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給料の仕訳をわかりやすく解説|預り金・法定福利費の仕訳例と簿記3級の解き方・個人事業主の場合

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ここだけは押さえたい!
給料の仕訳は「支給総額の全額を費用に立て、天引きした分は預り金(負債)にする」のが基本形です。所得税・社会保険料・住民税の預り金、会社負担分の法定福利費、納付時や未払給料の仕訳例、簿記3級・2級での出題パターン、個人事業主の給料賃金と専従者給与まで、間違えやすい論点を整理して解説します。

給料の仕訳とは — 支給総額を費用に立て、天引き分を預かる

給料の仕訳は、従業員に給与を支払ったときに帳簿へ記録する処理です。家賃や水道光熱費の支払いと違ってつまずきやすいのは、会社が実際に振り込む金額(手取り額)と、費用として計上する金額(支給総額)が一致しないという点にあります。給与からは所得税や社会保険料が天引きされるからです。

結論を先に言ってしまうと、給料の仕訳の型はひとつしかありません。支給総額の全額を費用の「給料」として借方に立て、天引きした分は会社が一時的に預かっているだけなので貸方に「預り金」(負債)として置く。そして残りの差額が、実際に振り込む手取り額になります。この構造さえ頭に入れば、天引きの項目が2つでも5つでも、貸方の行が増えるだけで考え方は変わりません。

給料の仕訳の基本形

支給総額300,000円、そこから所得税10,000円と社会保険料45,000円を天引きし、残額255,000円を普通預金から振り込んだ場合を見てみます。

給料の仕訳は支給総額を借方に立て、天引き分と手取りを貸方に並べる 支給総額300,000円のうち55,000円を天引きして振込 借方(左) 貸方(右) = 支給総額のまま 給料 300,000 費用の発生 所得税預り金 10,000 社会保険料預り金 45,000 普通預金(手取り) 255,000 借方合計 300,000 = 貸方合計 300,000
借方は必ず支給総額。天引き分は預り金(負債)になり、差額だけが実際に出ていく現金・預金になる

図のとおり、借方は「給料 300,000」の1行だけです。貸方は所得税預り金10,000円、社会保険料預り金45,000円、普通預金255,000円の3行に分かれますが、合計すれば300,000円で借方と一致します。借方1行・貸方3行のように左右の行数が違っても、金額の合計さえ揃っていれば仕訳として正しい形です。この貸借平均の考え方は複式簿記の大原則にあたります。

なぜ手取りではなく支給総額を費用にするのか

天引き(源泉徴収)は、従業員が本来自分で納めるべき税金や保険料を、会社が代わりに給与から差し引いて預かり、後日まとめて納付するという制度です。会社が負担しているわけではありません。会社から見れば労働の対価として支払うと決めた金額は300,000円そのものであり、そのうち55,000円をいったん手元に留め置いて国や年金事務所へ回しているだけ、という理解になります。

この「後で納める義務がある預かりもの」が負債にあたるため、貸方に預り金として置きます。手取りの255,000円を給料として計上してしまうと、費用が55,000円少なくなり、預かっている義務も帳簿から消えてしまいます。給料の仕訳で最も多い誤りがこれです。

給料・給与・賃金 — 勘定科目名の使い分け

実務では会社ごとに科目名が異なり、給料のほかに給与手当・賃金・雑給といった呼び方が使われます。一般に事務職や管理部門への支給を給料(給与手当)、工場の作業者への支給を賃金、パート・アルバイトへの支給を雑給として区分することが多く、どれを使っても仕訳の構造は同じです。役員に支払うものだけは役員報酬という別科目にするのが通例で、税務上の扱いが従業員給与と異なるためです。簿記の試験では原則として「給料」に統一されているので、科目名で悩む必要はありません。

給料の仕訳の例 — 支給・納付・立替えの具体例で確認する

基本形がつかめたら、実際の給料仕訳の例を並べて確認します。給与計算は毎月同じ流れの繰り返しなので、覚えるべきパターンは「支給したとき」「預かった分を納付したとき」「例外的な控除や立替えがあるとき」の3つに集約されます。以下の例では支給総額300,000円、所得税10,000円、住民税15,000円、社会保険料45,000円という同じ条件を使い、金額の動きを追いやすくしています。

支給したときの仕訳例

取引の例借方貸方
給料300,000円から所得税10,000円を天引きし、残額を普通預金から振り込んだ給料 300,000所得税預り金 10,000 / 普通預金 290,000
給料300,000円から所得税10,000円・住民税15,000円・社会保険料45,000円を天引きし、残額を当座預金から支払った給料 300,000所得税預り金 10,000 / 住民税預り金 15,000 / 社会保険料預り金 45,000 / 当座預金 230,000
アルバイトへの給料80,000円を現金で支払った(天引きなし)給料 80,000現金 80,000

天引きの項目が増えても、借方の給料は常に支給総額の300,000円で動きません。増えるのは貸方の行数だけで、その分だけ最後に残る手取り(普通預金や当座預金の金額)が小さくなります。3例目のように天引きが一切なければ、貸方は現金1行だけになり、ふつうの経費の支払いと同じ形になります。

預かった分を納付したときの仕訳例

預り金は納付するまでの一時的な負債なので、実際に納めた時点で借方に持ってきて消します。所得税は原則として翌月10日まで、住民税も翌月10日までに納付します。社会保険料は翌月末が納付期限です。

取引の例借方貸方
預かっていた所得税10,000円を現金で納付した所得税預り金 10,000現金 10,000
預かっていた住民税15,000円を普通預金から納付した住民税預り金 15,000普通預金 15,000

納付の仕訳では費用の科目が一切出てこないことに注目してください。納付は預かっていた負債を返す取引であって、会社の費用が増える取引ではないからです。ここで租税公課などの費用科目を使ってしまうと、給与支給時に一度計上した費用と二重になります。

立替えや前貸しがある場合の仕訳例

従業員が負担すべきお金を会社が先に払っている場合は、給与から回収するときに立替金(資産)を減らします。たとえば従業員の個人的な買い物代20,000円を会社が立て替えていて、今月の給料から差し引いたなら「(借方)給料 300,000 /(貸方)立替金 20,000・所得税預り金 10,000・普通預金 270,000」となります。生活費として給料日前に現金を渡す前貸しも同じ考え方で、渡した時点では従業員貸付金または立替金(資産)として処理し、給料日に相殺します。

いずれの例でも、差し引くもの(預り金・立替金)が増えるだけで、借方の給料が支給総額であることは変わりません。給与明細の控除欄に並ぶ項目を、預かっているのか(預り金)、立て替えたものを返してもらっているのか(立替金)で振り分ければ、仕訳は自然に決まります。

天引きの中身と勘定科目 — 所得税・住民税・社会保険料・雇用保険

給与から差し引かれるものは、法律で天引きが認められている「法定控除」と、社宅費や積立金のように会社と従業員の取り決めで差し引く「協定控除」に分かれます。仕訳で預り金として扱うのは主に法定控除で、内訳は次の5つです。

源泉所得税
その月の給与額と扶養親族の数から、国税庁の源泉徴収税額表(月額表)を使って求める。復興特別所得税を含んだ税額が表に織り込まれている。年末調整で1年分を精算する
住民税(特別徴収)
市区町村から届く通知書の金額をそのまま差し引く。前年の所得に対する税額を6月から翌年5月までの12回に分けて納める
健康保険料・介護保険料
標準報酬月額に都道府県ごとの料率を掛けて計算し、労使で折半する。介護保険料は40歳から64歳の従業員だけに上乗せされる
厚生年金保険料
標準報酬月額に18.3%を掛けた額を労使で折半するため、本人負担は9.15%相当。2017年9月以降この率で固定されている
雇用保険料
標準報酬月額ではなく、その月に実際に支払う賃金総額に料率を掛けて計算する。2026年度(令和8年度)の一般の事業は本人負担5/1000、会社負担8.5/1000

健康保険料率は都道府県ごとに異なり、協会けんぽの2026年度は全国平均でおよそ9.9%(労使合計)、介護保険料率は全国一律1.62%です。雇用保険料率は毎年度見直されるうえ、料率の改定は原則としてその年の4月1日以後に支払う賃金から適用されます。料率は年度替わりに変わる前提で扱い、給与計算に使う前に協会けんぽや厚生労働省の公式サイトで最新の数値を確認してください

預り金を1本にまとめるか、科目を分けるか

天引きした分をすべて「預り金」という1つの科目で処理する方法と、所得税預り金・住民税預り金・社会保険料預り金のように内訳ごとに科目を分ける方法があります。どちらも正しい処理ですが、納付先も納付期限も違うものが1つの残高に混ざると、月末に「いくら納め残しているのか」が読み取れなくなります。実務では科目を分けるか、預り金1本にして補助科目で内訳を管理するのが一般的です。

簿記の試験では問題文に使用できる勘定科目が指定されるため、その指示に従います。所得税預り金・社会保険料預り金と細かく与えられていればそれを使い、単に預り金としか与えられていなければ1本にまとめます。指定された科目を勝手に読み替えると不正解になるので、解答用紙の科目欄を先に見る癖をつけてください。

雇用保険料の天引きが年1回になる場合

雇用保険料は本来毎月の給与から控除しますが、労働保険料を年度の初めに概算で一括納付する仕組みのため、会社によっては年1回まとめて処理していることがあります。この場合、会社が概算保険料を納付した時点では本人負担分の回収がまだなので、いったん立替金(資産)や前払費用として置き、毎月の給与から少しずつ回収して取り崩していくという流れになります。給与計算ソフトの設定に左右されやすい部分なので、帳簿を引き継いだときは前任者がどちらの方式で処理していたかを必ず確認します。

会社負担分の仕訳 — 法定福利費と社会保険料の納付

ここまでは従業員から預かる側の話でしたが、社会保険料には会社が自分の費用として負担する分があります。健康保険料と厚生年金保険料は労使折半、つまり従業員と会社が半分ずつ出し合う仕組みだからです。この会社負担分を処理する費用科目が法定福利費です。

社会保険料は本人負担が預り金、会社負担が法定福利費に分かれる 健康保険料・厚生年金保険料は労使折半 社会保険料の総額 90,000 本人負担 45,000 社会保険料預り金 負債・給与から天引き 会社負担 45,000 法定福利費 費用・会社の持ち出し 納付時は90,000円をまとめて納める
同じ社会保険料でも、本人負担分は預かっているだけの負債、会社負担分は会社自身の費用になる

図のように、社会保険料の総額90,000円のうち45,000円は従業員の給与から天引きして預かった分(社会保険料預り金)、残りの45,000円は会社が自分で負担する分(法定福利費)です。同じ「社会保険料」という言葉で呼ばれていても、帳簿の上ではまったく別の性質を持つ金額に分かれる、という点がこの論点の核心になります。

会社負担分を計上するタイミング

会社負担分の法定福利費は、給与を支給した月の費用として計上します。給与の支給と同時に「(借方)法定福利費 45,000 /(貸方)未払費用 45,000」と起こしておき、翌月末の納付時に未払費用を取り崩す方法が、費用の期間対応としては正確です。ただし中小企業では手間を優先して、納付した月にまとめて法定福利費を計上する方法も広く行われています。どちらの方法を採るにせよ、期をまたぐときだけは決算整理で当期分に揃える必要があります。

社会保険料を納付したときの仕訳

年金事務所へ納付するときは、預かっていた本人負担分と会社負担分を合わせた金額が一度に口座から引き落とされます。仕訳の例は次のとおりです。

取引の例借方貸方
社会保険料90,000円(本人負担45,000円・会社負担45,000円)が普通預金から引き落とされた社会保険料預り金 45,000 / 法定福利費 45,000普通預金 90,000
労働保険料の概算保険料60,000円を現金で納付した(全額を会社負担で処理する場合)法定福利費 60,000現金 60,000

借方に預り金と法定福利費の2行が並ぶこの形が、給料まわりで最も間違えやすい仕訳です。引き落とされた90,000円をすべて法定福利費にしてしまうと、預かった45,000円が負債として帳簿に残り続けます。預り金の残高が毎月膨らんでいくときは、この処理を疑ってください。

全額が会社負担になるもの

労災保険料と子ども・子育て拠出金は、従業員からの天引きがなく全額が会社負担です。天引きの対象ではないので預り金は登場せず、支払った額をそのまま法定福利費として処理します。労災保険料の料率は業種によって大きく異なり、子ども・子育て拠出金の率も年度ごとに定められるため、金額を確定させる前に厚生労働省や日本年金機構の公式サイトで最新情報を確認してください。なお、健康診断の費用や慶弔見舞金のように法律で義務づけられていない支出は、法定福利費ではなく福利厚生費として区別します。

簿記での給料仕訳 — 3級・2級の出題パターンと解き方

給料の仕訳は、簿記検定でも安定して出題される定番論点です。日商簿記3級では第1問の仕訳問題で、簿記2級では給与にひもづく引当金や原価計算との関連で顔を出します。実務のように料率を自分で調べる必要はなく、天引き額は問題文にそのまま与えられるため、簿記の試験で問われているのは計算力ではなく「どの金額をどちらに置くか」の判断だけです。

簿記3級で問われる形

3級で出題されるのは、これまで見てきた基本形とその周辺です。出題のバリエーションは実質4つしかありません。

  • 支給時の仕訳 — 支給総額を給料、天引き分を所得税預り金・社会保険料預り金、残額を現金や普通預金に置く
  • 納付時の仕訳 — 預り金を借方で取り崩し、貸方に現金・普通預金を置く
  • 会社負担分の仕訳 — 法定福利費を使い、預り金と合わせて納付する
  • 決算整理での未払計上 — 当期に発生した未払いの給料を未払給料(未払費用)として計上する

第1問は仕訳15題で45点、簿記3級全体の45%を占める最大の得点源です。給料の仕訳はそのうち毎回1題前後で出ることが多く、パターンが固定されている分だけ取りこぼしが痛い問題でもあります。第1問の全体像とその他の頻出パターンは簿記3級の仕訳にまとめているので、あわせて確認してください。試験範囲全体の位置づけは簿記3級とはで整理しています。

簿記2級以降で広がる論点

簿記2級になると、給与そのものの仕訳は3級と同じまま、その周辺が広がります。決算で翌期以降に支払う賞与を見積もって計上する賞与引当金、退職給付引当金といった引当金の論点がその代表です。また工業簿記では、工場で働く人への支給は賃金という科目で処理し、直接工の賃金は仕掛品へ、間接工の賃金や工場の事務員の給料は製造間接費へ振り替えるという原価の流れが加わります。「給料は費用」で完結する商業簿記に対し、工業簿記では給料がいったん資産(仕掛品・製品)を経由する点が最大の違いです。

試験で確実に得点する手順

本試験で給料の仕訳を落とさないための手順は3ステップに整理できます。第一に、問題文から支給総額を見つけて借方に置く。手取り額が先に書かれていても釣られないことです。第二に、天引きされた項目を貸方に並べる。ここで解答用紙の勘定科目一覧を見て、預り金を1本で答えるのか科目別に答えるのかを確定させます。第三に、支給総額から天引きの合計を引いた差額を、支払手段(現金・普通預金・当座預金)として貸方の最後に置く。差額で求めるのは手取りであって、給料ではありません。この順番を固定しておけば、天引き項目がいくつ増えても手が止まらなくなります。

決算をまたぐ給料 — 未払給料の計上と翌期首の再振替

多くの会社は「月末で締めて翌月に支払う」形をとっています。3月決算の会社が3月分の給料を4月25日に支払うなら、3月に働いてもらった分の費用が、決算日の時点ではまだ帳簿に載っていないことになります。これを当期の費用として計上し直すのが決算整理の未払計上です。

決算日をまたぐ給料は未払計上し、翌期首に再振替する 3月分の給料を4月25日に支払う会社(3月決算) 働いた期間=当期の費用 3/1 3/31 決算日 4/25 支払日 決算整理 給料 / 未払給料 翌期首の再振替 未払給料 / 給料
決算日に未払給料として当期の費用に取り込み、翌期首に逆仕訳で戻して二重計上を防ぐ

決算日に未払給料を計上する

3月分の給料300,000円が未払いなら、決算整理仕訳は「(借方)給料 300,000 /(貸方)未払給料 300,000」です。借方の給料で当期の費用を増やし、貸方の未払給料(負債)で「まだ払っていない義務」を残します。科目名は未払給料のほか、未払費用や未払賃金が指定されることもあります。ここで使うのは未払金ではありません未払金は物品の購入など一回きりの債務に使う科目で、継続的な役務の提供に対する未払いは未払費用の系統で処理する、という区別があるためです。

未払計上の対象になるのは、あくまで決算日までに労働の提供を受けた分です。日給や時給で計算している場合は、締め日の翌日から決算日までの日数分だけを按分して計上します。給料と同じ考え方で家賃や利息も処理するので、未払費用・前払費用・未収収益・前受収益の4つはまとめて覚えるのが効率的です。決算整理の全体像は簿記3級の決算で確認できます。

翌期首の再振替仕訳

翌期の期首(4月1日)には、決算整理と逆の仕訳「(借方)未払給料 300,000 /(貸方)給料 300,000」を起こします。これが再振替仕訳です。これをしておかないと、4月25日に実際に給料を支払ったときの仕訳でもう一度費用が計上され、同じ3月分の給料が2回費用になってしまいます。再振替をしておけば、支払日にはいつもどおりの支給の仕訳を機械的に起こすだけでよい状態になり、期首に一度戻したマイナスと相殺されて当期の費用は正しい金額に落ち着きます。

前払いや日割りが発生する場合

逆に、当月末に翌月分をまとめて前払いする給与体系なら、決算日をまたぐ分は前払費用(資産)へ振り替えて当期の費用から除きます。賞与のように支給対象期間と支払日が大きくずれるものは、簿記2級で学ぶ賞与引当金の考え方で、支給見込額のうち当期に対応する分を見積もって計上します。いずれも発想は同じで、費用は「支払った日」ではなく「働いてもらった期間」に合わせて切り揃えるという一点に尽きます。

個人事業主の給料の仕訳 — 事業主貸・給料賃金・専従者給与

個人事業主が給料の仕訳で最初につまずくのは、事業主本人が受け取るお金は給料にならないという点です。法人であれば社長も会社から役員報酬を受け取る立場ですが、個人事業では事業主と事業が同一人格なので、自分に給料を払うという取引がそもそも成立しません。個人事業主の帳簿では、支払う相手によって使う科目が3つに分かれます。

支払う相手使う科目経費になるか
事業主本人(生活費として引き出す)事業主貸ならない
従業員(家族以外)給料賃金なる
生計を一にする家族専従者給与(青色申告)届出の範囲で経費になる

事業主本人が生活費を引き出したときの仕訳

事業用の口座から生活費200,000円を引き出したときの仕訳は「(借方)事業主貸 200,000 /(貸方)普通預金 200,000」です。事業主貸は、事業のお金を事業主が個人的に持ち出したことを記録する科目で、経費ではありません。年度末には事業主借とあわせて元入金に振り替えられ、翌期首の残高はゼロから始まります。この処理を給料にしてしまうと、経費が過大になり所得の申告を誤ります。国民健康保険料や国民年金保険料、所得税・住民税を事業用口座から払った場合も、経費ではなく事業主貸です(確定申告では社会保険料控除として所得から差し引きます)。

従業員に払う給料の仕訳

家族以外の従業員に払う給料は、青色申告決算書の様式に合わせて給料賃金という科目を使います。仕訳の形は法人の場合とまったく同じで、支給総額を借方の給料賃金に立て、天引きした所得税や社会保険料を貸方の預り金に置き、差額を手取りとして支払います。個人事業主であっても人を雇えば源泉徴収義務者になるため、従業員の給与から所得税を天引きして納付する義務は法人と変わりません

家族に払う給料 — 専従者給与と事業専従者控除

生計を一にする配偶者や親族に払う給料は、原則として必要経費になりません。ただし例外があり、青色申告をしていて「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していれば、労務の対価として妥当な金額を専従者給与として全額経費にできます。届出の期限は適用を受けたい年の3月15日まで(その年の1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内)です。白色申告の場合は届出という仕組みがなく、事業専従者控除として配偶者は最高86万円、その他の親族は最高50万円という上限つきの控除になります。専従者として認められるには年齢や従事期間などの要件があるため、詳細は国税庁の公式サイトで最新の情報を確認してください。

源泉所得税の納付と納期の特例

天引きした所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納付します。ただし給与を支払う人数が常時10人未満の事業所であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出すことで年2回にまとめられます。1月から6月分は7月10日まで、7月から12月分は翌年1月20日までが納付期限です。小規模な個人事業主にとっては納付の手間が大きく減る制度ですが、半年分がまとめて出ていくため、預り金の残高に相当する現金を使い込まないよう資金繰りに注意が必要です

給料仕訳でよくある間違いと確認のしかた

給料の仕訳の誤りは、その月の試算表を見ただけでは気づきにくく、預り金の残高が少しずつずれていく形で表面化します。典型的な間違いは次の4つです。

手取り額を給料として計上してしまう

最も多い誤りが、通帳から出ていった金額をそのまま給料にしてしまうケースです。この処理では費用が天引き分だけ小さくなり、預かった義務も帳簿に残りません。通帳の出金額と給料の計上額は一致しないのが正常だと覚えておくのが対策になります。給与明細の「差引支給額」ではなく「総支給額」が仕訳の借方に立つ金額です。

納付時に費用科目を使ってしまう

預かった所得税や住民税を納付したときに、租税公課や法定福利費といった費用科目で処理してしまう誤りです。給与支給時にすでに費用は計上済みなので、納付は預り金という負債を消す取引にすぎません。同じ理由で、社会保険料の引き落とし全額を法定福利費にするのも誤りです。会社負担分だけが法定福利費で、本人負担分は預り金の取り崩しになります。

紛らわしい科目の取り違え

迷いやすい組み合わせ使い分けの基準
預り金と立替金従業員から預かって後で納めるなら預り金(負債)、会社が先に払って後で回収するなら立替金(資産)
未払給料と未払金継続的な労働の提供に対する未払いは未払給料(未払費用)、物品購入などの一回きりの債務は未払金
法定福利費と福利厚生費社会保険料など法律で義務づけられた負担は法定福利費、健康診断や慶弔見舞金など任意の支出は福利厚生費
給料と役員報酬従業員への支給は給料、取締役など役員への支給は役員報酬。税務上の損金算入の要件が異なる

預り金の残高で検算する

正しく処理できているかを確かめる一番確実な方法は、総勘定元帳で預り金の残高を追うことです。所得税預り金なら、毎月10日の納付を済ませた直後の残高はゼロに近くなるはずです。社会保険料預り金は翌月末納付なので、月末時点で1か月分だけが残っているのが正常な姿になります。残高が2か月分・3か月分と積み上がっていたら、納付の仕訳で預り金を取り崩し忘れているサインです。住民税預り金も同様に、6月から翌年5月までの各月で1か月分だけが残る形になります。この確認を月次で1分だけ行う習慣をつけると、決算前にまとめて調べ直す手間がなくなります。

まとめ — 給料の仕訳は「総額を費用、天引きは預り金」

給料の仕訳は覚えることが多いように見えて、実際に押さえるべき軸は一本だけです。最後に要点を整理します。

  • 借方に立てるのは支給総額。手取り額ではない。天引き分は貸方の預り金(負債)になり、差額が実際に支払う金額になる
  • 預り金は納付するまでの一時的な負債。納付時は借方で取り崩すだけで、費用科目は使わない
  • 社会保険料は労使折半。本人負担分は社会保険料預り金、会社負担分は法定福利費という別の科目に分かれる
  • 決算日をまたぐ未払いの給料は未払給料(未払費用)として当期の費用に取り込み、翌期首に再振替仕訳で戻す
  • 個人事業主が自分の生活費を引き出すのは事業主貸で経費にならない。従業員への支給は給料賃金、家族への支給は届出をした専従者給与
  • 簿記3級で問われるのは支給・納付・会社負担・未払計上の4パターン。指定された勘定科目に従って解答する

料率や納付期限は制度改正で変わりますが、「総額を費用に立て、預かった分を負債にする」という構造そのものは変わりません。数字が変わっても仕訳の形が崩れない、という感覚が身につけば、給与計算ソフトが出力した仕訳を検算することもできるようになります。

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