簿記3級から2級へ — 必要な勉強時間・期間・難易度の結論
日商簿記3級に合格したあと、そのまま2級へ進むときに最初に知りたいのは「あとどれくらいやれば届くのか」でしょう。結論から書きます。簿記3級から2級までに必要な勉強時間は150〜250時間、1日2時間を確保できるなら3〜4ヶ月が現実的な到達期間です。3級そのものに必要な時間が約100時間であることを踏まえると、2級は3級のおよそ2〜3倍の学習量を、3級の知識を土台にした状態から積み増す試験だということになります。
この150〜250時間という幅は、勉強のやり方が上手いか下手かで生まれるものではありません。3級合格からどれだけ間が空いているかで決まります。合格直後に接続すれば下限の150時間側に寄り、半年・1年と空けてから再開すると、仕訳の感覚を戻すだけで20〜30時間が消えて上限側に寄っていきます。3級から2級への移行で最も効くのは教材選びではなく、始めるタイミングです。
3級から2級へ進むときの数字を一覧で確認する
3級と2級の試験制度そのものの差は、次の表のとおりです。判断に必要な数字を先に押さえてから、各章で「なぜその時間が必要になるのか」を見ていきます。
| 項目 | 簿記3級 | 簿記2級 |
|---|---|---|
| 試験科目 | 商業簿記のみ | 商業簿記+工業簿記 |
| 試験時間・大問数 | 60分・3問 | 90分・5問 |
| 合格基準 | 100点中70点 | 100点中70点 |
| 勉強時間の目安 | 約100時間 | 3級ありで150〜250時間 |
| 合格率の目安 | 統一試験33〜34%台 ネット試験40.8% | 統一試験15〜30% ネット試験32.9% |
| 受験料(税込) | 3,300円 | 5,500円 |
受験料や試験の実施要項は改定されることがあるため、申し込む前に商工会議所の公式サイトで最新情報を確認してください。ネット試験(CBT方式)で申し込む場合は、どちらの級も事務手数料550円が別途かかります。試験制度の項目ごとの比較は簿記3級と2級の違いで詳しく扱っているので、そもそも2級へ進むかどうかを迷っている段階ならそちらを先に読んでください。
この記事で扱うこと — 3級と2級を「つなぐ」設計
本記事は、2級を単独の試験として解説するのではなく、3級に受かった人がその状態からどう接続するかに絞って書いています。具体的には、3級で身につけた知識のうち何がそのまま使えて何が通用しないのか、追加の150〜250時間を何にどう配るのか、1日何時間なら何ヶ月かかるのか、難易度が跳ね上がる場所はどこか、そして3級合格直後の30日で何をすべきか。2級の勉強時間そのものをより広く扱った簿記2級の勉強時間の解説と併せて読むと、初学者ルートとの違いもはっきりします。
簿記3級から2級の勉強時間は何時間? — 追加200時間の内訳
3級から2級へ進むときの勉強時間を「何時間」という総量だけで決めても、計画は動きません。総量を何に配るかまで決めて、はじめてスケジュールになります。3級ありのスタンダードなプランである総時間200時間を例にすると、内訳はおおむね次の3つに分かれます。
- 商業簿記の新論点に約100時間 — 3級の延長線上にありながら、株式会社会計・連結会計・税効果会計といった新しい論点の負荷が重い部分です。
- 工業簿記に約70時間 — 原価計算という3級には存在しなかった考え方を、ゼロから習得するための時間です。
- 模擬試験と総仕上げに約30時間 — 90分5題を通しで解き、解く順番と時間配分を体に入れる時間です。
注目してほしいのは、追加の200時間のうち3分の1強が3級では一度も触れていない工業簿記に消えるという点です。3級から2級への学習は「同じ商業簿記をより深く」ではなく「商業簿記を伸ばしつつ、新しい科目を1つ立ち上げる」二正面作戦になります。3級の学習が商業簿記だけで完結していたのに対し、2級では時間の配り方そのものを設計し直す必要があるということです。
累計時間ごとの到達ライン — 何時間でどこまで行けるか
勉強を始めると「今60時間やったが、これで合格圏のどのあたりなのか」が気になります。3級合格を出発点にした場合の、累計勉強時間と到達度のおおよその対応は次のとおりです。
| 累計時間 | 到達している状態 |
|---|---|
| 30時間 | 2級商業簿記のテキストが3分の1ほど。株式会社会計の勘定科目に慣れてくる |
| 60時間 | 商業簿記のテキストを1周。連結会計で一度つまずくのがこのあたり |
| 100時間 | 商業簿記の個別演習に入り、工業簿記のインプットを開始する |
| 150時間 | 合格圏の下限。模試で60点台が出はじめる |
| 200時間 | 模試で70点台が安定してくる。受験の予約を入れてよい水準 |
| 250時間 | 取りこぼしが消え、当たり回に左右されにくくなる |
この表の時間は「机に向かった時間」ではなく手を動かして問題を解いた時間を含む実質的な勉強時間です。講義動画を流し見していた時間をいくら積み上げても、到達度はこの表どおりには伸びません。合格基準は100点満点中70点。3級のときも同じ70点でしたが、2級では大問5題のうち解けない1題があるだけで70点が遠のくため、演習量の意味が3級より一段重くなります。
3級で使った時間との比較で見積もりを立てる
自分が実際に3級で何時間使ったかは、2級の見積もりに使える最良の材料です。3級に120時間かかった人は2級でも上限側の250時間を、3級を70時間で終えた人は下限側の150時間を目安に置くと実態に近くなります。3級の標準的な学習時間の内訳は簿記3級の勉強時間にまとめているので、自分の実績が平均に対してどうだったかをそこで照合してください。学習の速さは個人差というより、1回の学習でどれだけ手を動かしたかの差で説明できることがほとんどです。
1日何時間で何ヶ月かかるか — 期間シミュレーション
必要な期間は「総勉強時間 ÷ 1日あたりの勉強時間」でおおよそ計算できます。3級から2級までを約200時間として、1日の勉強時間別に何ヶ月かかるかを整理したのが次の表です。3級のときより1日あたりの時間を増やせないなら、期間のほうを伸ばして総量を確保するしかない、という関係になります。
| 1日の勉強時間 | かかる期間(約200時間) | 向いている人 |
|---|---|---|
| 30分 | 約1年 | 期間が長すぎて非推奨 |
| 1時間 | 6〜7ヶ月 | 繁忙期が長い社会人 |
| 1.5時間 | 4〜5ヶ月 | 働きながらの標準プラン |
| 2時間 | 3〜4ヶ月 | 最も破綻しにくい設計 |
| 3時間 | 約2ヶ月 | 学生・時間を作れる人 |
| 5時間 | 約1ヶ月 | 3級直後の短期決戦 |
この表は毎日休まず続けた場合の理論値です。実際には週1日の予備日を織り込み、表の期間に2〜3週間を足したものを計画として置いてください。働きながら独学で進める人にとって現実的なゾーンは4ヶ月〜半年、まとまった時間を取れる学生なら2〜3ヶ月です。
1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月 — 短期プランが成立する条件
「3級に受かった勢いで、次の試験までに2級も」と考える人は多いので、月単位のプランごとに成立条件を整理します。何ヶ月で行けるかは意志の強さではなく、1日に何時間を確保できるかで決まります。
- 1ヶ月
- 3級の内容がほぼ完璧な状態で、1日5〜7時間を毎日確保できる場合に限って成立します。短時間で効率よくではなく、単純に1日の量を積み増す方法しかありません。
- 2ヶ月
- 1日3時間強。社会人でも繁忙期を外し、週末に6〜8時間を確保できるなら射程に入ります。工業簿記を後半に回すと間に合わなくなるため、1ヶ月目の途中で着手します。
- 3ヶ月
- 1日2〜2.5時間。3級から2級への接続としては最も標準的で、破綻しにくい長さです。
- 半年以上
- 1日1時間以下の人向け。ただし後半は前半に学んだ商業簿記を忘れる負担が増えるため、復習の比率を意識的に上げる設計が要ります。
逆に、1日30分で1年かける計画はおすすめしません。商業簿記を終える頃に序盤の仕訳を忘れ、学び直しに数十時間を払うことになるからです。同じ200時間なら、期間を短くまとめたほうが実質的な負担は軽くなります。1日1時間以上が計画の下限だと考えてください。
試験日から逆算して開始時期を決める
統一試験(ペーパー方式)を受けるなら、試験日が先に決まっているぶん逆算が容易です。日商簿記2級の統一試験は年3回、6月・11月・2月の日曜日に実施されます。1日1.5〜2時間で進める前提なら、11月中旬の回は7月下旬から、2月下旬の回は10月下旬から、6月中旬の回は2月中旬から始めれば間に合う計算になります。日程は変更されることがあるため、申込前に商工会議所の公式サイトで最新情報を確認してください。試験日と申込時期の詳細は簿記2級の試験日にまとめています。
ネット試験(CBT方式)を選ぶなら、この逆算はそもそも不要になります。テストセンターの営業日に随時受験できるため、仕上がった時点で試験日を予約するという順序にできるからです。模試で安定して70点台を超えた週に予約を入れれば、「あと2週間あれば受かったのに」という取りこぼしが消えます。3級をネット試験で受けた人なら操作にも慣れているはずで、3級から2級へ最短で進みたいならこちらが有利です。
簿記3級から2級で難易度はどれだけ上がるのか
3級から2級への難易度の上がり方は、勉強時間の比だけを見ると2〜3倍ですが、受験者が感じる体感差はそれ以上になります。数字と体感の両方から、この落差の正体を確認します。
合格率で見る難易度の差
合格率は難易度を測る最も分かりやすい指標です。3級と2級では次のように開きます。
| 級・方式 | 合格率の目安 |
|---|---|
| 3級 統一試験 | 33〜34%台 |
| 3級 ネット試験 | 年度平均 40.8% |
| 2級 統一試験 | 15〜30%(直近は15.1%) |
| 2級 ネット試験 | 年度平均 32.9% |
2級の統一試験は回によって10ポイント以上動き、10%台前半に沈む回も定期的に発生します。同じ実力でも、当たる回によって合否がひっくり返りうるのが2級の統一試験の性格です。一方でネット試験は回ごとの振れが小さく、年度平均32.9%と3級のネット試験40.8%に対して極端な差ではありません。3級の合格率と比べて「2級は15%しかない」と身構える必要はなく、実態に近いのは30%台のほうです。合格率の推移や低い理由の詳細は簿記2級の合格率で扱っています。
難易度が上がる3つの要因
合格率が落ちる原因は、次の3つに分解できます。どれも3級には無かった負荷です。
- 科目が1つ増える — 工業簿記が丸ごと追加されます。範囲が広がるのではなく、原価計算という別の考え方を新たに立ち上げることになります。
- 商業簿記側の論点が重くなる — 連結会計・税効果会計・外貨建取引など、企業グループや税務を前提とした処理が入ります。1論点あたりの理解コストが3級の数倍です。
- 試験時間あたりの処理量が増える — 3級が60分3題だったのに対し、2級は90分5題。1題あたりに使える時間は減り、解く順番の判断が点数に直結します。
逆にいえば、難易度が上がる理由はひとつも「3級の内容が難しくなるから」ではないということです。3級で身につけた仕訳の技術はそのまま通用します。上がるのは、その技術を使って処理しなければならない対象の複雑さと量です。
「2級はむずすぎる」と言われるときに起きていること
3級から2級へ進んだ人が難しいと感じるタイミングは、驚くほど共通しています。最初の壁は連結会計、次の壁は工業簿記の原価の流れ、そして最後の壁が90分で5題を解き切る時間配分です。この3つはいずれも、テキストを読む量を増やしても解消しません。連結会計はタイムテーブルを自分で書けるようになるまで、工業簿記は勘定連絡図を手で描けるようになるまで、時間配分は模試を90分計測で5回以上解くまで、それぞれ手を動かす以外の解決策がないからです。
難易度が高いと言われる試験ほど、つまずく場所が事前に分かっているという利点があります。3級から2級へ進む人は、この3つの壁に来ることを最初から知ったうえで時間を配分できる立場にあります。次章から、3級の知識のどこが通用し、どこで作り直しが必要になるのかを具体的に見ていきます。
3級の知識はどこまで通用するか — 引き継げるもの・作り直すもの
3級から2級へ進むときに最も無駄が出やすいのは、「もう一度3級からやり直したほうがいいのでは」と考えて時間を使ってしまうことです。結論として、3級のテキストを1周やり直す必要はありません。ただし、そのまま持ち込める部分と、2級用に作り直しが必要な部分ははっきり分かれます。
そのまま持ち込める土台
次の知識は2級でも前提として使われ続けるため、3級で身につけた状態のまま資産になります。
- 複式簿記の原則と仕訳の書き方 — 借方と貸方に同じ金額を記録する構造は、2級でも1級でも変わりません。
- 5要素(資産・負債・純資産・収益・費用)の増減と記入位置 — 新しい勘定科目が出てきても、この判断ができれば仕訳の形は決まります。
- 転記と試算表・貸借対照表・損益計算書の関係 — 2級では作成する財務諸表が精緻になりますが、帳簿から決算書へ至る流れは同じです。
この3つが安定していれば、2級で登場する新しい勘定科目は「知らない名前が増えただけ」として処理できます。仕訳そのものの考え方に不安が残っている人は、簿記3級の仕訳で基本形を確認してから2級のテキストに入ってください。
2級用に作り直しが必要になる部分
一方で、3級では簡易な形で済んでいたために、2級で正面から作り直しになる論点があります。3級で「なんとなく解けていた」まま通過した人ほど、ここで止まります。
- 決算整理
- 貸倒引当金・減価償却・経過勘定は3級でも扱いますが、2級では税効果会計や資産除去債務が絡み、決算整理事項の数そのものが増えます。3級レベルの処理が反射で出てこないと総合問題で時間が足りません。
- 有価証券
- 3級では出てこない売買目的・満期保有目的・子会社株式などの区分が入り、区分ごとに期末評価の処理が変わります。実質的に新規論点です。
- 純資産
- 3級の個人商店的な資本の扱いから、株式会社の資本金・資本剰余金・利益剰余金へと構造が変わります。株主資本等変動計算書も新たに登場します。
- 商品売買
- 3級の三分法に加え、売上原価対立法など複数の記帳方法が問われます。同じ取引でも記帳方法によって仕訳が変わる、という感覚を持つ必要があります。
3級の復習は「解いて詰まった論点だけ」に絞る
効率のよい復習手順は決まっています。まず2級のテキストに入る前に、3級の仕訳問題を30〜50問だけ解いてください。そこで手が止まった論点のテキストにだけ戻り、それ以外は復習しない。この方法なら、3級の総復習に使う時間は5〜10時間で足ります。3級合格から日が浅い人ほど、この工程は短く済みます。
逆にやってはいけないのが、不安を理由に3級のテキストを最初のページから読み直すことです。2級の学習時間を30〜40時間削ってしまううえ、読み直しでは手が動かないため実力も戻りません。3級の復習は読むのではなく解いて特定するのが原則です。日々の仕訳演習を続ける習慣そのものは、2級の学習期間を通じて維持してください。
工業簿記の壁 — 3級経験者が最初につまずく場所
3級から2級への学習で、最も性質が違うのが工業簿記です。追加200時間のうち約70時間を占めるだけでなく、試験でも第4問・第5問の40点分を担当します。合格基準が70点である以上、工業簿記を捨てて合格することは事実上できません。
商業簿記との違い — 「記録」から「計算」へ
3級で学んだ商業簿記は、外部との取引をそのまま記録する作業でした。商品を仕入れた、代金を払った、という事実が先にあり、それを仕訳に翻訳します。これに対して工業簿記が扱うのは、工場の中で材料が仕掛品になり製品になっていく社内の流れです。外部との取引がないところで金額を動かすため、「いくらで記録するか」を自分で計算して決める場面が出てきます。
3級経験者が最初に戸惑うのはここです。3級では請求書や領収書に相当する金額が問題文に書いてあり、それを写せば仕訳ができました。工業簿記では、材料費を消費した金額も、製品1個あたりの原価も、配賦の計算を経て初めて確定します。記録の技術は同じでも、記録する数字を作る工程が手前に増えるということです。
つまずきの正体は勘定連絡図
工業簿記でつまずく人のほとんどは、個々の仕訳ではなく勘定と勘定のつながりを見失っています。材料・労務費・経費が仕掛品に集まり、完成したものが製品へ移り、売れたものが売上原価になる。この一本の流れを勘定連絡図として自分の手で描けるかどうかが、工業簿記の理解度をそのまま表します。
対策は単純で、テキストの勘定連絡図を眺めるのをやめ、白紙に自分で描くことです。描けるようになると、第4問で問われているのが流れのどの位置なのかが即座に分かるようになり、個別原価計算・総合原価計算・部門別計算といった論点が「同じ流れの別の切り口」として整理されます。逆にここを飛ばして問題演習に入ると、パターンを暗記しては忘れる状態から抜け出せません。
工業簿記に着手するタイミング
工業簿記は3級に無い科目なので後回しにされがちですが、これは最も失敗しやすい配分です。理解に時間がかかる一方、いったん腑に落ちると得点が安定しやすく、商業簿記より少ない時間で満点圏に届く科目でもあります。3級から2級へ進むときの標準的な順序は、商業簿記のテキストを1周終えた直後、学習開始から1〜2ヶ月目に工業簿記へ着手することです。
直前1ヶ月で詰め込む計画にすると、原価計算の考え方が固まらないまま本番を迎え、40点分を失います。工業簿記の主要論点である標準原価計算やCVP分析は、個別の解説記事で先に全体像をつかんでおくと立ち上がりが速くなります。
3級合格直後の30日プラン — 接続を切らさない進め方
3級から2級への移行で最も失敗しやすいのは、教材選びでも勉強法でもなく空白期間を作ってしまうことです。合格発表を待ち、参考書を吟味し、気づけば2ヶ月が経っている — この間に仕訳の反射が鈍り、再開時に20〜30時間を余分に払うことになります。ここでは、3級の試験が終わった翌週から始められる最初の30日の設計を示します。
最初の4週間で何をするか
この30日の目的は、2級の学習を軌道に乗せることと、3級で身についた学習習慣を途切れさせないことの2つです。1日1.5〜2時間を前提にしています。
第1週は3級の仕訳問題を50問ほど解き、詰まった論点だけをテキストで拾い直します。ここで新しい教材を買う必要はありません。第2週から2級の商業簿記のテキストに入り、3級との差分である株式会社会計の勘定科目を中心に読み進めます。第3週は読んだ範囲の個別問題を解いて定着させ、有価証券の区分ごとの処理をここで整理します。そして第4週には工業簿記に着手し、勘定連絡図を白紙に描くところまで進めます。
30日終了時点の到達目標
この30日を終えた時点での累計は、1日1.5〜2時間なら45〜60時間です。到達しているべき状態は次のとおりです。
- 3級範囲の仕訳が反射で書ける状態に戻っている
- 2級商業簿記のテキストを半分以上読み終えている
- 工業簿記の勘定連絡図を、テキストを見ずに描ける
- 毎日決まった時間に机に向かう習慣が途切れていない
この4つが達成できていれば、残り140〜150時間の見通しが立ちます。逆に商業簿記のテキストが3分の1も進んでいない場合は、1日の勉強時間が計画より短いか、読むことに時間を使いすぎているかのどちらかです。前者なら期間を伸ばし、後者ならテキストを読み切る前に問題を解く方向へ切り替えてください。
毎日の仕訳演習を止めない
30日プランでも、その後の学習でも、通して守るべき原則が1つあります。毎日、少なくとも10問は仕訳を解くことです。工業簿記のインプット期間に商業簿記から完全に離れると、戻ってきたときに仕訳の精度が落ちています。1日10問なら10分程度で終わるので、テキストを読む日でも並走させてください。簿記3級の練習問題で扱った基本論点は、この日々の演習の素材としてそのまま使えます。
ブランクが空いた人の立て直しと再スタートの勉強時間
3級に合格したのが1年前、あるいは学生時代に取ったきり — という状態から2級を目指す人も少なくありません。この場合に必要な勉強時間は、合格直後から進む人の150〜250時間に対して、20〜40時間ほど上乗せして見積もるのが現実的です。ここではブランク別の立て直し方を整理します。
ブランク別に必要な追加時間
| 3級合格からの期間 | 追加で必要な時間 | やるべきこと |
|---|---|---|
| 3ヶ月以内 | ほぼ不要 | 仕訳問題30問で確認するだけ |
| 半年〜1年 | 10〜20時間 | 仕訳と決算整理を解き直す |
| 1〜3年 | 20〜30時間 | 3級テキストを論点別に拾い読み |
| 3年以上 | 30〜40時間 | 3級の総合問題を1回通しで解く |
ブランクが長い人が陥りやすいのが、「もう一度3級を受け直すべきか」という迷いです。受け直す必要はありません。3級の合格に有効期限はなく、2級の受験にも資格要件はないため、必要なのは知識を戻すことだけです。試験を受け直す時間と受験料をかけるより、2級の学習に組み込んで戻すほうが確実に速く進みます。
忘れているかどうかを測る方法
どれだけ忘れているかは、次の3つを解いてみれば分かります。いずれも3級の中核で、2級の総合問題で前提として使われる論点です。
3問とも手が止まらずに書けたなら、ブランクは実質的にありません。そのまま2級のテキストに入って構いません。1問でも詰まったなら、その論点の周辺だけを3級の教材で拾い直してください。簿記3級の決算で扱う決算整理は2級の総合問題でもそのまま問われるので、ここが弱い自覚がある人は優先的に戻す価値があります。
再スタート時に教材を買い直すべきか
3級のテキストは手元にあれば使い続けて問題ありません。ただし2級の教材は、試験範囲の改定に対応した最新年度版を用意してください。簿記の出題範囲は毎年見直され、級をまたいで論点が移動することがあるためです。古い教材で学ぶと、すでに範囲外になった論点に時間を使ったり、追加された論点を学ばないまま本番を迎えたりする危険があります。範囲の改定内容は商工会議所の公式サイトで公表されるので、教材購入前に一度確認しておくと安心です。
知恵袋で多い「3級から2級」の疑問に答える
簿記3級から2級への勉強時間については、知恵袋のようなQ&Aサイトにも同じ質問が繰り返し投稿されています。回答は体験談が中心のため数字の幅が大きく、そのまま自分の計画に使うと見積もりを誤りがちです。ここでは頻出の質問を取り上げ、これまでの章で示した基準に沿って整理します。
「3級から2級は100時間で足りますか」
足りないと考えてください。知恵袋の回答には「100時間で受かった」という書き込みも見られますが、その多くは3級合格直後で毎日学習を継続していた人か、経理実務の経験がある人です。工業簿記に約70時間、商業簿記の新論点に約100時間が必要という内訳を踏まえると、100時間では模試の演習に入る前に本番が来ます。下限は150時間と考え、それ未満で受かった話は例外として扱うのが安全です。
「独学と通信講座でどちらが早いですか」
総時間の差は、多くの人が期待するほど大きくありません。講座を使うと理解までの遠回りが減るぶん、150〜250時間の下限側に寄りやすくはなりますが、演習に必要な時間そのものは講座では短縮できないからです。3級を独学で合格できた人は、2級も独学で到達できる可能性が高いと考えて構いません。判断基準は費用対効果ではなく、連結会計と工業簿記を独力で理解しきれるかの一点です。第2週・第4週の学習で手応えがなければ、その時点で講座を検討すれば間に合います。
「2級は受からない人のほうが多いのでは」
統一試験の合格率15%前後という数字だけを見ると不安になりますが、この母数には準備不足のまま受験した層が含まれています。ネット試験の合格率が32.9%であること、そして受験者の大半がすでにネット試験を選んでいることを踏まえると、必要な総時間を確保した人の合格率はこの数字よりずっと高いと考えて差し支えありません。落ちる原因の大半は能力ではなく、総時間の不足と工業簿記の後回しです。
「3級を取ったが2級まで必要ですか」
目的次第です。経理職への就職・転職を考えているなら2級まで進む価値があります。求人の応募条件が2級で切られることが多く、3級で止めると選考の入口で不利になるためです。一方、決算書を読めるようになりたいという教養目的なら3級で目的は果たせています。この判断材料は簿記2級とはの解説にまとめてあるので、投資する200時間に見合うかを先に確認してください。
まとめ — 3級から2級は「間を空けない」ことが最大の近道
簿記3級から2級へ進むために必要な勉強時間は150〜250時間、1日2時間なら3〜4ヶ月が目安です。内訳は商業簿記の新論点に約100時間、工業簿記に約70時間、模擬試験に約30時間。難易度は学習量で2〜3倍に上がりますが、その理由は3級の内容が難しくなることではなく、工業簿記という新しい科目が加わり、商業簿記側にも連結会計などの重い論点が入るためです。
そして総時間を最も左右するのは、勉強法でも教材でもなく3級合格からどれだけ間を空けずに始めるかでした。合格発表を待つ間に2級のテキストを開いてしまえば下限の150時間側に寄り、1年空ければ20〜30時間を思い出しに払うことになります。3級の仕訳を50問解いて穴を特定し、2級の商業簿記へ進み、1〜2ヶ月目のうちに工業簿記へ着手する — この順序を守れば、3級から2級への接続で失敗する要素はほとんど残りません。
その土台にあるのは、結局のところ毎日の仕訳演習です。2級の新しい論点を学んでいる期間でも、1日10問の仕訳を続けている人は総合問題で崩れません。学猿の仕訳ドリルは、間違えた問題を自動で復習キューに戻す設計になっているので、通勤時間や休憩時間の10分をそのまま演習時間に変えられます。3級で身につけた手を動かす習慣を止めないまま、2級の200時間を積み上げていってください。

