しいかの検算 | 決算書を作る材料 |
決算整理は簿記何級で学ぶのか
決算整理は簿記3級から登場し、級が上がるにつれて対象が増えていきます。3級では商品売買・固定資産・債権を中心とした基本的な整理を学び、2級では工業簿記の原価計算や有価証券の評価替え、税効果会計などが加わります。1級ではさらに退職給付や資産除去債務といった見積り項目が増えます。増えるのは項目であって、考え方そのものは3級で学ぶ3つの型から変わりません。3級の決算整理を型で理解しておくことが、そのまま上位級の土台になります。
簿記決算整理事項の一覧 — 3級・2級で問われる論点を総ざらい
決算整理事項とは、決算整理として処理すべき個々の項目のことです。試験問題では「決算整理事項は次のとおりである」という形で箇条書きで与えられ、それを1つずつ仕訳に直していきます。項目数は有限で、しかも出題される顔ぶれはほぼ決まっています。ここに挙げる一覧を見て「何をする項目か」が即答できる状態になれば、決算問題は解けます。
簿記3級で問われる決算整理事項
3級の決算整理事項は次の8種類が中心です。前章の3つの型と対応させて並べます。どの型かが分かれば、切るべき仕訳の方向も自然に決まります。
| 決算整理事項 | 何をするか | 型 |
|---|---|---|
| 売上原価の算定 | 期首・期末の商品有高を使って売れた分だけを費用にする | 型1 |
| 貸倒引当金の設定 | 売掛金・受取手形の残高に率を掛けて差額を繰り入れる | 型3 |
| 減価償却 | 固定資産の当期分の価値の減少を費用にする | 型3 |
| 経過勘定(前払・前受・未収・未払) | 費用収益を当期分と翌期分に切り分ける | 型2 |
| 現金過不足の整理 | 原因不明の差額を雑益・雑損に振り替える | 型1 |
| 貯蔵品への振替 | 未使用の切手・収入印紙を資産に戻す | 型1 |
| 当座借越の振替 | 当座預金のマイナス残高を負債に振り替える | 型1 |
| 消費税・法人税等の計上 | 納付すべき税額を計算して未払計上する | 型3 |
この8項目のうち、配点と難易度の両面で最重要なのが売上原価の算定・貸倒引当金・減価償却・経過勘定の4つです。決算の問題では毎回といっていいほど登場するため、この4つは仕訳を見た瞬間に手が動くまで反復する価値があります。個別の解き方は決算整理仕訳の記事で1つずつ扱っています。
簿記2級以上で加わる決算整理事項
2級になると商業簿記の範囲が広がり、次のような決算整理事項が加わります。3級の8項目に上乗せされる形なので、3級の内容が曖昧なまま進むと負担が一気に増えます。
- 有価証券の評価替え — 売買目的有価証券を決算日の時価に評価し直し、差額を評価損益とする
- 満期保有目的債券の償却原価法 — 額面と取得価額の差額を期間配分する
- 売上原価対立法・棚卸減耗損と商品評価損 — 帳簿数量と実地数量、原価と正味売却価額の差を費用にする
- 固定資産の減損・除却・買換え — 期中に動きがあった固定資産の当期分の償却を月割で計算する
- 外貨建取引の換算替え — 決算日の為替相場で換算し直し、為替差損益を計上する
- 引当金の各種計上 — 賞与引当金・退職給付引当金・修繕引当金など
- 税効果会計 — 会計上と税務上の差異から繰延税金資産・負債を計上する
工業簿記側では、製造原価の集計と仕掛品・製品の棚卸も決算に関わります。簿記3級から2級へ進むときは、決算整理事項がどれだけ増えるかを先に把握しておくと学習計画を立てやすくなります。
決算整理事項を読むときのチェックポイント
問題文の決算整理事項には、仕訳を間違えさせるための情報が意図的に混ぜてあります。読むときは次の3点を必ず確認してください。
- 期中に処理済みかどうか — 「なお、この取引は未処理である」とあれば、決算整理の前に本来の仕訳を切る必要があります
- 期間が何か月分か — 減価償却や経過勘定は月割計算が基本です。期中に取得した固定資産は12か月分ではありません
- 金額の意味 — 「期末商品棚卸高」なのか「当期商品仕入高」なのか、似た用語を取り違えると売上原価がまるごとずれます
決算仕訳① 決算整理仕訳 — 売上原価・減価償却・貸倒引当金
簿記決算仕訳とは、決算のときにだけ切る仕訳の総称です。中身は決算整理仕訳(帳簿を実態に合わせる仕訳)と決算振替仕訳(帳簿を締めるための仕訳)の2種類に分かれます。この章ではまず決算整理仕訳のうち、出題頻度が高く金額も大きい3つを具体的な数字で確認します。仕訳の形は複式簿記の原則どおり、借方合計と貸方合計が必ず一致します。
売上原価の算定 — 繰越商品と仕入を入れ替える2本
商品売買を三分法で記帳している場合、期中は仕入れた金額をすべて仕入勘定に計上しています。しかし当期の費用にできるのは売れた分だけなので、決算で売れ残りを取り除き、前期の売れ残りを当期の費用に加える必要があります。期首商品棚卸高が30,000円、期末商品棚卸高が40,000円の場合、次の2本を切ります。
1本目で期首の在庫を仕入(費用)に振り替え、2本目で期末の在庫を仕入から資産に戻します。この結果、仕入勘定の残高が売上原価そのものになります。借方・貸方に「しいれ・くりこししょうひん / くりこししょうひん・しいれ」と並ぶことから、しくりくりしという語呂で覚えられることが多い論点です。
減価償却 — 当期分の価値の減少を費用にする
建物や備品は使ううちに価値が減りますが、その減少は取引として記録されません。そこで決算日に当期分を計算して費用にします。取得原価600,000円・残存価額ゼロ・耐用年数6年の備品を定額法で償却するなら、1年分は100,000円です。間接法であれば次のように切ります。
注意点は月割計算です。当期の10月に取得した備品を3月決算で償却する場合、当期に使ったのは6か月分なので100,000円 × 6/12 = 50,000円になります。問題文に取得日が書いてあるときは、必ず月割を疑ってください。計算方法の詳しい違いは減価償却の記事で扱っています。
貸倒引当金の設定 — 差額補充法で「足りない分だけ」繰り入れる
売掛金や受取手形は、相手が倒産すれば回収できません。そのリスクを見積もって費用計上しておくのが貸倒引当金です。期末の売掛金が800,000円、設定率2%、貸倒引当金の現在の残高が5,000円だとすると、必要額は16,000円、すでに5,000円あるので繰り入れるのは差額の11,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 11,000 | 貸倒引当金 | 11,000 |
ここで16,000円を全額繰り入れてしまうのが典型的な失点パターンです。差額補充法では「必要額 − 現在の残高」だけを繰り入れると覚えてください。逆に現在の残高が必要額を上回っている場合は、超過分を貸倒引当金戻入(収益)として戻します。
決算仕訳② 経過勘定と再振替仕訳 — 前払・前受・未収・未払
経過勘定は、お金を払った(受け取った)タイミングと、サービスを受けた(提供した)期間がずれているときに使う勘定です。決算整理仕訳の中で最も間違えやすい論点ですが、「決算日で線を引き、線の右側にはみ出した分を来期へ送る」という1つの発想ですべて処理できます。
4つの経過勘定の使い分け
経過勘定は、費用か収益か、前払い(前受け)か後払い(後受け)かの2軸で4つに分かれます。表で位置関係を確認してください。
| 状況 | 勘定科目 | 分類 |
|---|---|---|
| 費用を先に払った(翌期分が含まれる) | 前払費用 | 資産 |
| 費用がまだ未払い(当期分が漏れている) | 未払費用 | 負債 |
| 収益を先に受け取った(翌期分が含まれる) | 前受収益 | 負債 |
| 収益がまだ未回収(当期分が漏れている) | 未収収益 | 資産 |
覚え方はシンプルです。「前」がつけば期間はまだ来ていない、「未」がつけばもう期間は過ぎている。そして前払・未収は資産、前受・未払は負債になります。前払費用は「サービスを受け取る権利」、未払費用は「支払う義務」だと考えると、資産か負債かで迷いません。
前払費用の例 — 決算日をまたぐ保険料を分ける
3月31日決算の会社が、当期の12月1日に向こう1年分の保険料120,000円を支払ったとします。支払時に全額を保険料(費用)として処理していますが、当期に対応するのは12月から3月までの4か月分の40,000円だけです。残る4月から11月までの8か月分80,000円は翌期の費用なので、決算で資産に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払保険料 | 80,000 | 保険料 | 80,000 |
未払費用の例 — まだ払っていない当期分を計上する
逆のパターンもあります。借入金の利息を毎年11月末に1年分後払いしている場合、3月決算では12月から3月までの4か月分の利息が発生しているのに、まだ支払っていないため帳簿に載っていません。この4か月分が6,000円なら、当期の費用として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 6,000 | 未払利息 | 6,000 |
再振替仕訳 — 翌期首に元へ戻す
経過勘定でもう1つ重要なのが再振替仕訳です。決算で計上した前払費用・未払費用などは、翌期首の日付で決算整理仕訳とまったく逆の仕訳を切って元に戻します。前払保険料80,000円であれば、翌期首に借方「保険料 80,000」貸方「前払保険料 80,000」と切ります。こうしておけば、翌期に何もしなくても8か月分が自動的に翌期の費用として計上された状態になるからです。
試験では、決算整理前残高試算表に「前払保険料」が載っていないのに問題文で保険料の前払いが出てくる、という形で再振替済みの状態が前提になることがあります。再振替仕訳は決算整理仕訳とセットで、期をまたいだ処理の後半だと理解しておいてください。
決算仕訳③ 決算振替仕訳と帳簿の締切
決算整理が終わったら、最後に帳簿そのものを締め切ります。ここで切るのが決算振替仕訳です。決算整理仕訳が「金額を直す」仕訳だったのに対し、決算振替仕訳は金額は正しい前提で、勘定の残高を移動させて次期に備える仕訳です。目的が違うので、この2つを混同しないでください。
なぜ収益と費用だけ残高をゼロにするのか
勘定は5つの要素に分かれますが、締切の扱いは2グループに分かれます。収益と費用は「当期1年間でいくら」を表す勘定なので、次期に持ち越すと意味が壊れます。だから決算で残高をゼロにします。一方、資産・負債・純資産は「決算日時点でいくらある」を表す勘定なので、そのまま次期に引き継ぎます。手元の現金が決算をまたいで消えるわけではないからです。
| グループ | 該当する要素 | 決算での扱い |
|---|---|---|
| 期間の勘定 | 収益・費用 | 損益勘定へ振り替えて残高ゼロ |
| 時点の勘定 | 資産・負債・純資産 | 次期繰越として引き継ぐ |
決算振替仕訳の3本
収益と費用を損益勘定に集め、そこで計算された当期純利益を繰越利益剰余金に移す、という3段階です。収益合計が900,000円、費用合計が750,000円のケースで見てみます。
- 収益の振替 — 借方「売上など各収益 900,000」貸方「損益 900,000」。収益は貸方残高なので、借方に書いて消します
- 費用の振替 — 借方「損益 750,000」貸方「仕入など各費用 750,000」。費用は借方残高なので、貸方に書いて消します
- 当期純利益の振替 — 借方「損益 150,000」貸方「繰越利益剰余金 150,000」。損益勘定に残った差額が当期純利益です
損益勘定は決算のためだけに使う集計場所で、3本目を切った時点で残高がゼロになります。もし費用が収益を上回っていれば差額は当期純損失となり、3本目の借方と貸方が逆になります。この一連の流れが損益計算書の中身そのものであることに気づくと、決算書が帳簿から自然に出てくるものだと実感できます。
英米式決算法による帳簿の締切
資産・負債・純資産の勘定は、決算日の日付で残高が少ないほうの側に「次期繰越」と朱書きし、貸借を一致させて締め切ります。そして翌期首に「前期繰越」として同額を反対側に記入します。この方法を英米式決算法といい、日商簿記の試験ではこちらが基本です。締め切った各勘定の次期繰越額を集めた表が繰越試算表で、これが貸借対照表の材料になります。
勘定を締め切る作業は総勘定元帳の上で行われます。仕訳帳から元帳への転記、元帳の締切、そして決算書へという流れは、複式簿記の記録システム全体を見渡すと理解しやすくなります。
決算のあと — 決算書の作成・株主総会・確定申告と月次決算
簿記の学習範囲は決算書の作成までですが、実務ではその先に承認と申告の手続きが続きます。簿記が何のために存在するのかを理解するうえで役立つので、決算後のやり方の流れも押さえておきましょう。ここで扱う制度や期限は改正されることがあるため、実務で使う際は国税庁など公式サイトで最新情報を確認してください。
決算書としてまとめる書類
締め切った帳簿の残高を所定の様式に並べたものが決算書(財務諸表)です。会社法では計算書類と呼び、次の書類を作成します。簿記3級・2級で作成を求められるのは主に最初の2つです。
| 書類 | 表すもの | 簿記での扱い |
|---|---|---|
| 貸借対照表(B/S) | 決算日時点の財政状態 | 3級から作成する |
| 損益計算書(P/L) | 会計期間の経営成績 | 3級から作成する |
| 株主資本等変動計算書 | 純資産の当期の増減 | 2級で学ぶ |
| キャッシュ・フロー計算書 | 現金の増減の内訳 | 1級の範囲 |
出来上がった貸借対照表をどう読み解くかは貸借対照表の読み方で解説しています。決算の手続きを一通り理解したあとに読むと、自分が作った表が何を語っているのかが見えてきます。
株主総会の承認と法人税の申告
株式会社では、作成した計算書類を取締役会と定時株主総会に諮り、承認を受けて決算が確定します。そのうえで税務申告に進みます。法人税の申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月31日決算の会社なら5月31日が期限になります。定時株主総会が期限に間に合わない事情がある場合は、申請により申告期限の延長が認められることがありますが、延長されるのは申告期限であって納付期限ではない点に注意が必要です。
個人事業主の場合は、12月31日で会計期間を締めて決算を行い、翌年の確定申告期間に所得税の確定申告をします。青色申告で65万円の特別控除を受けるには、複式簿記による記帳と貸借対照表・損益計算書の添付が要件になります。簿記の決算を自分でできることが、そのまま節税につながる場面です。
年次決算と月次決算・中間決算・四半期決算の違い
ここまで説明してきた1年に1度の決算を年次決算(本決算)といいます。実務ではこれとは別に、期間を区切った決算も行われます。目的が異なるため、手続きの重さも変わります。
- 月次決算
- 毎月末に業績を把握するための社内向けの決算。法律上の義務はなく、精度より速さを優先して概算で処理する項目もある。減価償却費を年額の12分の1で毎月計上するなど、簡便な処理が使われる
- 四半期決算・中間決算
- 3か月ごと、あるいは半年ごとに区切って行う決算。上場企業に開示が求められる。年次決算より簡便な処理が認められている
- 年次決算(本決算)
- 会計期間の締めくくりとして行う正式な決算。税務申告と株主への報告の基礎になり、決算整理をすべて正確に行う
簿記の試験で問われる決算は、原則としてこの年次決算です。月次決算という言葉を実務で聞いたときに「簡便版の決算を毎月やっているのだ」と分かれば十分です。
まとめ — 決算は「ズレを直す・集める・締める」の3動作
簿記の決算は、覚えることが多く見えて、実際にやっていることは3つだけです。実態とのズレを直し(決算整理)、収益と費用を集めて利益を出し(決算振替)、帳簿を締めて決算書にする。この記事で扱った内容を、その3動作に沿ってもう一度整理します。
- 決算とは — 会計期間を締め、利益と財産を確定させて決算書を作る手続き。個人事業主の会計期間は1月1日から12月31日で固定、法人は決算日を自由に決められる
- 決算のやり方 — 試算表で集計 → 棚卸で現物確認 → 決算整理 → 再集計 → 決算振替と締切 → 決算書。分岐のない一本道で、1つ飛ばすと以降がすべてずれる
- 決算整理 — ズレの型は「帳簿と現物の食い違い」「期間と支払時期のずれ」「決算日に確定する見積り」の3つ。どの型かが分かれば処理は決まる
- 決算整理事項 — 3級は8種類が中心。売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定の4つが最重要。2級以上では有価証券の評価替えや税効果会計などが加わる
- 決算仕訳 — 実態に合わせる決算整理仕訳と、帳簿を締める決算振替仕訳の2種類。経過勘定は翌期首の再振替仕訳とセットで完結する
そして決算を得点源にする方法は1つしかありません。決算整理仕訳を、考えずに手が動くまで反復することです。決算の問題が解けない原因のほとんどは、精算表の書き方や表の埋め方ではなく、その手前の1本の仕訳が思い出せないことにあります。逆にいえば、8種類の決算整理仕訳が反射で切れるようになれば、精算表も財務諸表も同じ材料を並べ替えるだけの作業になります。
学猿の仕訳ドリルは、この「1本の仕訳を反射で切る」練習に特化しています。勘定科目を選んで金額を入力する試験と同じ形式で、決算整理の論点だけを繰り返し解けます。間違えた問題は復習キューに入り、忘れるころに自動で再出題されるので、決算整理事項の一覧を眺めて覚えた気になって終わる、ということが起こりません。まずは売上原価の算定と経過勘定から、5分だけ手を動かしてみてください。

