簿記3級の「解説」は3種類ある — 自分の探し物を見分ける
「簿記3級 解説」で検索する人が求めているものは、実は1つではありません。同じ言葉で探していても、ある人は本試験と同じ問題の答え合わせをしたいと思っていて、別の人は貸倒引当金の意味が分からず解説を読みたいと思っています。この2つは入手先がまったく違うため、探し物を先に絞らないと「解説サイトを何ページ見ても目当てのものが出てこない」という状態になります。最初にここを整理します。
日商簿記3級で必要になる解説は、次の3種類に分けられます。
- ① 試験そのものの解説
- 何分で何問解くのか、配点はどうなっているのか、統一試験とネット試験は何が違うのか。受験を決めた直後に必要になる情報です。
- ② 問題の解答解説
- 自分が解いた問題の正解と、そこに至る手順。公式サンプル問題や問題集の答え合わせで使います。
- ③ 論点の解説
- 仕訳の考え方、決算整理の意味など、内容そのものの理解。テキスト・解説動画・解説サイトが担当します。
まず押さえる日商簿記3級の試験の姿
①にあたる部分を先に片付けておきます。日商簿記3級の試験は、試験時間60分、大問3つ、100点満点で70点以上が合格です。第1問が仕訳15問で45点、第2問が20点、第3問が決算の総合問題で35点という配分になっています。受験方式は、指定日に会場で紙の答案に書く統一試験と、テストセンターのパソコンで随時受けるネット試験の2つがあり、出題範囲も合格ラインも同じです。
この構成が頭に入っていると、解説を探す精度が上がります。たとえば「第2問が解けない」という悩みは配点20点の話であり、そこに何時間もかけるより第1問と第3問の解説を読み込むほうが合格に近い、という判断ができるようになります。配点の内訳と部分点の扱いは簿記3級の配点で詳しく整理しています。試験全体の進め方をまとめて知りたい場合は簿記3級の完全ガイドから読んでください。
「簡単」と聞いて始めた人ほど解説につまずく
簿記3級は簡単だと紹介されることが多い資格です。ただし直近の統一試験の合格率は33〜34%台で、受験者の3人に2人は不合格になっています。簡単だという評判は「範囲が狭く、独学で100時間ほどで届く」という意味であって、読めば分かるという意味ではありません。
実際につまずくのは、簿記に固有の言い回しです。「決算整理前残高試算表」「差額補充法」といった言葉は日常語ではないため、問題の解説を読んでも解説の中の言葉が分からない、という二重の壁ができます。この場合に必要なのは②の解答解説ではなく③の論点解説です。解説を読んで分からないときは、同じ問題の別の解説を探すより、その論点のテキストや動画に戻るほうが速く抜けられます。
解説サイトを回る前に決めておくこと
簿記3級の解説サイトは無数にあり、個人ブログから資格スクールの公式ページまで玉石混交です。どのサイトを見るかを決める前に、次の3点を自分の中で確定させてください。
- 解きたい問題が手元にあるか — あるなら②、無いなら先に問題を入手する
- いつの情報が必要か — 試験の形式は2021年6月に大きく変わっており、それ以前の解説は現行と噛み合わない
- 読む形式の好み — 文章で読みたいのか、解説動画で見たいのか
特に2つ目は重要です。ネット上には形式変更前に書かれた解説が今も大量に残っています。「第4問」「第5問」という言葉が出てくる解説は旧形式のものなので、現行の3級には対応していません。この見分け方だけでも、古い情報に時間を取られる事故をかなり防げます。
公式サンプル問題はどこにある — 商工会議所のPDFと「解答が付かない」事実
解答解説を探す前に、解く問題そのものを手に入れる必要があります。日商簿記3級で最も価値が高い無料素材は、日本商工会議所が公開している公式のサンプル問題です。2021年度以降に実際の検定試験で出題された問題の一部が、受験者の参考用として掲載されているもので、予想問題ではなく本物の出題という点が市販教材との決定的な違いです。
配布元は検定試験サイトの1か所だけ
サンプル問題の配布元は、日本商工会議所が運営する検定試験サイト(kentei.ne.jp)の「簿記 サンプル問題」ページです。検索するとスクールや個人の解説サイトが上位に並ぶため公式にたどり着きにくいのですが、商工会議所以外が問題を配布しているわけではありません。3級のページを開くと、サンプル1からサンプル5までのブロックが縦に並び、各ブロックの中に第1問・第2問(1)・第2問(2)・第3問の行があります。
各行には「問題」と「答案用紙」の2つのリンクがあり、どちらもPDFです。会員登録もメールアドレスの入力も不要で、クリックすればそのまま開けます。大問ごとにファイルが分かれているため、1セットで8本、5セット全部で40本のPDFになります。通しで解きたいときは同じサンプル番号の4つを自分で並べる必要がある、と覚えておいてください。
公式に解答は付いていない
日本商工会議所が配布しているのは問題と答案用紙の2点だけで、解答を載せたファイルは公開されていません。サンプル問題の解答が見つからないのは探し方が悪いからではなく、そもそも存在しないためです。商工会議所も、問題の内容や解答についての個別の問い合わせには応じないと案内しています。
これは意地悪ではなく、サンプル問題の目的が「出題形式と答案用紙の様式を示すこと」にあるからです。統一試験では問題用紙も計算用紙も回収され、ネット試験ではそもそも紙の問題が存在しないため、受験者は本試験の見た目を知る手段を持ちません。その穴を埋めるために掲載されているのがサンプル問題であり、模範解答つきの問題集を無料配布する趣旨のものではありません。本試験の採点基準や配点箇所が非公表であることとも一貫しています。
公式から取るもの・外から取るものを分ける
したがって、答え合わせまで含めた手順は次のようになります。
| 入手するもの | 入手先 | 費用 |
|---|---|---|
| 問題PDF・答案用紙PDF | 商工会議所の検定試験サイト | 無料 |
| 解答・解説 | 資格スクールの公開ページ | 無料 |
| 論点ごとの理解 | テキスト・解説動画・学習アプリ | 無料〜 |
「問題は公式から、解答は予備校から」という組み合わせが、現時点で最も確実で費用のかからないルートです。解答の入手先は第4章で具体的に扱います。なお、サンプル問題の解答をめぐる事情をもっと詳しく知りたい場合は簿記3級のサンプル問題と解答にまとめてあります。
ダウンロードするときの注意点
スマホでも公式のサイトは問題なく開けますが、PDFの中身は本試験と同じ体裁なので、第3問の決算整理前残高試算表や答案用紙は横に広い表になります。スマホの画面では数字の桁を追うのが難しく、答案用紙に書き込む練習もできません。第1問の仕訳15問だけならスマホでも読めますが、第2問と第3問はパソコンかタブレットで開くか、印刷して取り組むほうが確実です。
もう1つ、ダウンロードしたPDFにはどのサンプルの何問目かがファイル名から判別しにくいものがあります。あとで解答解説と突き合わせるときに混乱しないよう、最初にサンプル番号ごとのフォルダを作って入れておくと手戻りがありません。
サンプル1〜5の中身と、セットごとの解答・解説の探し方
公開されているサンプル問題は、2026年8月時点でサンプル1からサンプル5までの5セットです。市販の予想問題集1冊の収録が4〜6回分であることを考えると、無料で手に入る演習素材としてはかなりの量になります。しかも予想ではなく実際に出題された問題なので、文章の言い回しも難易度も本番そのものです。
1セットの構成は本試験1回分と同じ
どのセットも、第1問・第2問(1)・第2問(2)・第3問という4つのブロックで構成されています。第1問はどのセットでも仕訳15問で、勘定科目を選択肢から選ぶ形式です。第2問が(1)(2)の2つに分かれているのは本試験と同じ作りで、第3問は決算の総合問題が1つ置かれます。つまり1セットを通しで解けば、そのまま本試験1回分の分量になります。
時間を計って解く場合は、4つのPDFを開いて60分を測ってください。ネット試験ではパソコン画面上で大問を行き来できますが、紙で解くときも同じように、解ける大問から手をつける練習をしておくと本番の時間配分が身につきます。
セット番号で探すときの検索のコツ
解答解説を探すときは、セット番号まで含めて検索するのが確実です。たとえばサンプル問題2の第3問だけ分からない、という状況なら「簿記3級 サンプル問題2 第3問」のように、セット番号と大問番号を両方入れます。単に「簿記3級 サンプル問題 解答」で調べると、5セット分の解説が混ざった一覧ページが並び、自分が解いた問題の解説にたどり着くまで時間がかかります。
- サンプル問題2を探すときは「サンプル2」という短い表記でも掲載されていることがあります
- サンプル問題3のように番号だけが違うページは見た目がよく似ているため、開いたページのセット番号を必ず確認してください
- サンプル問題4は「サンプル4」と略して案内されているページもあり、両方の表記で探すと見つかりやすくなります
公式ページ側の表記は「サンプル1」「サンプル2」…という形なので、スクール側のページが「サンプル問題1」と書いているだけで、指しているものは同じです。この表記の揺れが、解説が見つからないと感じる原因になっていることは案外多くあります。
解いたあとにやること
5セットを一気に解いてしまうのはもったいない使い方です。本試験と同じ形式の問題は他に存在しないため、実力を測る物差しとしての価値があります。次の順番をおすすめします。
- ひととおり学習を終えた段階で1セット解き、時間内に何点取れるかを測る
- 間違えた論点だけをテキストや解説動画に戻って埋める
- 2週間ほど空けて別のセットを解き、同じ間違いが消えたかを確認する
- 直前期に残りのセットを本番と同じ時間帯・同じ条件で解く
間違えた問題は、正解を確認して終わりにせず、答案用紙をもう一度白紙から書き直してください。簿記は手が覚える科目なので、解説を読んで納得した状態と、自力で書ける状態のあいだにはまだ距離があります。
無料の解答解説と解説動画 — TAC・ネットスクール・解説サイトの使い分け
公式に解答が付かない以上、答え合わせの手段は自分で用意することになります。幸い、資格スクールが自社で作成した解答と解説を無料で公開しているため、費用をかけずに全問の正誤を確認できます。ここでは代表的な入手先と、それぞれの向き不向きを整理します。
資格スクールが公開している解答解説
公式サンプル問題に対応した解答を無料で公開している代表格が、TACとネットスクールの2社です。どちらも自社で作成した模範解答という位置づけで、商工会議所が認定したものではありませんが、内容は本試験対策の講義を長年提供してきた各社が用意したものです。掲載は順次追加されており、TACはサンプル問題5の解答を2026年5月に追加しています。
| 提供元 | 形式 | 特徴 |
|---|---|---|
| TAC | 解答・解説のページ | サンプル問題の解答を大問ごとに掲載。文章で手順を追いたい人向け |
| ネットスクール | 解説講義(動画) | サンプル問題の解説講義を無料公開。解き方を実演で見せる形式 |
| 個人・法人の解説サイト | 記事 | 特定の設問だけをピンポイントで解説していることが多い |
tacの解答は文章と数字で完結しているため、手を動かして解いた直後の答え合わせに向いています。一方でネットスクールの解説講義は、講師が実際に解く過程を見せる形式なので、そもそもどこから手をつけるか分からない段階で効きます。両方無料なので、迷ったら片方で答え合わせをして、納得できなかった設問だけもう片方を見る、という使い方ができます。
なお、各社の公開状況や掲載ページの場所は年度によって変わります。リンク先が見つからないときは、それぞれの公式サイトで「サンプル問題 解答」を探すのが確実です。
解説動画が効く場面・効かない場面
簿記3級の解説動画は、無料で公開されているものだけでも相当な本数があります。ただし動画は万能ではなく、得意な場面がはっきりしています。
- 動画が効く場面
- 決算整理や勘定記入のように、手順が長くて文章だけでは順序を追いにくい論点。転記の流れを画面上で見せてもらうと一気に腑に落ちます。
- 動画が効かない場面
- 仕訳の反復練習。1問数秒で判断すべき問題を、再生時間をかけて見ることになるため効率が落ちます。
解説動画を見た直後に、同じ論点の問題を自分で解いてください。動画は理解した気持ちになりやすい媒体で、視聴時間が長いほど勉強した感覚が残ります。しかし本試験で問われるのは、60分のあいだに手が動くかどうかです。1本見たら2〜3問解く、という比率を守るだけで、動画の効果は大きく変わります。
解説サイトを選ぶときの基準
解説サイトは数が多いぶん、当たり外れがあります。次の点を満たすものを選ぶと外れにくくなります。
- 第1問から第3問までの現行の大問構成で書かれている(第4問・第5問が出てくるものは旧形式)
- 仕訳が借方・貸方の形で示され、金額の根拠が書かれている
- 更新日が記載されており、出題範囲の改定に触れている
逆に、答えの数字だけが並んでいて途中の考え方が書かれていないページは、答え合わせにしか使えません。自分がどこで間違えたのかを知りたい段階では、手順まで書かれた解説を選んでください。
大問別の解説① 第1問は仕訳45点 — 解説を読む優先順位が決まる
解説をどこに投下するかは、配点から逆算すると迷いません。100点満点の内訳は第1問45点・第2問20点・第3問35点で、第1問と第3問だけで80点を占めます。第2問が半分の出来でも、この2つが固まっていれば合格ラインの70点には届きます。時間が限られているなら、解説を読む順番もこの配点に従うのが合理的です。
第1問で問われるのは仕訳15問だけ
第1問は仕訳が15問、1問3点で45点です。取引の文章を読み、借方と貸方の勘定科目を選択肢から選び、金額を入力(記入)します。勘定科目を自分で書くのではなく選ぶ形式なので、漢字が思い出せないという理由で失点することはありません。逆に言えば、選択肢を見て正しい組み合わせが選べるかどうかがすべてです。
ここは解説の使い方が他の大問と大きく違います。第1問の1問は数十秒で解く問題なので、じっくり解説を読み込む対象ではありません。解けなかった仕訳は、解説で考え方を1度確認したら、同じ論点の問題を数問続けて解いて手に定着させてください。解説を読む時間と解く時間の比率は、第1問に関しては1対3くらいが目安です。
つまずきやすい論点は解説より反復で潰れる
第1問で失点しやすいのは、次のような論点です。いずれも理屈が難しいというより、判断が一瞬で出てこないことが原因です。
- 三分法の仕入・売上と、返品や諸掛りが絡んだときの処理
- 手付金(前払金・前受金)と、実際の引き渡し時の振替
- 仮払金・仮受金の精算、立替金と預り金の区別
- 貸倒引当金の差額補充法と、当期発生分の貸倒れ
- 固定資産の売却で出る固定資産売却損益の計算
これらは解説を10回読むより、同じ型の問題を10問解くほうが早く固まります。論点ごとの考え方と例題は簿記3級の仕訳にまとめてあるので、自分が崩れている論点だけを拾って読んでください。勘定科目の一覧と5要素の分類も同じページにあります。
解説を読んでも同じ間違いを繰り返すとき
同じ論点で何度も間違えるなら、原因は仕訳そのものではなく、取引の文章の読み取りにあることが多いです。「誰が誰に何をしたのか」を主語つきで一度言い換えてから仕訳を書くと、貸借の向きの取り違えは大きく減ります。当社が商品を受け取ったのか渡したのか、代金を払ったのか受け取ったのかを、図や矢印でメモしてから勘定科目を選ぶ習慣をつけてください。
大問別の解説② 第2問の帳簿・勘定記入と、第3問の決算・精算表
残る2つの大問は、第1問とは求められる力が違います。仕訳が書けることを前提に、それを帳簿に転記したり、決算まで積み上げて財務諸表の形にまとめたりする力が問われます。解説の読み方も、1問ずつ潰す第1問とは変える必要があります。
第2問(20点) — 帳簿と勘定記入で何が出るか
第2問は配点20点で、通常は(1)(2)の2つの設問に分かれます。出題の中心は帳簿への記入と勘定記入で、そのほかに補助簿の選択や伝票、語句の穴埋めなどが出ます。総勘定元帳や商品有高帳といった帳簿の様式を知らないと、問題を読んでも何を書く欄なのかが分からないため、まず様式そのものに慣れることが先決です。
この大問の解説は、答えの数字よりもどの取引をどの欄に書くのかという対応関係を確認するために読みます。勘定記入の問題では、日付・相手勘定・金額の3点セットをどこから拾ってきたのかを解説で追い、自分の答案と1行ずつ突き合わせてください。数字が合っているのに相手勘定名を間違えているケースは非常に多く、部分点を取りこぼす原因になります。
第2問は範囲が広いわりに配点が20点しかないため、深追いは危険です。出題パターンごとの対策と優先順位は簿記3級 第2問の対策で詳しく扱っています。帳簿の書き方そのものが不安なら、総勘定元帳と商品有高帳の解説を先に読むと、問題文の意味が通るようになります。
第3問(35点) — 決算の総合問題は手順で解く
第3問は決算の総合問題で35点。決算整理前残高試算表と決算整理事項が与えられ、そこから貸借対照表と損益計算書、または決算整理後残高試算表を作ります。8桁の精算表が出題されることもあります。1問あたりの配点が大きく、ここを白紙にすると合格が一気に遠のきます。
第3問の解説は、答案の数字を照合するためではなく手順の順番を身につけるために読んでください。決算整理は、売上原価の算定、貸倒引当金の設定、減価償却、経過勘定(前払・前受・未収・未払)、現金過不足や当座借越の整理、といった論点が毎回ほぼ同じ顔ぶれで出ます。解く順番を固定してしまえば、問題が変わっても手が止まりません。
- 決算整理事項を上から読み、それぞれの仕訳を余白に書き出す
- 書いた仕訳を試算表の該当行に加減して、勘定ごとの残高を確定する
- 確定した残高を答案の様式(精算表・貸借対照表・損益計算書)に転記する
- 当期純利益を計算し、貸借が一致するかで検算する
解説を読むときは、この4段階のどこで自分が崩れたのかを特定します。仕訳が書けていないのか、転記でずれたのか、様式の欄を間違えたのかで、次にやるべき練習がまったく変わるからです。精算表の書き方は簿記3級の精算表、決算整理の全論点は簿記3級の決算にまとめてあります。
「問3解説」と検索する人が探しているもの
第3問は「問3」と略して呼ばれることもあり、検索窓に簿記3級 問3解説と入力されることも少なくありません。指しているものは同じ第3問の決算問題です。ただし前述のとおり本試験の問題は公開されていないため、特定の回の問3の解説というものは存在しません。実際に読めるのは、公式サンプル問題の第3問に対する解説か、市販の問題集に収録された類題の解説のどちらかです。
この点を理解しておくと、探し方が変わります。「本番の問3の解説」を探すのではなく、「サンプル問題の第3問を解いて、その解説を読む」ほうが確実で、しかも同じ形式の問題に触れられます。
模擬試験・模試の解説 — ネット試験形式で再現して解く
論点ごとの解説をひととおり読んだら、次は本番と同じ条件で解いた結果に対する解説が必要になります。ここで使うのが模擬試験です。簿記3級の受験者の8割超がネット試験を選んでいる現在、紙で解く練習だけでは足りない部分が出てきます。
ネット試験は操作そのものが得点差になる
ネット試験は、テストセンターのパソコンで随時受験する方式です。問題は画面に表示され、解答はキーボードとマウスで入力します。勘定科目はプルダウンから選び、金額は半角数字で入力する形式で、紙のように答案の余白に書き込むことはできません。配られるのは計算用紙だけです。
この違いは想像以上に大きく、初めて画面で解いた人はほぼ全員が時間を余分に使います。プルダウンから科目を探す時間、入力欄を移動する時間、計算用紙と画面を往復する時間が積み上がるためです。知識ではなく操作で落ちることがあるので、受験方式に合わせた練習が要ります。ネット試験の申し込みや当日の流れは簿記3級ネット試験で確認してください。
無料で受けられる模試と、その解説
本番形式の模試は、次のような形で手に入ります。
| 種類 | 形式 | 解説の付き方 |
|---|---|---|
| スクールの無料模擬試験 | ネット試験を模した画面 | 採点後に解説が表示されるものが多い |
| 問題集付属の模擬試験プログラム | ブラウザで本番形式 | 書籍側の解説と対応 |
| 公式サンプル問題 | PDF(紙) | 解説は各社の公開ページ |
tacをはじめとする資格スクールは、模擬試験や体験受験を無料で提供していることがあります。tacの模擬試験のようにスクールが提供するものは、採点と同時に解説が読める点が便利です。どこで何が受けられるかは簿記3級の模擬試験に整理してあります。無料で解ける演習素材を広く探したい場合は過去問を無料で解く方法も合わせて読んでください。
模試の解説は「時間配分の反省」に使う
模試を解いたあとに読む解説は、正解の確認だけで終わらせるともったいない使い方になります。60分という制限があるため、本番で落とすのは分からなかった問題ではなく、時間が足りなくて手をつけられなかった問題であることが多いからです。
- 第1問に何分かけたか(目安は15〜20分)
- 第3問に何分残せたか(20分以上残らないと最後まで届かない)
- 捨てた設問はどれか、それは配点に見合った判断だったか
この3点を模試のたびに記録し、解説で答え合わせをするときに一緒に振り返ってください。点数だけを見ていると、同じ時間切れを何度も繰り返します。日々の練習問題は論点別に数をこなす場面で使い、模試は時間配分を確かめる場面で使う、と役割を分けるのがコツです。論点別の演習は簿記3級の練習問題にまとめてあります。
解説付き問題集とアプリの選び方 — 過去問がない試験の演習素材
ここまで無料で手に入る解説を中心に見てきましたが、演習量をまとまって確保するなら解説付き問題集を1冊持つのが現実的です。理由は単純で、簿記3級には解ける過去問が存在しないからです。
過去問が無いという前提を先に理解する
日本商工会議所は2級・3級について試験問題を公開しないと明示しており、統一試験では問題用紙も計算用紙も回収されます。ネット試験にはそもそも紙の問題がありません。つまり、回号を特定できる本試験1回分の問題と公式解答は、有料でも無料でも入手経路がないということです。
市販の「本試験問題集」「予想問題集」は、実際に出題された問題ではなく、出題傾向を分析して各社が作った予想問題です。この事情を知らずに過去問を探し続けると時間を浪費します。詳しい背景と代替素材の選び方は日商簿記3級の過去問にまとめました。
解説付き問題集を選ぶ4つの基準
書店に並ぶ問題集はどれも似て見えますが、解説の質には差があります。次の基準で中身を確認してください。
- 解説が仕訳から書かれているか
- 答えの数字だけでなく、その数字が出るまでの仕訳が示されているものを選びます。第3問の解説で仕訳が省略されていると、間違いの原因を特定できません。
- ネット試験の模擬プログラムが付くか
- ネット試験で受けるなら、画面上で解ける模擬試験が付属する問題集が有利です。
- 最新の出題範囲に対応しているか
- 出題区分は改定されます。2027年4月1日以降の試験に適用される改定も予告されているため、受験する年度に対応した版を選んでください。
- 1冊で本試験何回分あるか
- 予想問題集は4〜6回分の収録が一般的です。公式サンプル問題5セットと合わせれば、10回分前後の演習量になります。
問題集の役割は、演習量と、間違えたときにすぐ読める解説をセットで持つことです。逆に、解説を読まずに答えだけ確認する使い方をするなら、無料の素材で十分ということになります。
アプリは仕訳の反復に使う
解説付き問題集をアプリで代替できるかという質問はよくあります。結論としては、第1問の仕訳に関してはアプリのほうが向いています。1問数十秒の問題を、通勤中や休憩中に何十問も回せるからです。解説付き問題集をアプリで探している人の多くは、この仕訳の反復を求めています。
一方で、第3問の決算総合問題のように答案用紙全体を埋める問題は、画面の狭いスマホでは再現しにくいのが実情です。仕訳はアプリ、総合問題は紙かパソコンという分担にすると、それぞれの長所を活かせます。アプリの選び方と「アプリだけで合格できるか」は簿記3級のアプリで詳しく検討しています。どんな問題がどれだけ出るのかを俯瞰したい場合は簿記3級の問題ガイドも参考になります。
回号別(150回・171回・172回)の解説を探しているとき
統一試験には第○回という通し番号が付いているため、自分が受けた回や気になる回の解説を探す人が一定数います。ただしこの探し方には2つの壁があります。1つは前章のとおり問題が公開されていないこと、もう1つは、古い回の解説が現行の試験と噛み合わないことです。
第150回は旧形式の試験 — 今の対策には使えない
第150回は2018年11月18日に実施された試験です。3級の合格率は43.8%で、受験者88,774名に対して合格者は38,884名でした。受験者数が現在の統一試験の4〜5倍あることからも、時代が違うことが分かります。
より重要なのは形式です。当時の3級は試験時間120分、大問5題で、第1問の仕訳は5問。勘定科目は選択ではなく自分で書く方式でした。現行の60分・大問3題・仕訳15問という形に変わったのは第158回(2021年6月13日実施)からです。第150回の解説を読んでも、そこに出てくる第4問・第5問は現在の試験には存在しません。論点の説明としては読めますが、時間配分や大問ごとの戦略は参考になりません。
第171回・第172回は現行形式 — ただし問題は非公開
直近の回は現行形式です。第171回は2025年11月16日に実施され、3級の合格率は34.5%でした。第172回は2026年2月22日で33.6%、第173回は2026年6月14日で33.8%と、3回続けて33〜34%台が並んでいます。
ただし、これらの回についても問題そのものは公開されていません。第171回や第172回の解説として出てくるページの中身は、次のいずれかです。
- 予備校が受験者の報告をもとにまとめた講評・出題分析
- 受験者本人が書いた体感レポート(「第2問が勘定記入で難しかった」など)
- 回号とは無関係な一般的な解説に、回号を付けただけのページ
1つ目の講評は、どの論点が出やすいかを知る読み物として役に立ちます。ただし問題文が載っているわけではないので、解いて答え合わせをする用途には使えません。合格率の推移そのものは日商簿記3級の合格率で回ごとに整理しています。
回号で探すより、形式で探すほうが速い
結局のところ、回号を手がかりにするより「現行形式で作られた問題とその解説」を探すほうが確実です。公式サンプル問題は2021年度以降に実際に出題された問題なので、回号こそ特定されていないものの、中身は現行形式そのものです。回号にこだわる理由が「本番と同じ問題を解きたい」ことであれば、その目的はサンプル問題で満たせます。
まとめ — 解説は「探す」より「解いてから読む」
簿記3級の解説をめぐる状況を、もう一度整理します。
- 探している解説は、試験制度の解説・問題の解答解説・論点の解説の3種類に分かれる
- 問題は日本商工会議所の公式サンプル問題5セットが無料。ただし解答は付かない
- 解答解説はTACやネットスクールが無料公開しており、「問題は公式から、解答は予備校から」が基本ルート
- 解説を読む優先順位は配点で決まる。第1問45点と第3問35点で80点
- 本試験の問題は非公開のため、第150回・第171回・第172回のような回号別の解説は存在しない
- 第150回は旧形式(120分・大問5題)。現行形式は第158回から
そして最も大事なのは、解説を探す時間と解く時間のバランスです。解説はよくできているほど読んで分かった気持ちにさせてくれますが、本試験の60分で求められるのは、問題を読んだ瞬間に手が動くことです。解説は解く前に読むものではなく、解いたあとに自分の間違いを特定するために読むものだと考えてください。この順番を守るだけで、同じ教材から得られるものが大きく変わります。
特に第1問の仕訳は、解説を読む量より解いた問数がそのまま得点になる領域です。45点という最大の配点があり、しかも1問あたりの所要時間が最も短いので、すきま時間で最も伸ばしやすい部分でもあります。学猿の仕訳ドリルは、本試験と同じ勘定科目の選択と金額入力の形式で1問ずつ解ける練習ツールです。間違えた問題は自動で復習に回るので、解説を読んだあとの「手を動かす」工程をそのまま置き換えられます。会員登録なしですぐ始められるので、この記事で見つけた解説と組み合わせて使ってみてください。
受験料や試験日程、出題範囲の改定など制度に関わる情報は変更されることがあります。申し込みの前には商工会議所の公式サイトで最新情報を確認してください。

