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CVP分析とは?簡単にわかりやすく解説|損益分岐点・貢献利益・安全余裕率の求め方

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ここだけは押さえたい!
CVP分析とは、原価(Cost)・営業量(Volume)・利益(Profit)の関係を調べ、「あと何個売れば黒字になるか」を計算する手法です。固変分解と貢献利益の考え方から、損益分岐点売上高・目標利益達成売上高・安全余裕率の公式、数値例での計算手順、簿記2級第5問での問われ方まで簡単にわかりやすく解説します。

CVP分析とは — 「あと何個売れば黒字になるか」を計算する分析

CVP分析を簡単に一言でいうと

CVP分析とは、売上や生産の量が変わったときに原価と利益がどう動くかを調べ、「あと何個売れば黒字になるのか」「今の利益を1.5倍にするには売上がいくら必要か」を数字で答える分析手法です。簡単にいえば、会社の損益を「売った量」を軸に組み立て直して、黒字と赤字の境目がどこにあるかを見つける計算だと考えてください。

売上が増えれば利益も増える、というのは誰でも知っています。CVP分析が答えるのはその先です。売上が増えたときに利益は売上と同じ比率では増えません。売った量に比例して増える原価と、売れても売れなくても一定額かかる原価が混ざっているからです。この2種類の原価の混ざり方を解きほぐすと、売上高と利益の関係が1本の式で表せるようになります。その式を使って損益分岐点や必要売上高を逆算するのがCVP分析です。

使う道具は電卓と足し算・掛け算・割り算だけで、難しい理論は出てきません。それでいて「この商品は値下げしても採算が合うか」「新しく人を雇ったら何個多く売る必要があるか」といった、経営の現場でそのまま使える答えが出ます。簿記2級の工業簿記で学ぶ論点のなかでも、実務との距離がいちばん近い分野です。

CVPはCost・Volume・Profitの頭文字

CVPはCost(原価)・Volume(営業量)・Profit(利益)の頭文字を取ったものです。日本語では「原価・営業量・利益分析」と訳されます。3つの要素の関係を分析するのでCVP分析と呼ぶ、というだけの命名で、アルファベットの見た目ほど込み入った意味はありません。

C(Cost:原価)
製品を作り、売るためにかかる費用のすべて。材料費・人件費・工場の家賃・広告費などが含まれます。
V(Volume:営業量)
売った量や作った量のこと。販売数量で測ることも、売上高(金額)で測ることもあります。「操業度」と呼ぶこともあります。
P(Profit:利益)
売上高から原価を引いた残り。CVP分析では通常、営業利益を指します。

この3つのうち、CとPはVによって決まります。営業量が決まれば原価が決まり、原価が決まれば利益が決まる、という順番です。つまりCVP分析は「営業量を変えたら利益はどうなるか」という一方向の問いに答える道具であり、逆に「利益をこうしたいなら営業量はいくら必要か」と逆算することもできます。試験でも実務でも、この逆算のほうが圧倒的によく使われます。

損益分岐点分析とも呼ばれる — 呼び名の使い分け

CVP分析は損益分岐点分析とも呼ばれます。英語のBreak-even Point Analysisから「BEP分析」と表記されることもあります。厳密にいうと、損益分岐点分析は「利益がゼロになる点を求めること」に焦点を当てた呼び方で、CVP分析はそれを含むもっと広い枠組みです。目標利益を達成する売上高の逆算や、値下げ・固定費削減の影響を試算する感度分析まで含めてCVP分析と呼びます。

ただし実際には、ほとんどの教科書と試験問題でこの2つはほぼ同じ意味で使われています。損益分岐点を求める計算がCVP分析の中心であり、他の計算はその応用だからです。「CVP分析といわれたら損益分岐点まわりの計算のことだ」と理解しておけば、呼び名の違いで困ることはありません。

関連する用語として「限界利益分析」「変動損益計算」といった言い方もありますが、いずれも変動費と固定費を分けて損益を組み立てるという同じ発想に立っています。用語をいくつも覚える必要はなく、変動費と固定費に分けて考えるという一点さえ押さえれば全部つながります。次の章では、その分け方から見ていきます。

CVP分析の出発点 — 原価を変動費と固定費に分ける

CVP分析を始めるには、まず原価を変動費と固定費の2つに分類しなければなりません。この作業を固変分解(こへんぶんかい)といいます。損益計算書に並んでいる原価をそのまま眺めていても損益分岐点は出てきません。営業量との関係で切り直して初めて、売上と利益を結ぶ式が作れるようになります。CVP分析の精度は、この最初の分解の正しさでほぼ決まります。

変動費と固定費の違いと具体例

分け方の基準はただ1つ、営業量が増えたときに総額が増えるかどうかです。増えるものが変動費、増えないものが固定費です。よく使われる例を並べます。

区分性質具体例
変動費営業量に比例して総額が増える材料費、商品の仕入原価、外注加工賃、出来高払いの賃金、販売手数料、発送運賃
固定費営業量に関係なく一定額かかる工場や店舗の家賃、機械の減価償却費、正社員の給料、保険料、広告宣伝費の定額分

注意したいのは、変動費か固定費かは費用の名前では決まらないという点です。同じ「人件費」でも、月給制の社員なら固定費、生産量に応じて支払うパート賃金なら変動費になります。同じ「電力料」でも、基本料金部分は固定費、使用量に応じた従量料金部分は変動費です。費用の名称ではなく支払いの仕組みを見て判断してください。

もう1つ、1個あたりで見るか総額で見るかで印象が逆転することも押さえておきましょう。変動費は総額では営業量に比例して増えますが、1個あたりの金額は一定です。固定費は総額では一定ですが、1個あたりの金額は作れば作るほど下がります。CVP分析では原則として総額で考えます。「1個あたり固定費」は計算の途中で出てきても、営業量が変われば動いてしまう数字なので、そのまま使うと誤答のもとになります。

固変分解のやり方 — 高低点法と勘定科目精査法

実際の原価には、変動費と固定費が混ざったもの(準変動費)が必ずあります。それを機械的に分ける代表的な方法が次の2つです。

勘定科目精査法(費目別精査法)
勘定科目を1つずつ見て、経験と実態から変動費・固定費に振り分ける方法。実務でもっとも広く使われますが、判断する人によって結果が変わります。
高低点法
過去の実績データのうち、営業量が最大の月と最小の月の2点だけを取り出し、その2点を結ぶ直線から変動費率と固定費を求める方法。計算が単純で、簿記2級でも問われます。

高低点法の計算はシンプルです。営業量が最大の月の原価が420,000円(生産1,200個)、最小の月が300,000円(生産600個)だったとします。差額の120,000円は、増えた600個分の変動費です。

変動費率=420,000300,0001,200600=120,000600=200 円/個\text{変動費率} = \frac{420{,}000 - 300{,}000}{1{,}200 - 600} = \frac{120{,}000}{600} = 200\ \text{円/個}

1個あたりの変動費が200円とわかったので、どちらかの月に当てはめて固定費を逆算します。最大の月なら、420,000円 − 200円 × 1,200個 = 180,000円が固定費です。最小の月で計算しても300,000円 − 200円 × 600個 = 180,000円となり、一致します。両方の点で計算して同じ固定費が出るかを確かめるのが、そのまま検算になります。

なお高低点法で使う「最大・最小」は原価の額ではなく営業量の最大・最小です。ここを取り違えると答えが合いません。また、正常な操業範囲から外れた異常値(災害で止まった月など)は除外してから2点を選びます。より精密に分けたい場合は全データを使う最小二乗法(回帰分析)を用いますが、簿記2級で計算まで求められるのは高低点法までです。

CVP分析が置いている前提を知っておく

CVP分析は、現実を思い切って単純化したうえで成り立っています。前提を知らないまま結果だけを信じると判断を誤るので、次の4点は頭に入れておいてください。

  • 原価は営業量に対して直線的に動く。実際には大量発注で単価が下がったり、残業代で単価が上がったりしますが、分析上は無視します。
  • 販売単価は数量が変わっても一定。値引きして数を売る場合は、その条件で計算し直す必要があります。
  • 生産量と販売量が等しい。在庫が増減すると全部原価計算の利益とずれが生じます。この論点は直接原価計算の固定費調整で扱います。
  • 分析の対象は正常な操業範囲内。工場をもう1つ建てるような規模の変化になると、固定費そのものが階段状に跳ね上がります。

3つ目にある通り、CVP分析は直接原価計算とセットで使われます。原価を変動費と固定費に分けたうえで変動費だけを製品原価にするのが直接原価計算で、その分解結果をそのまま流用して損益分岐点を出すのがCVP分析、という関係です。試験でも「直接原価計算損益計算書を作らせてから、その数値でCVP分析させる」という出題が定番になっています。

貢献利益(限界利益)— CVP分析の主役

固変分解ができたら、次に計算するのが貢献利益です。CVP分析の公式は数本ありますが、そのすべてが貢献利益から派生しています。逆にいえば、貢献利益の意味さえつかめば公式を丸暗記する必要がなくなります。この章がCVP分析でいちばん大事な部分です。

貢献利益とは — 固定費を回収するための原資

貢献利益は、売上高から変動費を引いた金額です。限界利益と呼ばれることもあり、どちらの用語も同じものを指します。

貢献利益=売上変動費\text{貢献利益} = \text{売上高} - \text{変動費}

売上高から先に変動費だけを引くところがポイントです。ここで固定費を引かないのは、固定費が「売れた量とは無関係にすでに発生してしまっている費用」だからです。1個売るたびに追加でかかるのは変動費だけなので、1個売って手元に残るのは「売価 − 1個あたり変動費」の金額になります。この残りを全部の商品について足し上げたものが貢献利益であり、それがまとめて固定費の支払いに充てられます。

「貢献」という名前は、固定費の回収と利益の獲得にどれだけ貢献したかを表すという意味です。貢献利益が固定費より少なければ固定費を払いきれず赤字、ちょうど同額なら利益ゼロ、上回った分がそのまま営業利益になります。この関係を一枚にすると次のようになります。

売上から変動費を引いた貢献利益が固定費を回収する 売上高 4,000,000円(1,000円 × 4,000個) 変動費 2,400,000 貢献利益 1,600,000 貢献利益 1,600,000円の使いみち 固定費 1,200,000 営業利益 400,000 貢献利益が固定費を上回った分が営業利益になる 貢献利益 = 固定費 のときが損益分岐点
売上高はまず変動費と貢献利益に分かれ、その貢献利益が固定費を回収して、残った分が営業利益になる

図のとおり、売上高4,000,000円はまず変動費2,400,000円と貢献利益1,600,000円に分かれます。貢献利益1,600,000円のうち1,200,000円が固定費の回収に消え、残った400,000円が営業利益です。この2段階の分け方がCVP分析のすべてで、以降の公式はこの図を式に書き換えただけのものです。

貢献利益率と変動費率 — 割合で考えると計算が速くなる

金額のままでも計算はできますが、CVP分析では売上高に対する割合で考えるのが定石です。使う比率は次の2つで、足すと必ず100%になります。

変動費率=変動費売上高,貢献利益率=貢献利益売上高=1変動費率\text{変動費率} = \frac{\text{変動費}}{\text{売上高}}, \qquad \text{貢献利益率} = \frac{\text{貢献利益}}{\text{売上高}} = 1 - \text{変動費率}

先ほどの例では、変動費率は2,400,000 ÷ 4,000,000 = 60%、貢献利益率は1,600,000 ÷ 4,000,000 = 40%です。1個あたりで計算しても同じで、変動費600円 ÷ 売価1,000円 = 60%、貢献利益400円 ÷ 売価1,000円 = 40%となります。総額で計算しても1個あたりで計算しても比率は一致するので、問題文で与えられたほうを使えば構いません。

貢献利益率が意味するのは「売上が100円増えたときに営業利益が何円増えるか」です。貢献利益率40%なら、売上が100円増えれば営業利益は40円増えます。固定費は増えないので、増えた貢献利益がそのまま利益の増加になるからです。この読み方ができると、次の章の公式が「覚えるもの」ではなく「その場で作れるもの」に変わります。

売上総利益との違い — 引く費用の範囲が違う

貢献利益と混同しやすいのが、損益計算書に載っている売上総利益(粗利)です。式の形は似ていますが、引いている費用の範囲がまったく違います。

利益計算式引いている費用
売上総利益(粗利)売上高 − 売上原価製造原価のすべて(変動費・固定費を問わない)
貢献利益売上高 − 変動費変動費のすべて(製造原価か販売費かを問わない)

売上総利益は「製造か販売か」で切り、貢献利益は「変動か固定か」で切ります。切る向きが90度違うと考えてください。そのため、変動販売費(発送運賃や販売手数料など)は売上総利益では引かれませんが、貢献利益では引きます。この差はCVP分析の頻出ミスなので、変動費を集めるときは製造原価だけでなく販売費及び一般管理費の欄も必ず確認してください。売上高そのものの考え方に不安がある場合は売上の記事もあわせて確認しておくと、計算の土台が固まります。

損益分岐点の求め方 — 覚える公式は実質3本

貢献利益がわかれば、損益分岐点はもう目の前です。CVP分析の公式は教科書によって5本にも8本にも見えますが、本質は「固定費を貢献利益で割る」という1つの発想で、そこから派生する3本を押さえれば足ります。この章では、公式を暗記するのではなく作れるようにします。

損益分岐点とは — 利益がちょうどゼロになる点

損益分岐点(BEP:Break-even Point)とは、売上高と総原価がちょうど等しくなり、営業利益がゼロになる点です。ここを1円でも上回れば黒字、下回れば赤字になる境目なので、経営の目標を立てるときの基準になります。売上高を横軸、金額を縦軸に取って、売上高線と総原価線を引いたときの交点が損益分岐点です。この図を損益分岐点図表(CVPチャート)といいます。

売上高線と総原価線が交わる点が損益分岐点 金額 売上高 総原価 固定費 1,200,000 損失 利益 損益分岐点 売上高3,000,000円
総原価線は固定費1,200,000円の高さから始まり、売上高線と交わる売上高3,000,000円が損益分岐点。左側が損失、右側が利益になる

図で確かめておきたいのは、総原価線がゼロからではなく固定費の高さから始まることです。売上がまったくなくても固定費1,200,000円はかかるので、そのぶん総原価線が持ち上がっています。この持ち上がりがあるために2本の線は途中で交わり、交点より左では総原価が売上高を上回って損失、右では売上高が総原価を上回って利益になります。固定費が重い会社ほど総原価線のスタートが高くなり、交点は右へ動きます。

損益分岐点売上高と損益分岐点販売量

損益分岐点は「貢献利益がちょうど固定費と同額になる点」でもあります。前の章の図でいえば、貢献利益の帯が固定費だけで埋まり、営業利益の帯がゼロになる状態です。式にすると次のようになります。

損益分岐点売上=固定費貢献利益率,損益分岐点販売量=固定費1個あたり貢献利益\text{損益分岐点売上高} = \frac{\text{固定費}}{\text{貢献利益率}}, \qquad \text{損益分岐点販売量} = \frac{\text{固定費}}{\text{1個あたり貢献利益}}

2本に見えますが、やっていることは同じです。固定費を「1単位あたりの回収力」で割ると、回収しきるのに必要な単位数が出るという割り算にすぎません。金額で回収力を測れば貢献利益率、個数で測れば1個あたり貢献利益になる、という違いだけです。

先ほどの例(販売単価1,000円・1個あたり変動費600円・固定費1,200,000円)で確かめます。貢献利益率は40%なので、損益分岐点売上高は1,200,000 ÷ 0.4 = 3,000,000円です。販売量で求めるなら1個あたり貢献利益400円を使って1,200,000 ÷ 400 = 3,000個となり、3,000個 × 1,000円 = 3,000,000円で売上高の答えと一致します。どちらの式で解いても必ず同じ点を指すので、問題文が金額で聞いてきたら前者、数量で聞いてきたら後者を選べば計算が最短になります。

目標利益達成売上高 — 固定費に目標利益を足すだけ

実務で本当に知りたいのは、利益ゼロの点ではなく「目標の利益を出すにはいくら売ればよいか」です。これも新しい発想は要りません。目標利益を「もう1つの固定費」とみなして足すだけで求まります。

目標利益達成売上高=固定費+目標営業利益貢献利益率\text{目標利益達成売上高} = \frac{\text{固定費} + \text{目標営業利益}}{\text{貢献利益率}}

目標営業利益を400,000円とするなら、(1,200,000 + 400,000) ÷ 0.4 = 4,000,000円です。貢献利益で固定費と目標利益の両方を回収しきる、と考えれば式を思い出す必要すらありません。

やや形が変わるのが、金額ではなく目標営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)で指定されるパターンです。目標利益が売上高に連動して動くため、分母のほうから差し引きます。

目標利益率達成売上高=固定費貢献利益率目標営業利益率\text{目標利益率達成売上高} = \frac{\text{固定費}}{\text{貢献利益率} - \text{目標営業利益率}}

目標営業利益率を10%とすると、1,200,000 ÷ (0.4 − 0.1) = 4,000,000円となります。検算は必ず行ってください。売上高4,000,000円なら貢献利益は1,600,000円、そこから固定費1,200,000円を引いて営業利益400,000円、これは売上高の10%です。求めた売上高を変動損益計算の形に戻して営業利益を再計算するという検算のクセをつけておくと、本試験で公式の形を取り違えても自力で気づけます。

数字で追うCVP分析 — 資料から答えまで通しで解く

公式を並べただけでは本試験で手が止まります。ここでは資料の読み取りから最終的な答えまで、実際の出題に近い形で通して解いてみます。手を動かせる方は電卓を用意して、読みながら一緒に計算してください。

資料 — 与えられた原価を区分する

ある製品を製造・販売しているA社の当期のデータは次のとおりです。販売単価は2,500円、当期の販売量は5,000個で、生産量と販売量は等しいものとします。

費目金額・単価区分
直接材料費800円/個変動費
直接労務費(出来高払い)300円/個変動費
変動製造間接費200円/個変動費
固定製造間接費1,800,000円固定費
変動販売費200円/個変動費
固定販売費及び一般管理費1,200,000円固定費

本試験ではここまで親切に「変動費」「固定費」と書かれていないこともあり、「〜は営業量に応じて発生する」といった文章から自分で判断させられます。判断の基準は前の章のとおり、営業量に比例するかどうかの一点です。ここでは変動販売費200円が製造原価ではなく販売費の欄にある点に注意してください。この200円を拾い忘れるのが、CVP分析でもっとも多い失点パターンです。

ステップ1 — 1個あたり貢献利益と貢献利益率を出す

変動費を1個あたりで合計します。直接材料費800円 + 直接労務費300円 + 変動製造間接費200円 = 1,300円が変動製造原価、これに変動販売費200円を足して1個あたり変動費は1,500円です。

1個あたり貢献利益=2,5001,500=1,000 円,貢献利益率=1,0002,500=40%\text{1個あたり貢献利益} = 2{,}500 - 1{,}500 = 1{,}000\ \text{円}, \qquad \text{貢献利益率} = \frac{1{,}000}{2{,}500} = 40\%

固定費も合計しておきます。固定製造間接費1,800,000円 + 固定販売費及び一般管理費1,200,000円 = 3,000,000円です。CVP分析では固定費を製造とそれ以外に分ける必要はなく、まとめて1つの数字として扱います。この時点で、あとの計算に使う数字は「1個あたり貢献利益1,000円」「貢献利益率40%」「固定費3,000,000円」の3つだけになりました。

ステップ2 — 変動損益計算書の形に組み立てる

数字を貢献利益の順番に並べ直したものが変動損益計算書です。当期の実績5,000個で作ると次のようになります。

項目1個あたり合計(5,000個)売上高比
売上高2,500円12,500,000円100%
変動費1,500円7,500,000円60%
貢献利益1,000円5,000,000円40%
固定費3,000,000円24%
営業利益2,000,000円16%

固定費と営業利益の欄が「1個あたり」で空欄になっているのが重要です。固定費は販売量が変わっても総額が動かないため、1個あたりの数字を作っても次の計算に使えません。逆に売上高・変動費・貢献利益は1個あたりが一定なので、販売量を掛ければどの水準の損益でも即座に作れます。この表さえ作れば、以降の問いはすべてこの表の読み替えで答えられます。

ステップ3 — 損益分岐点と目標売上高を求める

損益分岐点は固定費を貢献利益で回収しきる点でした。

損益分岐点販売量=3,000,0001,000=3,000 個,損益分岐点売上高=3,000,0000.4=7,500,000 円\text{損益分岐点販売量} = \frac{3{,}000{,}000}{1{,}000} = 3{,}000\ \text{個}, \qquad \text{損益分岐点売上高} = \frac{3{,}000{,}000}{0.4} = 7{,}500{,}000\ \text{円}

3,000個 × 2,500円 = 7,500,000円なので、2つの答えは一致しています。当期は5,000個売れているので、損益分岐点を2,000個上回っており黒字です。

次に目標営業利益3,000,000円を達成する売上高を求めます。固定費に目標利益を足して貢献利益率で割ります。

3,000,000+3,000,0000.4=15,000,000 円 (=6,000 個)\frac{3{,}000{,}000 + 3{,}000{,}000}{0.4} = 15{,}000{,}000\ \text{円}\ (= 6{,}000\ \text{個})

最後に、目標営業利益25%を達成する売上高です。利益が売上高に連動するので、貢献利益率から目標利益率を差し引いた0.15で割ります。

3,000,0000.40.25=20,000,000 円 (=8,000 個)\frac{3{,}000{,}000}{0.4 - 0.25} = 20{,}000{,}000\ \text{円}\ (= 8{,}000\ \text{個})

検算のしかた — 変動損益計算書に戻す

答えが出たら、必ず変動損益計算書の形に戻して確かめてください。目標利益率25%の答え20,000,000円で検算します。売上高20,000,000円に対して貢献利益率40%なので貢献利益は8,000,000円、そこから固定費3,000,000円を引いて営業利益は5,000,000円です。5,000,000 ÷ 20,000,000 = 25%で、たしかに目標を達成しています。

この検算は10秒程度で終わるうえ、公式の分母を取り違えるという致命的なミスを確実に潰せます。CVP分析の問題は前問の答えを次の問いで使う連鎖型が多く、最初の1つを間違えると芋づる式に失点します。1問ごとに検算を挟む解き方を習慣にしておいてください。ここで作った変動損益計算書は、そのまま直接原価計算損益計算書と同じ形をしています。両者は別々の論点ではなく、同じ表を別の目的で使っているだけです。

安全余裕率と損益分岐点比率 — 会社の余力を測る

損益分岐点そのものは金額でしか表せないため、規模の違う会社どうしを比べられません。そこで、今の売上高が損益分岐点からどれだけ離れているかを割合で表す指標が使われます。CVP分析の結果を経営判断に結びつけるのがこの章の指標で、簿記2級でも計算を求められます。

安全余裕率 — 売上が何%落ちたら赤字になるか

安全余裕率(安全余裕度・安全率)は、実際の売上高が損益分岐点売上高をどれだけ上回っているかを、実際の売上高に対する割合で示したものです。

安全余裕率=売上損益分岐点売上売上×100\text{安全余裕率} = \frac{\text{売上高} - \text{損益分岐点売上高}}{\text{売上高}} \times 100

この記事で使ってきた例(貢献利益率40%・固定費1,200,000円・実際売上高4,000,000円)で計算します。損益分岐点売上高は3,000,000円でしたから、(4,000,000 − 3,000,000) ÷ 4,000,000 × 100 = 25%です。読み方は単純で、売上が今より25%落ちると赤字に転落するという意味になります。

売上高のうち損益分岐点を上回る部分が安全余裕 実際の売上高 4,000,000円 損益分岐点売上高 3,000,000円 安全余裕 1,000,000円 損益分岐点比率 75% 安全余裕率 25% 2つを足すと必ず100%になる
実際の売上高4,000,000円のうち3,000,000円までは固定費と変動費の回収に消え、残る1,000,000円が赤字までの余裕になる

安全余裕率が高いほど、売上が落ちても赤字になりにくい体質だといえます。景気変動や取引先の減少といった外部要因に対する耐久力を測る指標なので、経営者が最初に見る数字の1つです。一般に10%を下回ると危険水域、20%を超えていれば比較的安定していると評価されますが、業種によって水準が大きく違うため、同業他社や自社の過去の数字と比べて判断します。

損益分岐点比率 — 安全余裕率の裏返し

損益分岐点比率は、損益分岐点売上高が実際の売上高に占める割合です。

損益分岐点比率=損益分岐点売上高売上高×100=100%安全余裕率\text{損益分岐点比率} = \frac{\text{損益分岐点売上高}}{\text{売上高}} \times 100 = 100\% - \text{安全余裕率}

例では3,000,000 ÷ 4,000,000 × 100 = 75%です。図で確認したとおり、損益分岐点比率と安全余裕率を足すと必ず100%になります。同じことを裏表から言っているだけなので、どちらか一方を計算すればもう一方は引き算で出ます。試験で「損益分岐点比率を求めよ」と出たら、安全余裕率を出してから100から引いても構いません。

意味の向きは逆で、損益分岐点比率は低いほど良い指標です。今の売上高のうち75%が損益トントンに達するまでに必要、という読み方になるため、この比率が90%を超えていると売上のわずかな落ち込みで赤字になります。固定費の重い設備産業では高く、固定費の軽い小売や卸では低く出やすい傾向があります。

経営レバレッジ係数 — 売上の変化が利益を何倍に増幅するか

もう1つ、CVP分析から導かれる指標に経営レバレッジ係数があります。貢献利益を営業利益で割ったもので、売上高が1%変化したときに営業利益が何%変化するかを表します。

経営レバレッジ係数=貢献利益営業利益=1安全余裕率\text{経営レバレッジ係数} = \frac{\text{貢献利益}}{\text{営業利益}} = \frac{1}{\text{安全余裕率}}

例では貢献利益1,600,000円 ÷ 営業利益400,000円 = 4倍です。安全余裕率25%の逆数と一致しています。これは、売上が10%増えれば営業利益は40%増え、売上が10%減れば営業利益は40%減るという意味です。実際に確かめると、売上が10%増えて4,400,000円になったときの貢献利益は1,760,000円、固定費1,200,000円を引いて営業利益は560,000円。400,000円から160,000円増えており、たしかに40%の増加です。

係数が大きい会社は、好況期には利益が跳ね上がる一方、不況期には一気に赤字に沈みます。固定費の比率が高いほど係数が大きくなるため、この数字は事業のリスクの大きさをそのまま表していると読めます。安全余裕率・損益分岐点比率・経営レバレッジ係数の3つは、どれも同じ1組のデータから計算できる兄弟のような指標です。

感度分析 — 打ち手によって損益分岐点はどう動くか

ここまでは現状の数字を分析してきました。CVP分析が経営で力を発揮するのはこの先で、「単価を上げたら」「固定費を削ったら」と条件を変えて結果を試算する使い方です。これを感度分析といいます。同じ10%の改善でも、どこを動かすかで効き目がまるで違うことが数字で見えます。

4つの打ち手を同じ条件で比べる

販売単価1,000円・1個あたり変動費600円・固定費1,200,000円・販売量4,000個(営業利益400,000円)を出発点に、それぞれ10%だけ改善したときの結果を並べます。

打ち手損益分岐点販売量営業利益(4,000個)
現状3,000個400,000円
販売単価を10%上げる(1,100円)2,400個800,000円
1個あたり変動費を10%下げる(540円)約2,609個640,000円
固定費を10%減らす(1,080,000円)2,700個520,000円
販売量を10%増やす(4,400個)3,000個(変わらない)560,000円

営業利益への効き目は、値上げ(+100%)> 変動費削減(+60%)> 販売量の増加(+40%)> 固定費削減(+30%)の順になりました。値下げして数を売る戦略が語られがちですが、数字の上では逆で、単価を上げるほうがはるかに強く効きます。

なぜ値上げがいちばん効くのか

理由は貢献利益への効き方の違いにあります。単価を100円上げても変動費は増えないので、上げた100円がまるごと1個あたり貢献利益に乗ります。貢献利益は400円から500円へ25%も増える計算です。一方、変動費を10%下げても減るのは60円だけなので、貢献利益は460円までしか増えません。固定費の削減にいたっては貢献利益がまったく変わらず、減った120,000円がそのまま利益に足されるだけです。

値上げがもっとも効くのは、貢献利益という「1個あたりの稼ぐ力」そのものを引き上げる打ち手だからです。逆にいえば、値下げは同じ理屈で利益を強烈に削ります。単価を10%下げて900円にすると1個あたり貢献利益は300円に落ち、損益分岐点は1,200,000 ÷ 300 = 4,000個へ跳ね上がります。現在の販売量4,000個がちょうど損益分岐点になり、利益はゼロです。10%の値下げを埋め合わせるには、売上数量を33%増やさなければなりません。安易な値下げが危険であることが、CVP分析では一目でわかります。

値上げの落とし穴 — 販売量の減少をどこまで許容できるか

もっとも、値上げすれば販売量が落ちるのが普通です。この「どこまで落ちても大丈夫か」も、CVP分析ならすぐ逆算できます。単価1,100円のとき1個あたり貢献利益は500円ですから、現状と同じ営業利益400,000円を維持するのに必要な販売量は次のとおりです。

1,200,000+400,000500=3,200 個\frac{1{,}200{,}000 + 400{,}000}{500} = 3{,}200\ \text{個}

つまり、10%の値上げによって販売量が4,000個から3,200個まで、20%落ちても利益は現状を維持できるという結論になります。この20%という数字を持ったうえで「値上げして客が2割も減るだろうか」と考えれば、判断の質が上がります。値上げの是非を感覚で議論するのではなく、許容できる減少幅を先に計算してから議論するのが、CVP分析の正しい使い方です。

固定費と変動費のバランス — コスト構造そのものを選ぶ

感度分析をもう一段進めると、費用を固定費で持つか変動費で持つかという選択にたどり着きます。たとえば自社工場を建てれば固定費が増える代わりに1個あたり変動費は下がり、外注に切り替えれば固定費は減るが変動費は上がります。どちらが有利かは売れる量次第です。

  • 固定費型(自社生産・正社員中心):貢献利益率が高く、損益分岐点を超えたあとの利益の伸びが大きい。ただし損益分岐点そのものが高く、売上が落ちたときの赤字も深い。経営レバレッジ係数が大きくなります。
  • 変動費型(外注・出来高払い中心):貢献利益率は低いが損益分岐点が低く、売上が落ちても赤字になりにくい。売れても利益が伸びにくいのが弱点です。

需要が読める安定した事業なら固定費型、先が見えない新規事業なら変動費型が定石とされるのは、この関係が背景にあります。CVP分析は損益分岐点を求めるだけの計算に見えて、実際には事業の構え方そのものを選ぶための道具です。試験対策としてはここまで問われませんが、公式の意味を理解する助けになります。

簿記2級でのCVP分析 — 第5問での問われ方

CVP分析は日商簿記2級の工業簿記の範囲です。3級には工業簿記そのものがないため、多くの人が2級で初めて出会う論点になります。商業簿記が企業と外部との取引を記録するのに対し、工業簿記は社内の製造活動を計算する分野で、CVP分析はそのなかでも経営判断に直結する位置にあります。

出題される大問と配点

簿記2級は第1問から第5問までの大問5題、試験時間90分、100点満点中70点で合格です。工業簿記が出るのは第4問と第5問で、CVP分析の主戦場は第5問です。

大問分野・内容配点
第1問〜第3問商業簿記(仕訳・個別論点・決算)60点
第4問工業簿記:費目別・部門別・個別原価計算・総合原価計算など28点
第5問工業簿記:CVP分析・直接原価計算標準原価計算など12点

第5問の12点がまるごとCVP分析と直接原価計算になる回があり、その場合はこの論点だけで合格点70点の6分の1近くを占めます。配点だけ見れば12点と小さいものの、出題パターンが安定していて解答時間が短くて済むのが第5問の強みです。商業簿記の総合問題に時間を取られる試験形式のなかで、確実に取れる12点を持っているかどうかは合否を直接左右します。2026年度に適用される出題区分表でも工業簿記・原価計算の範囲に変更はありませんが、制度は改定されることがあるため、受験前に商工会議所の公式サイトで最新の出題区分表を確認してください。学習全体のなかでの位置づけは簿記2級とはの記事で確認できます。

頻出の3パターン

出題の型はおおむね次の3つに集約されます。どれも計算手順が決まっているので、資料の読み取りさえ間違えなければ完答が狙えます。

  1. 損益分岐点売上高・販売量を求める。資料の原価を変動費と固定費に分け、公式に当てはめます。もっとも基本的な型で、単独でも他の設問の前段としても出ます。
  2. 目標利益達成売上高を求める。目標が金額で与えられるか率で与えられるかで解き方が変わります。率のときに分母から差し引く処理ができるかが差のつくところです。
  3. 安全余裕率・損益分岐点比率を求める。前問で出した損益分岐点をそのまま使う連鎖型で出題されます。前問を落とすと連鎖して失点するため、検算が特に重要になります。

加えて、直接原価計算損益計算書を作らせてから、その数値を使ってCVP分析させる複合型も定番です。この場合は変動損益計算書を正しく作れれば後半は数分で解けるので、前半の固変分解にこそ時間をかけるのが正しい配分です。高低点法で固変分解そのものを計算させる出題もあります。

ミスしやすいポイント

本試験で失点するのは計算そのものより、資料の読み取りと公式の当てはめです。次の5点は毎回チェックする習慣をつけてください。

  • 変動販売費を変動費に入れ忘れる。変動費は製造原価だけだと思い込むと貢献利益が過大になり、以降の答えがすべてずれます。販売費及び一般管理費の欄を必ず見ます。
  • 売上高と販売量を取り違える。固定費を貢献利益率で割れば売上高、1個あたり貢献利益で割れば販売量です。問われているのがどちらかを先に確認します。
  • 1個あたり固定費を使ってしまう。固定費は総額でしか意味を持ちません。1個あたりに直した固定費は営業量が変われば動くので、CVP分析には使えません。
  • 目標利益率を目標利益額と同じように扱う。率で与えられたら分子に足すのではなく、貢献利益率から差し引きます。
  • 端数処理の指示を読み飛ばす。「円未満四捨五入」「個未満切り上げ」などの指示は問題文に必ず書かれています。指示どおりに処理しないと数値が合いません。

なお、CVP分析は簿記2級で終わりではありません。簿記1級や公認会計士試験では、複数の製品を扱う場合のCVP分析(セールスミックス)や、より複雑な意思決定会計へと発展します。2級で学ぶ貢献利益の考え方はその土台なので、公式の暗記で済ませず、この記事で説明した「固定費を貢献利益で回収する」という筋道で理解しておくと後が楽になります。

CVP分析の限界と、実務での使いどころ

CVP分析は強力ですが万能ではありません。単純化された前提の上に成り立っている以上、答えをそのまま信じてよい場面とそうでない場面があります。限界を知ったうえで使うと、この分析はむしろ信頼できる道具になります。

前提が崩れる4つの場面

分析の前提が現実と食い違うのは、主に次の場面です。

大きく売上が動くとき
原価が直線的に動くという前提が崩れます。大量発注で材料単価が下がったり、生産能力を超えて残業割増や外注が発生して単価が上がったりします。分析が信頼できるのは正常な操業範囲の中だけです。
設備や人員を増やすとき
固定費は連続的ではなく階段状に増えます。工場をもう1棟建てた瞬間に損益分岐点が跳ね上がるので、増設をまたぐ計画には同じ式をそのまま使えません。
在庫が大きく増減するとき
生産量と販売量が等しいという前提が崩れます。売れ残った在庫に固定製造原価が乗る全部原価計算の利益とはずれが出るため、直接原価計算の固定費調整で橋渡しする必要があります。
固変分解があいまいなとき
準変動費・準固定費をどう振り分けるかで結果が変わります。CVP分析の答えは、固変分解の判断の質を超えることはありません。

加えて、CVP分析は1つの期間を切り取った静的な分析です。設備投資のように効果が何年にもわたる意思決定は、CVP分析ではなく正味現在価値法などの別の手法で判断します。

複数の製品を扱うとき — 売上構成比で加重平均する

ここまでは製品が1種類である前提で計算してきましたが、実際には貢献利益率の違う製品を複数扱うのが普通です。この場合は売上構成比が一定であるという前提を追加したうえで、加重平均した貢献利益率を使います。

たとえば製品Aが売上の60%で貢献利益率50%、製品Bが40%で貢献利益率25%なら、全体の貢献利益率は0.6 × 50% + 0.4 × 25% = 40%です。固定費が1,200,000円なら損益分岐点売上高は1,200,000 ÷ 0.4 = 3,000,000円となり、単一製品のときとまったく同じ手順で求まります。

注意すべきは、売上構成比が変わると損益分岐点も動くことです。同じ売上高でも、貢献利益率の低い製品Bの比率が上がれば全体の貢献利益率が下がり、損益分岐点は上がります。売上は伸びているのに利益が伸びない会社は、この構成比の変化が原因であることが少なくありません。CVP分析は、その原因を数字で特定するのにも使えます。

実務でCVP分析が使われる場面

限界を踏まえたうえで、CVP分析が実際に力を発揮するのは次のような場面です。

  • 出店・新規事業の採算判断。家賃と人件費で月いくらの固定費がかかるかを出し、1個あたり貢献利益で割れば、月に何個売れば黒字になるかが即座に出ます。事業計画の実現可能性をいちばん早く検証できる方法です。
  • 値決めの判断。前の章で見たとおり、値上げ・値下げが利益に与える影響は感覚とずれます。許容できる販売量の減少幅を先に計算してから議論します。
  • 予算編成の目標設定。翌期の目標利益から必要売上高を逆算し、そこから部門別・月別の目標に落とし込みます。
  • 受注・撤退の判断。追加の受注は、価格が変動費を上回っていれば貢献利益を生むので、遊休能力がある限り引き受ける価値があります。固定費を1個あたりで按分した原価と比べて赤字に見えても、判断を誤らないためにこの見方が必要です。

いずれの場面でも、やっていることは固定費を貢献利益で回収するという1つの計算です。公式が何本もあるように見えても中身は同じで、問われ方が違うだけだと理解できていれば、初めて見る場面でも自分で式を組み立てられます。

まとめ — CVP分析は「固定費を貢献利益で割る」だけ

CVP分析とは、原価(Cost)・営業量(Volume)・利益(Profit)の関係を調べ、あと何個売れば黒字になるかを計算する手法でした。損益分岐点分析とも呼ばれます。長い記事になりましたが、簡単に要点をまとめると次の6つです。

  • 出発点は固変分解。営業量に比例するかどうかで原価を変動費と固定費に分ける。混合しているものは高低点法や勘定科目精査法で分ける
  • 主役は貢献利益(売上高 − 変動費)。これが固定費を回収する原資で、上回った分が営業利益になる
  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率、損益分岐点販売量 = 固定費 ÷ 1個あたり貢献利益。どちらも同じ点を指す
  • 目標利益があるときは固定費に目標利益を足すだけ。利益率で指定されたら貢献利益率から差し引く
  • 安全余裕率売上が何%落ちたら赤字になるかを示し、損益分岐点比率と足すと100%になる。逆数が経営レバレッジ係数
  • 利益への効き目は値上げ > 変動費削減 > 販売量増加 > 固定費削減。値下げは同じ理屈で利益を強く削る

公式が何本もあるように見えても、やっているのは固定費を1単位あたりの回収力で割る割り算だけです。この筋道さえ通っていれば、初めて見る出題でも自分で式を組み立てられます。簿記2級では第5問(12点)の得点源になる論点なので、この記事の数値例を資料を見ずに最後まで再現できるか、一度試してみてください。

学猿では、簿記の学習を仕訳ドリルで進められます。1問ずつ勘定科目を選んで金額を入力する形式で、間違えた問題は忘れかけたタイミングで自動的に復習に戻ってきます。CVP分析のような計算論点も、土台にあるのは仕訳と勘定の理解です。まずは3級の仕訳から、通勤中の数分で回してみてください。

読んだら、手を動かす。

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